邦訳:日下部陽介訳、群像社、2013年
これは、ドラマティックで感動的な、ある一家の叙事詩的作品だ。才能ある産婦人科医、クコツキイ教授の家族の困難な生活を描く。クコツキイは、ソ連における妊娠中絶の合法化を目指して尽力する。事件は、1940~1960年代のソ連を背景に展開する。
作者は、ロシアの作家、シナリオライター、翻訳者であるリュドミラ・ウリツカヤ(75歳)。この長編は、2001年にロシア・ブッカー賞を、2006年にイタリアのペンネ賞を受賞している。
邦訳: 奈倉 有里訳、新潮クレスト・ブックス、2012年
この本では、二人の恋人が心を込めた手紙のやり取りをする。ヴォロージャは、中国の戦争に出征しており、サーシャはロシアにいる。彼は、1900年の義和団の乱に際し死亡するが、彼女はその後何年も生き延びることになる…。
ミハイル・シーシキン(57歳)は、ロシアの複数の主要な文学賞を受賞しており、ロシア語のみならずドイツ語でも創作する。彼の『手紙』は、2010~2011年度の「ボリシャーヤ・クニーガ賞」(ビッグブック賞)の第1等を獲得。
邦訳:東海 晃久訳、河出書房新社、2014年
ヴィクトル・ペレーヴィン(56歳)のこのポストモダン風の小説は、1990年代のモスクワを舞台として展開する。この時代の雰囲気と気分を鮮やかに伝える。
主人公は文学大学出身だが、偶然、自身思ってもみなかった分野で働き始める。コピーライターとなり、外国ブランドの広告をロシアに合ったものに変えるのが仕事だ。
『ジェネレーション〈P〉』は、2000年に「青銅のカタツムリ賞」と「リヒャルト・ションフェルド記念ドイツ文学賞」を受賞。
邦訳:松下隆志訳、河出書房新社、2017年
ウラジーミル・ソローキン(63歳)の『テルリア』は、恐るべき未来のディストピア。現在のヨーロッパおよびロシアにあたる地域の21世紀末を描く。そこには新たな国家ができており、人間のほか様々なファンタスティックなキャラクターが住んでいる。全50章からなる長編だが、各章には直接のつながりはないので、短編としても楽しめる。2013~2014年度の「ボリシャーヤ・クニーガ賞」(ビッグブック賞)の第2等を獲得。
邦訳:奈倉 有里訳、岩波書店、2015年
作家ボリス・アクーニン(62歳)の活動は日本と密接につながっている。2007年には「三島由紀夫の優れた翻訳に対し」、野間文芸翻訳賞(2007年)を受賞し、2009年は旭日小綬章を授与。
彼は、「ファンドーリンの捜査ファイル」の作者でもあり、この歴史を舞台とした探偵小説シリーズはロシアで非常な人気を博している。シリーズ最後の作品は、欧州復興開発銀行(EBRD)文学賞にノミネートされた。
日本語で読めるのは、例えば、血沸き肉躍る本格歴史推理小説『トルコ捨駒スパイ事件』。元気な美少女が単身、おとなしい婚約者を追って、1877~1878年の露土戦争の最前線に乗り込む。あるいは『堕天使(アザゼル)殺人事件』(沼野 恭子訳、岩波書店、2015年)。犯行を疑われる主要登場人物の一人は日本人だ。
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