超能力者を頼った指導者たち

グリゴリー・ラスプーチン=

グリゴリー・ラスプーチン=

Alamy/Legion Media
 ロシアの歴史には多数のペテン師や神秘主義者が登場するが、その中で特権層、支配者層で活動することが認められた人の数は少ない。ここでは、ロシア人支配者の信頼を勝ち取った3人の人物に注目してみよう。

 遙か昔から、「超自然的な」力を持つ人には神秘的な知恵と力があると考えられてきた。他の国と同様にロシアでも、そのような人々が依頼主のために将来を一瞥したり致命的な過ちを回避する方法を提案していた。この種の能力は、支配層にとってたいへん貴重なものだった。

 ロシアNOWが、さまざまな形でロシアの指導者たちに関わった3人の神秘的な人物たちに注目してご紹介する。

 

皇帝家の神霊治療家

 多数の国で広く有名になったグリゴリー・ラスプーチンは、ロシアの歴史で最も物議を醸す人物のひとりだった。今日に至るまで、彼が神聖な「奇跡の人」だったのかペテン師だったのかについて、意見は定まっていない。

 1869年にシベリアの農家に生まれたラスプーチンは、ほとんど学校に通わず、読み書きを習得しなかったと伝えられている。数年間の巡礼を経て1903年にサンクトペテルブルクに到着した彼は、すぐに神秘主義やオカルトの実践に取りつかれた貴族たちの間で引っ張りだことなった。

グリゴリー・ラスプーチン、1914年=アーカイブ写真グリゴリー・ラスプーチン、1914年=アーカイブ写真

 やがて彼は皇帝家と知り合いになり、唯一の男系皇位継承者で血友病を患っていたアレクセイ皇太子を助けたことから、ツァーリのニコライ2世の信頼を得るようになった。ラスプーチンは皇太子の病状を緩和させることができた。

 公式な決裁を行う際にはツァーリはラスプーチンに相談した。ラスプーチンはニコライ2世にドイツとの戦争を回避するよう説得を試みることもあったほどだ。あいにく、この神霊治療家はツァーリを説得することができなかった。第一次世界大戦が1914年に勃発したが、これはロシアにとって400万人以上もの死者を出す大惨事であった。

 ラスプーチンは自らの死さえをも予言し、近い将来にロシアを襲う危機についてニコライ2世に警告した。1916年12月にツァーリに送った手紙で、ラスプーチンは、ロシアの貴族が彼を暗殺すれば、ロシアに25年間は平和が訪れないであろうことを予言した。

 「ロシア皇帝として、陛下はロシアの臣民によって殺害されるでしょう。そして人々は呪われ、あらゆる場所でお互いを殺し合う悪魔の武器となるでしょう」とラスプーチンは書いている。「25年の間に3回、彼らはロシア国民と正教の信仰を破壊し、ロシアの国土は死ぬでしょう」

 この予言は現実となった。1916年12月30日、ラスプーチンはツァーリの側近の貴族によって殺害された。この暗殺のすぐ後に、ロシアでは革命が勃発した。そしてこの予言がなされてから2年も経たないうちに、皇帝一家は処刑された。

 

スターリンの魔女

 ソ連の国家指導者ヨシフ・スターリンの人生に登場する女性についてはさまざまな噂話があったが、そのうちの一人であるナタリア・リヴォーワは、誰よりもこの指導者と親密な関係にある人だった。だが、彼女は愛人だったわけではない。

 サンクトペテルブルクの著名な予知能力者の娘だったリヴォーワは、スターリン自身により1930年代にモスクワに召喚された。

 このソ連の国家指導者は超能力を信じていたとされており、超能力者が自身の政治的企てにおいて重要な味方になりうると考えていたらしい。

ナタリア・リヴォーワ=アーカイブ写真ナタリア・リヴォーワ=アーカイブ写真

 『スターリンの母の回想録』の著者、イーゴリ・オボレンスキーによると、リヴォーワはこの指導者を「邪視」と、彼の政敵がもたらす負の影響から守っていたという。黒魔術に対する防御として、リヴォーワは写真を撮影されないようにするほか、本当の生年月日を明かさないよう何度も助言した。

 スターリンの写真の大多数は、実際には彼自身の姿ではなく、見た目そっくりの人のものだったという噂があった。そのような噂によると、唯一彼をとらえた本物の写真は、このソ連指導者が半分横を向いて、目が覆われており、口にパイプが入っている様子のものだけだという。彼の目は閉じられており、パイプによって一種の保護シールドが形成されたため、黒魔術の目的にこの写真を使うのは不可能だった。

 時に不自然に見受けられた人事異動の決定については、リヴォーワがスターリンに助言した可能性が高いが、それらはほとんど間違いなく正解であることが判明した。今日でも、リヴォーワの生涯について判明している内容はごくわずかである。

 

ジューナ

 ジューナという名前でよりよく知られているエヴゲニア・ダヴィタシュヴィリはロシアのまじない師、治療師で、ロシア国内外の多数の著名人物を治した。

 彼女はレオニード・ブレジネフにより「発見」された。彼女はブレジネフが死亡するまで彼のことを尊敬していた。彼は彼女をジョージア(グルジア)のトビリシからモスクワに連れ出し、彼女はクレムリンの近くに住んだ。

ジューナ(エヴゲニア・ダヴィタシュヴィリ)=ヴィターリイ・アルチューノフ/ロシア通信ジューナ(エヴゲニア・ダヴィタシュヴィリ)=ヴィターリイ・アルチューノフ/ロシア通信

 彼女は生体エネルギーを医療目的に利用する方法を奨励したが、彼女はブレジネフを死から何度も救ったと伝えられている。彼は、ジューナがお付きの神霊治療家として働くのを辞めた数ヶ月後に死去した。

 彼女はロシアの学術コミュニティによる研究対象としておおいに注目され、最も尊敬を集める科学者たちにより彼女の能力がひっきりなしに検証された。

 調査結果では、ジューナは分子レベルで身体に影響を及ぼし、血球細胞の特性を改善させる能力を持っていたことが判明した。彼女は、誰にでも生体エネルギー能力があるが、病気の治癒のためにその力を集中させることができる人はごく僅かであると主張した。

 ジューナはその人生において、ミハイル・ゴルバチョフやボリス・エリツィンを含む多数の高官や公的人物を助けた。

 2012年6月のインタビューで、ジューナはウラジーミル・プーチンとドミトリー・メドヴェージェフとも良い関係にあり、ウクライナのヴィクトル・ユシチェンコ元大統領を治すよう依頼を受けことさえあったが、それは拒否したと認めた。

 ジューナは1986年のチェルノブイリ原発事故、1991年8月のクーデターとソビエト連邦の崩壊を予測した。

 2015年に死去したこの神霊治療家は、ロシアの将来について概して楽観的な見解を示した。 ジューナは、西側諸国による対ロシア制裁とウクライナの危機がロシアにとって大きな問題になるとは考えなかった。  だが、ウクライナの紛争が2ヶ月以上持続すれば、世界の指導者の間で対立が起きる可能性があるとも述べた。