卑金属で芸術品や宝飾品づくり

「杣人の休み」、ミニバー

「杣人の休み」、ミニバー

セルゲイ・ガイデンコフ/「ニク・ファベル」
 今日、金や宝石に驚くことはあまりなくなった。これらの材料は、高額商品(価値が妥当かは別として)に生まれ変わって、あちこちに保管、使用、展示されている。モスクワの個人事業主ニコライ・サヴィンコフさんは、安材料でも美しくて価値の高いものをつくれることを示そうと、創作作業を始めた。

 「宝石の販売をしながら、つまらないものを売っていたよ(笑)。金や他の貴金属でつくられたすべての商品は、それがどれほど大雑把なものであっても、とても高い。金色の塊に穴を開けただけで、宝になるのさ。うんざりしたね」と、「ニク・ファベル」スタジオの創設者で唯一のフルタイム従業員ニコライ・サヴィンコフさんは話す。

 宝石の販売の仕事を辞めてかなり時間が経過したある日、真の芸術とは材料ではなく芸術家の技によって決まるということを証明しようと思い立った。そして、「ニク・ファベル」を創業した。

 「黒鋼や粗鉄のような安い材料を使い、最高級の彫金・宝飾工具を使うことなく、芸術品をつくれるということを証明するのが目標」とサヴィンコフさん。使う工具は主に、半自動溶接機、アングル・グラインダー、スクリュードライバー。できあがった作品は見事で、細部まで丁寧に仕上げている。

 運営は次のように行われている。サヴィンコフさんはコンセプトを考え、サンプルをつくり、交流サイト(SNS)や広告で紹介する。特注品を依頼する人も中にはいるが、サンプルと同じものを依頼する人がほとんど。「冒険しようという人は少ない」

 サヴィンコフさんの作品は創造性に富んでいる。大きな昆虫のランプ、剣やピストルの形をした靴べら、大きな水タバコ・ランプ時計(3つ一緒)など、幅広い作品がある。さまざまな形と大きさのコルク栓抜きやグラス・ホルダーは、最も人気の高い注文品の一つ。

 金型や倣い加工用工具を使用しないため、どれも唯一無二の作品である。「前につくったもののレプリカをつくろうとしても同じにならない。手作業だから細部は変わる」とサヴィンコフさん。

 異なる作品を金属からつくることで、約7年、収入を得てきた。 ずっと孤独な作業を続けているわけではない。工事業者、木工師、物流専門家などにアウトソーシングすることもある。だが金属で作品をつくる時は一人である。

 今までで最も大変だった作品の一つは、月面車の形をした灰皿だったという。3枚のディスクと10本の小さなスポークのある小さな車輪を8個取り付ける必要があった。「0.8ミリのワイヤー、小さな点を溶接しなくてはいけなかった。手が滑ったり、ちょっと熱すぎたりしていたら、すべてが溶けてしまう」。スノークの頭(ゲーム「S.T.A.L.K.E.R.ユニバース」の架空の生き物)のランプをつくるのは決して簡単ではなかったが、うまくできた。

スノークの頭(ゲーム「S.T.A.L.K.E.R.ユニバース」の架空の生き物)のランプ

 サヴィンコフさんは異なるスタイル(ロフト、テクノアート)で作業をしているが、作品のほとんどが古き良きスチームパンクをほうふつとさせる。それもそのはず。重厚さと優雅さの組み合わせゆえにこのスタイルを尊重しているのだ。「物が数百万個と複製され、すぐに壊れてしまうプラスチックの時代を私たちは生きている。だからスチームパンクが人気。何世紀も保存可能な、ビクトリア朝の荒々しい美しさを備えた物をつくっていた時代を示しているんだと思う」。スチームパンクは、置換可能で通俗的な近代産業のコントラストである。それゆえに用いている。

 サヴィンコフさんの作品は珍しく、一品モノであるため、3000~1万5000ルーブル(約5700~2万8000円)ほどする。 もっと高い価格を設定することも可能であるが、そうすると販売が難しくなる。店頭販売であればさらに2倍、3倍になってしまう。喜んで生産を拡大するところだが、経済状況は厳しく、高級品の需要は低迷していると、サヴィンコフさん。いまのところ、一人で仕事をしている。サヴィンコフさんは、仕事を宝石のカットにたとえる。力を入れすぎると作品全体がダメになる。集中を持続させることが大事だと。

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