ジャーナリストのドミトリー・スミルノフ氏は、タバコフ氏の死を悼む多くのファン、同僚の声を代弁して、「偉大な時代の偉大な俳優で、国中の人々に愛されたオレグ・タバコフ氏がこの世を去った」と記している。
ロシアでもっとも重要な劇場の一つであるチェーホフ記念モスクワ芸術座の芸術監督を18年間にわたって務めたタバコフ氏は、何世代ものロシア人にとって、ソ連とロシアの演劇界および映画界におけるもっとも重要な俳優の一人であった。
ロシアの演出家スタニスラフ・ゴヴォルーヒン氏はロシアのジャーナリストに対し、「わたしはタバコフの魅力はスタニスラフスキー(演劇システムを確立したことで世界的に知られる)と等しいと考える。もしかするとタバコフは彼が育てた素晴らしい俳優や自身のスクリーンでの演技などを考えると、スタニスラフスキーよりさらに多くのものを残したかもしれない。タバコフ氏の死はロシアの文化にとって多大なる損失である」と述べた。
またオレグ・タバコフ氏はその独特な声を生かした多くのアニメキャラクターの声優として、ソ連とロシアの子どもたちにもよく知られている。主にアニメの主人公を担当したタバコフ氏の声はたちまちカリスマ性を獲得し、忘れられないものとなり、人々に愛された。
中でももっとも有名なのがソ連アニメ「プロストクワシノ村の3人」のネコのマトロスキン役。またアメリカのマンガ「ガーフィールド」の映画の主役のロシア語版の吹き替えも行った。
俳優として出演した中でもっとも知られる作品に、アカデミー賞を受賞した「モスクワは涙を信じない」(1980)、ソ連の有名なテレビシリーズ「春の17の瞬間」(1973)、「戦争と平和」(1966–1967)、「ダルタニャンと三銃士」(1978)、「キャプシーヌ大通りの男」を始め、多数のソ連の古典映画がある。
タバコフ氏は別のロシアの劇場「ソヴレメンニク」の創設者で芸術監督でもあり、また演劇スタジオ「タバケルカ」を率いたことでも知られた。
タバコフ氏はモスクワ芸術座の作品を携え世界中をツアーしたほか、俳優のためのマスタークラスを行い、自らプロの俳優として積み上げてきた経験と知識を世界中に広げた。