犬も歩けば人気者:ロシア文化で最も有名な犬7選

映画「黒い耳の白いビム」のシーン。

映画「黒い耳の白いビム」のシーン。

Sputnik
 中国の暦に従えば、2018年は犬の年だ。しかしどんな年だろうと、この愛らしい動物はロシア文化で栄光ある位置を占めている。実在だったり創作だったり、宇宙飛行士や科学者の助手であることも。彼らは皆賢くて忠実で、常に人々を助けようと一生懸命だ。

1. ムムー

 “ゲラシムがムムーを溺れさせた”というのは、ロシア文学を学習する子供たちに大変よく知られたフレーズの一つで、誰もがツルゲーネフのムムー(1854)という物語との関連で知っている。ロシア帝国における農奴の生活を描いたこの悲しい物語では、冷酷な女性が、力強いが聾唖で従順な召使のゲラシムに、彼が唯一愛する生き物、小さな犬のムムーを処分するように命じる。

 はじめ、ゲラシムは市場でムムーをかわいがってくれる人に売ろうとするが、彼女はロープを噛み切って彼のもとに戻って来てしまう。このため女性は彼に彼女を殺すよう命じる。ゲラシムは嘆き悲しむが逆らうことはできず、あわれなムムーを溺死させる。彼は女性のもとから去り、二度と戻らなかった。こうして、ムムーは人間の残酷さの無実の犠牲者となる。残念ながら、ロシア文学ではしばしば犬がこのような役を演じる。

2. カシタンカ

アントン・チェーホフの小説「カシタンカ」の画像、1903年、D.カルドフスキー。

 1887年のアントン・チェーホフの同名小説のヒロインであるカシタンカは、“ダックスフントと雑種の混血”の愛らしい小さな赤い犬で、陰鬱で大酒飲みの大工と暮らしている。大工は彼女を殴り、餌をろくに与えてやらない。ある日彼女は偶然迷子になる。通りがかりの人が彼女を見つけ、自分の家に連れ帰る。

 彼はサーカスの調教師で、カシタンカは彼の家で他の動物たち、すなわち猫、ガチョウ、豚と出会う。彼らは皆一緒に暮らし、犬はとても幸せに感じる。少なくとも大工のところよりは良い暮らしをしている。しかしある日、舞台で演技中、彼女は自分のかつての飼い主とその息子が客席から彼女の名を叫んでいるのを聞き、彼らのもとへ駆け寄る。忠誠心はすべてに勝る!

3. パヴロフの犬

イヴァン・パヴロフと同僚、サンクトペテルブルク軍医学校生理学部、1914年。

 熱心な科学者でノーベル賞受賞者のイヴァン・パヴロフ(1849~1936)は、ロシア帝国でもソ連でも評価されていた。彼の研究は人間生理学の知識を大幅に広げたからだ。とはいえ、彼の成し遂げたことは、彼の動物の助手たち、つまり犬たちがいなければ、これほど大きな意味を持つものにはなっていなかっただろう。

 パヴロフは、不必要に犬を傷つけたりしない面倒見の良い人物で、犬の生活条件を向上するために何でもしたと言われる。犬に関する彼の最も有名な実験は、反射のシステムについてのものだ。パヴロフは、電球をつけてから犬に餌をやれば、彼らは徐々に餌がなくても、電球がついただけでよだれを出すようになることを発見した。

 ここからこんなジョークも生まれた。パヴロフの犬が仲間に言う。「私がこのじいさんにさせられることをご覧よ、私がよだれを垂らすだけで、彼はにっこり笑って手帳に書き込むんだよ!」“パヴロフの犬”という言葉は科学の名における自己犠牲の象徴となった。感謝したロシア人が捧げた、パヴロフの犬の像まである。

4. シャーリク(小説犬の心臓より)

映画「犬の心臓」(1988年)のシーン。

 ミハイル・ブルガーコフの短編(1925年)は、野良犬が人間になるという筋書きだ。その結果が教えてくれるのは、時に犬のほうが人間よりよほど分別ある礼儀正しい存在であり得るということだ。裕福なフィリップ・プレオブラジェンスキー教授は、モスクワのある通りで、腹を空かせたみすぼらしい犬シャーリクを見つける。彼は犬を家に連れ帰り、謎めいた実験の被験者にしてしまう。

 彼は酔っ払いから摘出した器官を移植し、シャーリクを人間にすることに成功する。大胆な実験は悪い結果をもたらす。優しく利口だったシャーリクは、偽善的なソヴィエトの制度によって腐敗し、飲んだくれ始め、住居を奪うために自身の創造者であるプレオブラジェンスキー教授を誹謗中傷しようとする。苛立ちを募らせたプレオブラジェンスキーは、シャーリクを犬に戻す。おそらく時には人間でないほうがよいこともあるのだろう。

5. ライカ、ベルカ、ストレルカ(そしてその他の宇宙飛行犬たち)

ソ連、モスクワ、1961年3月28日の記者会見。左から右へ:ストレルカの子犬:ディムカ、プシンカ、ダムカ、ティシカ、マリュトカ;ストレルカ;子犬クドリャシカ;ブルカ、チュルヌシカ、ズヴョズドチカ。

 ソヴィエトの宇宙飛行士ユーリー・ガガーリンが1961年に宇宙に行った最初の人間になる前、宇宙飛行に生き物が耐えられるかをテストするため、ソ連は数多くの犬たちを宇宙へ送っている。すべての犬が雑種の野良犬で、科学者たちが最善を尽くして育てた。彼らの命が悲惨に終わってしまうかもしれないと知っていたからだ。

 1957年に地球を周回した初の生き物となったライカに起きたことがまさにそうであった。彼女の乗った宇宙船スプートニク2は打ち上げに成功したが、しかし当時の宇宙産業は彼女を連れ帰ることができなかった。つまり小さなライカは宇宙で死んでしまった。

 それでも、ライカの悲劇的な経験のおかげで、研究者らはソヴィエトの宇宙船を改善することができた。1960年、科学者らはさらに2匹の犬、ベルカとストレルカを軌道へ送り込んだ。2匹は飛行を生き延びることができた。軌道上に1日以上とどまり、地球を17周した。ベルカとストレルカは帰還し、宇宙研究機関で長く幸せな一生を送った。そのくらいの報いは当然だ。彼らは、他の多くの犬同様、人類のために宇宙への道を切り開いたのだから。

6. 黒い耳の白いビム

映画「黒い耳の白いビム」のシーン。

 1971年に同名の小説を書いたソヴィエトの作家ガヴリール・トロエポルスキーに作り出された黒い耳の白いビムは、変わった白い色のスコティッシュ・セッター。ビムは、妻に先立たれて孤独に暮らす老いた退役軍人のイヴァン・イヴァヌィチに育てられている。イヴァン・イヴァヌィチが戦争の古傷がもとで病気になった後、ビムは置き去りにされ、困惑の中で孤独となる。

 彼は必至で飼い主を見つけようとし、善人も悪人も含めいろいろな人々に出会う。中には彼を叩いたり苦しめたりする人もいる。反対に、彼を助け怪我を治療してくれる人もいる。犬はとうとう保護施設で死んでしまう。イヴァン・イヴァヌィチが彼を見つける数時間前のことだった。フィクションではあるが、ビムは、忠誠と献身を象徴する“ロシア版ハチ公”のような存在となった。 

7. シャーリク(児童書プロストクヴァシノより)

 ブルガーコフのシャーリクと同名のこのかわいらしい犬(この名前は“小さな玉”という意味で、ロシアでは犬の名として極めて一般的)は、児童作家のエドゥアルド・ウスペンスキーによって生み出され、1978年にプロストクヴァシノの三人のアニメが公開されて以来、全国的なスターとなった。 

 シャーリクは“三人”の一人で、あとの二人は、フョードルおじさんというあだ名の利口な少年と、猫のマトロスキンだ。彼らは皆プロストクヴァシノ村に一緒に住んでいる。合理的で実務的なマトロスキンと異なり、シャーリクはどうしようもないロマンチストで、常にトラブルに巻き込まれる。 

 例えば、彼は狩りが大好きだが、動物を殺すという考えに耐えられない。このため、友人たちから“写真銃”をもらうが、これは銃とカメラを合わせたもので、生き物たちを傷つけずに“狩る”ことができる。全く無計画な性格だが、シャーリクは素晴らしい友人で、いつも優しく、自然を愛し、寛大だ。

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