前回、クリーチ(復活大祭用の甘食パン)の記事を用意していた時、会う人会う人にクリーチの話をしていた。こういう執着めいたものって誰にでもあると思うのだけれど、どうだろう。
私が話した女子の一人はビーガン(絶対菜食主義者)で、ビーガン用のクリーチをつくろうとしていた。それをさほど珍しいとも思わなかったけど、クリーチを特別な食べ物にしてくれる材料というのは、40日の長い大斎の期間口にできない卵、牛乳、バターなのだと、ふと思った。
今日、たくさんの食運動がある。菜食主義、魚菜食主義、絶対菜食主義、無グルテン、無糖、無カフェイン、砂糖オンリーにカフェインオンリー...(おっと、こっちは私の夢の中だけか)。ロシア人は欧米人ほど食品に自分なりの選択肢を設けることにこだわってはいないけど、そういう動きがあるのも事実。
たくさんの選択肢があるのだから、うるさくなったっていい。でもその昔、買える物イコール食べる物だった時代、特定の食品群を排除するような選択をしていた人なんていたのだろうか。
そこで、今週のディナーは、ソ連時代の菜食主義。乾燥アプリコットとレンズ豆、クルミとインゲン豆の料理を選んでみた。
料理は想像以上の出来だった。夫が満足するようにフライドチキンも添えたのだけど。
肉抜き料理を出してもらうためセレナーデを歌った物理学者
ソ連時代の菜食主義への興味を満たそうと、とても大切な家族ぐるみの友人である82歳の物理学者に聞いてみることにした。一晩中働き、一日中寝て、肉を食べず、英語が流暢で、ユーモアのセンスがあって、歌がうまく、20歳ぐらいの熱意を持っているご老人。変わり者?そうかもしれないけど、それが30年以上前に肉を食べるのをやめた理由ってこと?
物理学者さんはこんな話をしてくれた。「私がベジタリアンになったのは1982年。ベジタリアンでいれば病気になることはないから、薬なしで生きれると信じている。もちろん、私は変わり者だと思われてきたし、今でもそう思われている。目覚めにはサラダを食べていただけ。あとはテーブルの上にあるパセリとディル、ニシンとオニオンの料理のオニオンだけを食べていた」
「病院になんて行くことはできない。菜食主義のオプションを用意してくれないのだから。食堂の女性に肉なしの料理を出してもらうのに、セレナーデをうたった(文字通り)こともある。そのおかげで、食べきれないほどの料理をもらって、家に持ち帰ったのだけどね。かつて他にも2人ベジタリアンがいたよ。1人は同じ物理学者だった。単なる菜食主義者というだけでなく、生食主義者でもあったんだ。最近会ったら、ちょっとそれが大変すぎて、普通の食事制限に戻したと言っていたが。まわりにはもっとベジタリアンがいるはずだし、いつでもいたはず。ただこの国でベジタリアンでいるのは大変」と物理学者さん。
奇抜さ、ビーガン用クリーチ、選択の自由(あまり選択肢はないように見えるけど)には、ワイン、有機スムージー、ノンカフェインの大豆ラテ、イオン水、またはケフィアのグラスで乾杯しようかしら。そろそろこの記事の乾杯の音頭もとらないとね。
乾燥アプリコット入りレンズ豆
レンズ豆 1カップ
タマネギ 1~2個
乾燥アプリコット 50グラム
クルミ 25グラム
植物油 大さじ2~3杯
青物(ハーブ等) 適宜
レンズ豆を洗う。鍋にレンズ豆と水2カップ半(360ml)を入れ、やわらかくなるまで1時間から1時間半茹でる。乾燥アプリコットをお湯に入れて15分間浸し、粗切りにする。タマネギをみじん切りにし、油をしいたフライパンか鍋に入れ、乾燥アプリコットを加えて炒める。塩、コショウをして味をととのえ、レンズ豆を加える。砕いたクルミを加える。10~15分間煮て、火を止める。器にもったら刻んだ青物(ハーブ等)をふりかける。
クルミ入りインゲン豆
インゲン豆 1カップ
クルミ 50グラム
タマネギ 1個
青物(ハーブ等) 75グラム
インゲン豆を洗い、水に浸して、水を捨てる。鍋にインゲン豆を入れ、ひたひたになるまで水を入れ、茹でる。タマネギをみじん切りにして加え、沸騰させる。細かく砕いたクルミを加え、塩、コショウして味をととのえ、かきまぜる。器にもったら刻んだ青物(ハーブ等)をふりかける。これは温かい料理としても、冷たい料理としてもふるまうことができる。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。