キュウリウオとコクチマス

Lori/Legion Media撮影

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ヨーロッパ最大の淡水湖であるラドガ湖に生息するキュウリウオとコクチマス。一方は平民の食べ物とされ、もう一方は皇帝のテーブルにあがっていた。

 キュウリウオとコクチマスは、どちらもサンクトペテルブルクのごちそうだった。コクチマスはシロマス類の中でもっとも小さい魚で、皇族の戴冠式の昼餐などでふるまわれていた一方で、キュウリウオは伝統的にサンクトペテルブルクの貧民の食事と考えられていた。

 コクチマスを見つけるのは大変だが、体長15センチ弱の緑がかった美しいキュウリウオは、春、漁獲期になると、サンクトペテルブルクの店頭やレストランに大量に出回る。

 サンクトペテルブルクの主婦はキュウリウオをすばやく調理する。新鮮なキュウリウオをビニール袋に入れ、小麦粉を一握り加えてまんべんなくまぶし、フライパンでひまわり油を熱してキュウリウオを並べ、塩をふって5分でできあがり。下処理の必要がなく、レモンやコショウをお好みで加えるだけ。シャブリはこのやわらかな魚のどこかナッツ風の味をひきたてるし、ラガービールも合う。

 ロシア北西部の料理には、キュウリウオの詩までついてくる。ラドガ湖で最高、新鮮なスイカでもなく、キュウリでもない不思議なその香り…

 桃色に輝くコクチマスにも香りはある。こちらはよりやわらかくてジューシー(内蔵処理は不要だが、ウロコ取りは必要)。ラドガ湖の環境は他のバルト海沿岸の水域と同様、あまり良くないため、水の成分に非常に敏感なコクチマスをつかまえるのは難しい。産業漁獲は可能であるものの、年々漁獲量は減っている。

 だからと言ってあきらめる必要はない。春にバルダイ湖(ここにはウラジーミル・プーチン大統領の愛する邸宅がある)に行く機会があったら、釣れる可能性はある。バルダイ湖の環境は良く、ここのコクチマスはおいしい。