宮崎駿『風立ちぬ』がロシアで大好評

写真提供:kinopoisk.ru

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宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』の公開がロシアで先週末に始まり、最初の3日間の興行収入は、日本のアニメとしては過去最高となった。

 2月20日に、待望の宮崎駿監督『風立ちぬ』の 公開が始まった。配給元の「セントラル・パートナーシップ」社がロシアNOWに語ったところによると、最初の3日間の興行収入は1040万ルーブル(約3000万円)に達した。 

 ちなみに、『崖の上のポニョ』は、上映された期間全体で、550万ルーブル(約1580万円)にとどまっていた。 

 また、『風立ちぬ』は、全国185の映画館で上映されているが、『千と千尋の神隠し』と『ハウルの動く城』は、いくつかの映画館で上映されたにすぎなかった。 

 封切後、インターネットには、観客たちの感想があふれた。ファンも批評家も口をそろえて、巨匠がまた新たな傑作を生み出したと歓迎している。

 「軽やかで、善意にあふれ、実際に空に舞い上がるような気分にさせてくれる映画だ。私は、2時間というもの、夢と現のはざまを飛んでいた。飛行機、愛、夢…そして、飛行機にリベットを打ち、翼を付ける」。こう情報サイトafisha.ruに書いたのは、 ヘリコプターの設計技師であるアレクサンドルさんだ。

 

子供の頃の夢を貫いた大人について映画 

 ファンも批評家も一様に、映画が大人向けであることを指摘している。「子供向けでない宮崎監督の映画は初めてだ。本作では、おとぎ話風の言い回しは一切なく、航空技術者、堀越二郎の人生が語られている」。「コメルサント・ウイークエンド」紙のエリザヴェータ・ビルゲル記者はこう書いた。

 それと同時に、ロシアの映画ファンの多くは、宮崎監督の新作が、原点に回帰する試みでもあることに気付いている。

 「かつて僕が子供だった頃、『千と千尋の神隠し』や『となりのトトロ』や『ハウルの動く城』を、画面に穴が開くくらい、何度も何度も見たものだ。でも、今では、それらの傷だらけになったディスクは、両親の自宅で埃をかぶっている――とっくに過ぎ去った幼年時代の悲しい思い出のように」。情報サイトkinopoisk.ruのユーザーである18歳のリョーさん(ペンネーム)の言葉だ。

 『風立ちぬ』は、子供の頃からの夢を大人の世界で見事に羽ばたかせる物語。

 だから、宮崎監督自身、この新作は映画であってアニメではないと、再三強調している。ロシアのファンたちも、監督の言葉に賛成だ。「シリアスで、自国民に対してアイロニカルな視点をもつ作品だ。これは映画であって、アニメと呼ぶことはできない。ずっしりした重い内容をもち、寡黙で、美しいファンタジーが散りばめられている。とても考えさせられる映画だ」(アレクセイ・コルズンさんが情報サイトafisha.ruに書き込んだ感想)。

 

ノルシュテイン「煉瓦はしっかりくっついている」 

 ラジオ局「オルフェイ(オルフェウス)」の最近のインタビューで、映像作家ユーリ・ノルシュテインさんは、宮崎監督について、こんなエピソードを教えてくれた。ノルシュテインさんは、『霧につつまれたハリネズミ』、作家ゴーゴリに原作による『外套』(制作中)などの短編アニメーションで知られる名匠で、宮崎監督の親友だ。

 「あるとき宮崎さんが私にこう言いました。『スタジオに向いながら、こんなことを考えるんです――やれやれ、なんで再び映画の製作なんか始めたんだろう。いっそのこと煉瓦でも頭に落ちてくればいいのに…』。その後、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞されたとき、私はお祝いの手紙を彼に送り、そのなかで『煉瓦』についても触れて、こう書きました。『宮崎さん、どうやら煉瓦はまだしっかりくっついているようですね。あなたはやっぱりアニメの奴隷ですよ。どうしようもないじゃありませんか』ってね。毎回彼は、この作品が最後だと自分に向かって言うのですが、また新作を撮り始めるんです」