刊行:2014年2月
諫早勇一 著
東洋書店
20世紀以降のロシアの文化は本国を遠く離れた亡命ロシア人社会の存在を抜きにして語ることはできない。
1917年のロシア革命より後、動乱や弾圧から故国を後にした大勢のロシア人は世界各地に亡命社会を形成し、ソ連本国では実現不可能な芸術が異国の地で開花した。
本書はこのうち、一時は約20万人を擁したベルリンのロシア人社会を紹介する、文字通りの労作である。
大量の史料を駆使する学術書だが、語り口はソフトで読みやすく、運命に翻弄される人間群像を描く筆致は、時に小説のようにスリリングだ。
各種の芸術や出版文化に十分に目配りしながらも、職探し、教育問題、本国政府との緊迫した関係など、亡命者の生々しい暮らしぶりを活写する点も、本書の大きな魅力だろう。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。