ボリショイ劇場の2014/15季発表

Photoshot / Vostock Photo撮影

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一連の騒動を乗り越え、幹部交替を経て、新たな気持ちで第239シーズン(2014/2015)にのぞむボリショイ劇場。オペラやバレエの愛好家の主な関心は、すでに今後の舞台に集まっている。

オペラの初演

 新シーズンのオペラ演目に加わったのは、ヴェルディの「リゴレット」、チャイコフスキーの「スペードの女王」、モーツァルトの「フィガロの結婚」、ビゼーの「カルメン」、バネヴィッチの「カイとゲルダの物語」。­この5演目は、就任して間もないウラジーミル・ウリン新総支配人、トゥガン・ソヒエフ新音楽監督が、苦労して用意した作品。

 このうちの2演目はすでに同じ演出家のもとで上演済み。「スペードの女王」を上演するサンクトペテルブルクのベテラン演出家レフ・ドージンは、1999年にすでにパリで公演を行っている。だが今回の舞台は新たな内容となっている。「リゴレット」を上演するのはカナダの演出家ロバート・カールセン。昨年のエクサン・プロヴァンス音楽祭ですでに公演を行っている。

 オペラではなく舞台の演出家を多く招いているため、オペラよりも演劇風になるリスクがある。ボリショイ劇場青年プログラムで「フィガロの結婚」を演出するのはエヴゲニー・ピサレフ。青年プログラムとは、ロシア国内で若き才能を発掘し、大舞台で発揮させる、特別な「社会的上昇」の機会である。

 「カルメン」を演出するのはロシア・アカデミー青年劇場の首席演出家アレクセイ・ボロジン。ウリン新総支配人と1970年代、キーロフ市児童劇場で7年間一緒に活動した経験を持つ。「カイとゲルダの物語」を演出するのは、若き演出家ドミトリー・ベリャヌシュキン。

ウリン新総支配人は、10ヶ月という限られた期間で理想的な演目をそろえるのが難しかったと、素直に感想を述べた。「このような短期間で新シーズンの計画を作成するのはとても難しかった。計画には何らかの譲歩がある…」。長期的には大きく改善させることを約束した。

 

バレエの初演

 発表されたのは3演目。世界初演の「ハムレット」(音楽はショスタコーヴィッチの交響曲を使う予定)、イリヤ・デムツキーの音楽を基調とした「現代の英雄」、また1965年に初めてボリショイ劇場で披露され、すでにクラシックとなっているユーリー・グリゴローヴィチ振り付けの「愛の伝説」。

 「ハムレット」にはイギリスの演出家デクラン・ドネランが招待された。振付家はラドゥ・ポクリタル(2014年ソチ冬季五輪のセレモニーで振付と演出を担当)。ドネランとはプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」をボリショイ劇場で演出ししている。プロコフィエフの子孫はポクリタルに立腹していたため、これ以上音楽の使用を許可しないようである。逆鱗に触れたのはバレエ「シンデレラ」。ポクリタルのシンデレラは売春宿で踊っていた。プロコフィエフもペローもこの振付家を承認しなかっただろうと、子孫は言っている。

 ドネラン&ポクリタルは今回、もう一人のソ連の大作曲家、ショスタコーヴィチの作品を採用することに決め、子孫と協議を行っている。一部評論家は合意にいたらない可能性も指摘しているが、ウリン新総支配人は楽観的な見方をしている。

「現代の英雄」は、ロシアの詩人ミハイル・レールモントフの中編小説の3章「ベラ」、「タマニ」、「公爵令嬢メリー」を基調としている。演出家として招かれたのは、劇場「ゴーゴリ・センター」で芸術監督を務めるキリル・セレブレンニコフ。2011年にボリショイ劇場で、リムスキーコルサコフのオペラ「金鶏」を演出している。伝統的な児童演劇用のおとぎ話を、現代の大人向けの毒のある風刺に変えたことから、物議をかもしていたもの。「ハムレット」も「現代の英雄」も意外な演目だ。ボリショイ劇場は結果を予測できない実験に着手したと言える。

 

日本公演は1119日から127日まで 

 ロシア国内でのボリショイ劇場の巡業は、残念ながら計画されていない。国際的に有名なブランドであるため、世界の主要な舞台でひっぱりだこだ。ウリン新総支配人は国内巡業について、不明瞭な約束をするにとどめており、やはり世界が優先的となっている。

 直近ではアメリカのワシントンD.C.でバレエ団が5月20日~25日に「ジゼル」を、ニューヨークでオペラ団が6月12日~13日にゲンナジー・ロジュデストヴェンスキー指揮の「皇帝の花嫁」を披露する。またニューヨークでバレエ団が7月15日~8月1日、「白鳥の湖」、「ドン・キホーテ」、「スパルタクス」の公演を行う。

 日本公演は11月19日から12月7日まで。東京、大阪、愛知、栃木、滋賀、富山、静岡で、「白鳥の湖」、「ドン・キホーテ」、「ラ・バヤデール」を披露する。

 来年3月後半には香港でも両団の巡業が予定されている。演目はオペラ「皇帝の花嫁」、バレエ「パリの炎」と「ジュエルズ」。

来年7月はブラジル公演で、「スパルタクス」など、2演目を上演する。

 

幹部の交替

 アナトリー・イクサノフ氏が解任された後、総支配人に就任したのはウラジーミル・ウリン氏。まだ就任後10ヶ月しか経過していない。トゥガン・ソヒエフ氏が音楽監督に就任したのは、前任のヴァシリー・シナイスキー氏がシーズン中に突如辞任した後の今年1月末で、この新ポストでの活動期間はウリン氏よりもさらに短い。セルゲイ・フィーリン芸術監督は、長期の治療を終えて復帰したばかり。昨年1月17日深夜、強酸液を顔に浴びせられたフィーリン芸術監督は、視力を一部失い、ドイツで長期の治療を受けていた。