ユーリ・モロトコヴェツ撮影
-エルミタージュ美術館で写真家の活動を始めてどれぐらいになりますか。どのようにしてこの職に就いたのですか。
活動して20年です。エルミタージュ美術館の歴史に比べたらとても短い時間ですね。ここに来たのは偶然です。1993年から1994年の変動期、形式張らない文化に共感し、サンクトペテルブルクの芸術家グループ「ミチキ」と知り合い、新聞や書籍を一緒に出版していました。そうしたらエルミタージュに招かれたのです。
美術館の仕事とはどんなものかわからなかったのですが、とりあえず承諾しました。今はエルミタージュが単なる美術館ではなく、完全な宇宙であることを、鳥肌が立つほど実感しています。承諾して良かったとつくづく思います。
-最近、展示会「エルミタージュのネコ」を催しましたね。アイデアはどのように浮かんだのですか。
美術館の大広間にいるネコを管理している、ミハイル・ピオトロフスキー館長の秘書マリヤ・ハルトゥネン氏のアイデアです。私たちは、ネコの視点からの大広間を描き、また美術館をネズミから守るネコの普段の姿を写したいと考えました。
撮影前に撮影時の行動、表情などの注意点について、1時間半ほどそれぞれのネコと話をしなければなりませんでした。始めた時は、うまくいくか自信がありませんでした。撮影班と美術館の警備部という集団で、月曜日の休館日に撮影を行いました。
5月に撮影し、5日の活動で終わりました。撮影前にネコの世話をしている1人の女性が、「ひっかかれるわよ!」と脅かしてきたのですが、大丈夫でした。”モデル”を増やして2015年にも同じプロジェクトを行う予定です。再びカレンダーをつくり、ネコの故郷であるカザンで展示会を行います。
エルミタージュには現在、70匹ほどのネコが暮らしています。サンクトペテルブルクに「ネコ共和国」という特別な場所があり、ここが獣医学的な面で支援し、さまざまな活動を行い、「宮殿のネコ」証を発給しながら、一部のネコを一般家庭に引き渡しています。これは多文化センターであり、ネコがいて、展示室(展示会「エルミタージュのネコ」が現在行われている会場)や、ネコに関連するメニューのあるカフェもあります。ここに行くには事前予約が必要です。
美術館で仕事を始めた1990年代、ここのネコはブランドになっていませんでした。私は1997年頃、ヨルダン階段の遊歩を許されていたネコのムシカと知り合いになりました。早朝、カメラとソーセージを持って、ムシカのところに遊びに行ったのです。
ソーセージにはそれほど反応しませんでしたが、撮影が気に入ったみたいで、喜んでポーズをとっていました。ムシカの写真がついた小さな記事がある雑誌に掲載されたのですが、このネコをきっかけに、エルミタージュのネコ軍団がマスコミのスポットライトを浴びたと考えています。
その後ネコのために、美術館の地下室や図書館でいくつかの内部展示会を行ったり、児童アート・スタジオ「エルミタージュで絵画」の絵のオークションを実施したりしました。これらは毎年恒例の春の祝日「エルミタージュのネコの日」に発展しました。
美術館のどの部門にも特別な募金箱があり、職員が募金できるようにもなっています。
-他にはどのような写真展示会を催したのですか。
「新エルミタージュ」があります。新エルミタージュのニコライ階段のところにあるイタリア彫刻の写真を撮影したものです。改修工事中だったので、天井にはビニールが張られています。
これは珍しく、深い意味のある作品になりました。永久的な大理石が、一瞬のポリエチレン、我々の生活様式と文明に包まれているのです。
他には「孤立 エルミタージュの夜」という2005年のプロジェクトがあります。遅い時間に仕事を終え、照明の消えた、人気のないホールを歩くことがよくありました。美術館、その傑作が月明かりに照らされ、ポツンと取り残されている、非常にめずらしい状態です。
何年も美術館で働いた後に、これを撮影することを決めました。撮影期間は9ヶ月ほどかかりました。フィルムで撮影し、非常に長い露出がありました。このアイデアを支持したピオトロフスキー館長は、作品を見て、展示会を実施することを提案しました。ロンドンの友人は写真集も発行しました。私の人生の中でも大切な写真です。
ユーリ・モロトコヴェツ氏
3つ目のプロジェクトとして、2009年の「大理石」があります。これは新エルミタージュの磨かれた大理石の壁と、そこに反射するアンティークな彫刻です。
最新のプロジェクトは、「エルミタージュ 写真の時代」です。美術館、大広間、階段、宮殿広場の「グローバルな風景」シリーズで、たくさんの人が写っています。注意して見ると、誰もがカメラ、携帯電話、タブレットを持ちながら、写真撮影をしていることがわかります。このプロジェクトは美術館の管理部に展示されており、マルチメディアのフォーマットもあります。ピオトロフスキー館長はニューヨークで美術館のプレゼンテーションを行った時、この動画を使いました。インターネットでも公開されます。
-ガジェットが登場してから、多くの来館者が自撮りしたり、絵画や彫刻を背景にふざけたりするようになったことについて、どう思いますか。
美術館写真家の主な仕事とは、学術出版や展示会カタログのために、また修復や美術館の様子を撮影することである。モロトコヴェツ氏はアート写真などの一風変わった仕事を手がけている。
美術館で写真撮影をしている誰に対しても共感できるところがあります。自撮りや他の撮影とは、自分の生活や時代の記録を残す特別なプロセスです。誰もが写真家という時代はこれまでなかったので、起こっていることを評価するのは難しいですね。
写真は現代の共通語で、レンブラントの「放蕩息子」やマティスの「ダンス」を背景に自撮りをして、インターネットにアップロードすると、それだけで友人に多くを語ったことになります。
写真は残り、時間の経過とともに価値を増していきます。後にその写真を見て、喜び、悲しみ、愛、そしてエルミタージュで見た芸術など、すべてがつまった素晴らしい人生を生きたことを感じるのです。
-エルミタージュを一言で言うとどうなりますか。
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