世界的ピアニスト、マツーエフにインタビュー:「日本の民謡とチャイコフスキーに共通点」

デニス・マツーエフ氏

デニス・マツーエフ氏

ヴャチェスラブ・プロコフィエフ/TASS
 世界的ピアニスト、デニス・マツーエフ(42)が、ロシア文化フェスティバル「ロシアの季節」の閉会セレモニーの一環として、東京でコンサートを行った。マツーエフは記者団に対し、初来日したときの思い出や、イルクーツクに建設予定の新コンサートホールなどについて語り、また日本の若いピアニストたちに助言した。

初来日の印象について

 私が日本公演を行うようになってからもう21年です。この国の最初の印象は衝撃的でした。当時、私は、モスクワ音楽院在学中で、モスクワ・フィルのソリストになっていたのですが、最初の海外公演が日本でした。

 来日後ただちに、サントリーホールで、東京フィルと協奏曲を演奏しました。私は日本という国に惚れ込み、驚かされました――その文化や、この国のいたるところにあるユニークなコンサートホールから、見事なまでの慎ましさ、謙虚さ、感受性、同情心にいたるまで。もちろん、ユーモア感覚、日本料理、稀に見る清潔さにも感嘆しました。

 こんな忘れられない出来事がありました。初来日の際、私が銀座を歩いていたときのことです。小さな女の子がお母さんと歩いていたのですが、お母さんのバックから何かの紙きれが落ちました。女の子はお母さんを止めて、その紙きれに走り寄って拾い、しかも、落ちた場所を拭いました。

 私は驚嘆しました。きれい好きがいわば血の中を流れているのですね。お年寄りを大事にし敬うこともそうで、これも私がとても親しみやすいことです。

 そして、日本人とロシア人には多くの共通点があると思います。まず、日本の民謡、古謡ですが、いわゆる五音音階で書かれていることがとても多いです。ところで、チャイコフスキーにも、五音音階進行のパッセージが非常に多いのです。

 日本人は、ロシアの音楽家、作曲家、文化を熱愛してくれます。日本人の魂はある程度、ロシア人の魂に近いと思います。日本人は、音楽を聴いて号泣したり、笑ったり、有頂天になったりできる人たちなのです。だから、私は日本で演奏するのが大好きです。日本公演も、私のかなりハードなスケジュールに組み込まれているわけですが、何とか来日するようにして、ここで一息つき、休んでいるのです。

 

マツーエフの故郷イルクーツクに建設予定の新コンサートホール 

 建設は進んでいますし、ちゃんと完成するのは間違いありません。音響設計家の豊田泰久さんは、現在、我々がいるこのサントリーホールも手がけた方ですが、日本内外のホールを数多く設計しています。イルクーツクにも既に2度来られました。今は、向こう2~3年のプランを練り上げているところです。ホールが完工するのは間違いありません。

 

日本の若手ピアニストたちについて

 今回の公演の一環として、東京と浜松のヤマハでのコンサートが一回ずつありましたが、そこで、私が主宰するコンクールの受賞者が二人、アレクサンドル・マロフェーエフと奥井紫麻も演奏しました(*2016年、デニス・マツーエフが創設し自ら芸術監督を務めた第1回国際青少年ピアノ・コンクール「グランド・ピアノ・コンペティション」が開かれ、日本の奥井紫麻も入賞を果たした。マロフェーエフはグランプリ――編集部注)。奥井紫麻さんは、日本の最も優秀な若手ピアニストで、すでにモスクワ音楽院付属中央音楽学校で学んでいます。

 稀有な才能の持ち主で、まだ13歳ですが、ラフマニノフ、ベートーヴェンなどの協奏曲をもう弾いてまして、私の賞は全部とり、他の賞も受賞してます。ユニークな少女です。ほかにも日本の多くの若手ピアニストがロシアで学んでますし、世界各地でロシア出身の教師のもとで勉強しています。

 日本人は、これまでに何度も、チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリンとピアノなどの部門で入賞しています。そういう優秀な人がたくさんいます。日本の今の若い世代は強力ですね。

 

若い音楽家への助言

 もし自分の人生を音楽に結びつけたのなら、ものすごく困難だが驚くほど幸福でもある、この道をたゆまず歩んでいく覚悟を持たなければなりません。音楽を愛し、ステージに出るたびに、それがどんな舞台であろうとも、常に150%の力を出すことです。いつでもどこでも全力を尽くさねばなりません。

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