5冊の驚嘆すべき本:現代の古典リュドミラ・ウリツカヤ

カルチャー
アレクサンドラ・グゼワ
 現代ロシア文学の名作をもっと知りたいという方は、リュドミラ・ウリツカヤのこれらの本を手に取ってみていただきたい。絶妙な散文がまったく新しい文学的な地平を開くだろう。

 過去の文豪たちが一人の知的な女性のなかに生まれ変わったとしたらどうだろう?… そんなことを想像させる彼女のベストセラー小説は、愛と死、さまざまな職業と年齢の人、そしてソ連と現代ロシアの現実を描いている。リュドミラ・ウリツカヤの驚くべき小説はすでに25の言語に翻訳されている。

 彼女は数々の権威ある文学賞を獲得しており、ブッカー賞にノミネートされ、フランスの芸術文化勲章を受賞している。そんな彼女の最も著名な小説のいくつかをご紹介しよう。ウリツカヤは現役作家で、2月21日に75歳を迎えるが、既に生きた文学の伝説と呼ばれる権利を得ている。

  1. 『ソーネチカ』

 この本を読むと、主人公ソーネチカの人生を目の当たりにし、第二次世界大戦後のソ連での苦難を如実に味わうことになる。ソーネチカは容姿がぱっとせず、日常ぶつかる問題から本の中の想像上の世界に逃避する「本の虫」だ。彼女の結婚と娘の誕生も、こうした世界から彼女を一時的に抜け出させたにすぎなかった…。

 この物語は1992年に文芸誌「ノーヴィ・ミール(新世界)」に初めて掲載され、ウリツカヤはすぐさま名声を得た。1993年のブッカー賞の6作の最終候補作(Shortlist)に残っている。

 この作品は比較的短いので、ふつうは、これにおとらず素敵な、彼女の他の作品といっしょに刊行される。

  1. 『メディアとその子供たち』

 ギリシア神話の王女と同じ名前のヒロイン、メディアは、美しいクリミアの海岸に住んでいる。かつてクリミアはタヴリーダと呼ばれ、古代ギリシャ人が住んでいたが、彼女はその末裔だ。しかし彼女は、神話の同名の「姉」とは異なり、自分の家族を破壊するのではなく、自分の家の屋根の下にすべての近親者を集める「ルーツ」なのだ。

 これはひとつの家族叙事詩で、個人の生活の詳細だけでなく、世代と時代の全体を描き出す。この作品を読むと、海の息吹が感じられる。そして、作品が見事にとらえている、いわく言い難い雰囲気を求めて、クリミア行きのチケットを購入したくなるだろう。

  1. 『クコツキイの症例ある医師の家族の物語』

 医師、パーヴェル・クコツキイは、X線的な視力、洞察力をもっており、何千人もの女性の妊娠、出産を助けるために一生を捧げた。彼は、妊娠中絶が禁止されていた時に、それを敢えて行う危険を冒したこともある。しかし、作品のドラマは、彼が自分の妻と娘を助けることさえできない、という事実を中心に展開する。この名作は、ソ連の3世代のモスクワっ子の年代記を描き、生と死という大問題を深く掘り下げている。

  1. 『通訳ダニエル・シュタイン』

 この作品は事実にもとづいており、ナチス・ドイツの占領下が舞台だ。ウリツカヤが描いているのは、ポーランドのユダヤ人、ダニエル・シュタインの驚くべき生涯。彼は、ナチのゲシュタポの通訳をさせられながら、他のユダヤ人がゲットーから脱出するのを助ける。ドイツ語がうまい彼は、ベラルーシの警察、ドイツのゲシュタポ、そして後にソ連の秘密警察「内務人民委員部(NKVD)」の通訳を務めた。

 「ウリツカヤの小説は、ポストモダンのスタイルかもしれない。それは、手紙と日記、報告書と速記体のコラージュだが、そのテーマは、時代を超越した生と死の謎だ。自分自身に誠実であること、暴力に打ち勝つこと、偽善に克ち、思いやりをもつこと」。評論家フィビ・タプリンは書いている。

  1. 『緑の天幕』

 この小説は、2人のヨシフ(独裁者ヨシフ・スターリン〈1953〉とノーベル文学賞を受賞した詩人ヨシフ・ブロツキー〈1996〉)の死が、「枠組み」をなしている。ウリツカヤは、この作品を一見無関係なエピソードのパッチワークとして構成した。しかしやがて、作品の異なる部分の登場人物が何らかの形で交差していることが分かる。互いのすぐ近くを歩いたり、同じ本を読んだりする――ただし別の時代においてだが。

 「私はいわゆる『1960年代人』の世代について小説を書くのを自分の務めだと考えました。多くの人と話をして私が思うのは、今の若者たちは、現在確立されている秩序を、60年代人たちのせいにしているということです。実際、私が毎日目にしている「スターリン化」のプロセスは、ソ連政権およびその苛酷な弾圧、粛清の教訓が、十分に汲み取られなかったことを証明しています」。ウリツカヤは、2013年のロシア・ビヨンドへのインタビューでこう述べている。 

写真提供:新潮社、群像社、「エクスモ」