エルミタージュ美術館=
アレクセイ・ダニチェフ/ロシア通信副題は「オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」。展示されるのは85点。レンブラント、ティツィアーノ、ルーベンス、ヴァン・ダイクなど、いずれも16-19世紀の西欧の巨匠たちの名品だ。
これらは、もともとはエカテリーナ2世と、その孫アレクサンドル1世、ニコライ1世のコレクションだった。ロシアNOWはこのたび、同展のキュレーター、スヴャトスラフ・サッヴァチェーエフ氏に話を聞いた。氏は今回の一押しについて、日本における印象派の人気について、エルミタージュの魅力について語ってくれた。
―なぜ16-19世紀という期間の西洋絵画が選ばれたのか。
それは日本側に聞いてみなければ。しかし、この選択は正しい。前回の展覧会は17-20世紀で、19世紀絵画が多く、散漫になってしまった。今回はより、狙いがはっきりしている。18世紀末から19世紀初頭の作品もいくつかあるが、基本的にはバロックの時代であり、より狙いのはっきりした、誰が見ても楽しめるものになるだろう。
―どの作品が一番重要と思われますか。
展示されるどの作品も興味深いものだろうし、時には一枚の絵画で展覧会が開かれることもある。いずれも見る人にとっては同じように貴重なのだ。絵に軽重をつけることは正しくないと思う。特に、私の立場からは言えないことだ。ただ、私が好きな絵ということなら、話してもいい。今回展示されるものの中で一番の、いや、エルミタージュで(私はスペイン絵画担当なのだが)一番の私のお気に入りは、フランシスコ・デ・スルバランの「聖母マリアの少女時代」だ。スルバランは、17世紀スペインの枠を超えて、西洋絵画全体の中でも、もっとも興味深い画家のひとりだ。そもそも絵画(ジーヴォピシ)とは、活き活きと描く(ジーヴォ・ピサーチ)ためのものだ。彼にはそれができた。ここに描かれているのは、まだ幼い聖母だ。彼女は祈っている。スルバランはスペインの宗教性を表現することに成功している。もとになっているのは明らかに、ほぼ正確な、自分の幼い娘の肖像だ。この作品はもともとクズヴェルトのコレクションに入っていたもので、19世紀にエルミタージュが獲得した。
―エカテリーナ2世やアレクサンドル1世、ニコライ1世のコレクションも出展されるのか?
出展される。ただ、エルミタージュの絵画コレクションの歴史となると、語るべきことは多すぎる。展覧会において、そうしたことが二義的なものになることもある。むろんコレクションはエカテリーナ時代、またはもっと前の時代に形成された。ピョートル1世やその同時代人たちが買った絵もある。ただ、当時は美術館はなかった。絵画は宮殿に秘蔵された。そこへエカテリーナが、絵画美術館を創設した。世界文化の博物館たるエルミタージュは、第一義的には絵画美術館として発足したのだ。かつて欧州で、今や世界中でその名を知られる名品たちの、膨大なコレクションが購入された。
―エルミタージュを訪れる日本人は多いのか。
かなり多い。エルミタージュは世界最大級かつ、最も興味深い美術館のひとつだ。当然、魅力がある。日本人も対象外とはならない。インテリアや千変万化の展示品に魅せられ、宝石箱の中に入るかのよう。その宝石箱の中で特に彼らが魅せられるのは、たぶん、印象派だ。そしてやはり、インテリア。寄木張りの床、膨大な数の貴石、甕、柱、孔雀石、ラピスラズリ・・・。驚くべきことに、スペインを含め、欧州から来る専門家たちも、寄木張りの床には目を剥くのだ。
―なぜ日本人は、それほどまでに、西洋美術に関心を寄せるのか。
我々の側で起きているのと同様の現象なのだろう。ロシア人は日本の美術が大好きで、日本も大好きだ。文化における他者性というものだ。よろず、他なるもの、境界的なものは、人を魅了する。なお、印象派について付言すると、私の知る限り、日本の個人コレクションでは印象派が非常に多い。それらは20世紀初頭に購入されたものだ。つまり、ちょうど日本が欧州に対して国を開いたころのこと。それからもう100年が過ぎた。世界はすっかりひとつづきになった。ならば、皆が興味をもつものに日本人が興味をもつのも、自然なことだ。
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