最初の教習は、ふつう、特別な設備がほどこされた「プロシチャートカ(場)」で行われる=タス通信撮影
まず、自動車教習所へ申し込みをしなくてはならないが、ロシアの官僚の摩訶不思議は、早くもその段階から始まる。申し込みのためには、眼科医、神経専門医、内科医、精神病医、その他の医師の書き込みのある、道路交通安全監督局のための、医療証明書、パスポート(身分証明書)、写真が必要になるが、自動車教習所では、公然と、500ルーブル(約15ドル)でそうした証明書を医師の診断なしに購入することができる。
費用は約8~9万円
教習の費用は、場所によってまちまちで、平均で、2万から2万5千ルーブル(約8~9万円)。ここには、理論学習と生徒の希望と感覚によって15回から25回までの運転実習の代金が含まれている。その後、追加料金を支払えば、いくらでもインストラクターの教えを受けることができる。
理論学習は、交通ルールの詳細な学習のことであり、理論の習得は、道路交通安全監督局の試験の第一段階だ。20分間で20問の四択の問いに答えるコンピュータのテストを通して、理論の習熟度が調べられる。正しい答を覚えておけば、この試験に合格できる。
理論と同時あるいはその後に、運転の教習が始まる。ロシアでは、つい最近、オートマチックトランスミッションの自動車で試験にパスすれば然るべき許可がすぐに下りるという法律が採択された(ただし、このカテゴリーの免許の所有者はマニュアルトランスミッションの車を運転する免許は所有しない)。それは、まだ発効していないので、私は、マニュアルトランスミッションで臨んだ。
教習の内容と“追加サポート”
最初の教習は、ふつう、特別な設備がほどこされた「プロシチャートカ(場)」で行われる。この「プロシチャートカ」は、最初の実習試験のコードネームとなっている。狭い敷地で一本も棒を倒さずにいくつかの課題をこなさねばならない。大切なのは、マニュアルで停まっている状態から坂を上ってバックせずに二メートル進んで止まること。
試験の第二段階は、特別に許可された市街の走行。これはすべてインストラクターにかかっており、まだうまく自動車を発進させることも運転することもできない生徒を早くも三回目のレッスンで街路へ導くインストラクターもいれば、すべての課題がオートマチックに至るまで「プロシチャートカ」に留まらせるインストラクターもいる。
インストラクターは、追加の「サポート」なしでは試験にパスしないことをすぐに悟らせる。6回試みて理論の試験の有効期間が終了すればまた最初から試験を受けなおさなくてはならない、ということを。 道路交通安全監督局の将校は、合格するための追加の支払いをしなかった生徒をどうやって落第させたらいいかよく分かっている。追加支援の費用は、2万ルーブル(約6万円)。しかし、一回であるいは二回でも試験に合格する保証はどこにもない。
すべての教習および道路交通安全監督局を前にしたリハーサルとしての試験がすべて終わると、テストの本番が訪れる。受付をして理論の試験を受ける順番待ちをするために、道路交通安全監督局へ朝8時までに行かなくてはならない。免許を申請して取得する道路交通安全監督局の支部は、モスクワには、数ヶ所しかないため、そこはいつも人で溢れ、座るところもなく、長いこと待たねばならない。
マラソン試験始まる
8時前に着いて10時に理論の試験に取りかかった私は最初のほうだったが、午後一時まで待つ人もいた。道路交通安全監督局は、2時から3時までは昼休みなので、天候にかかわらず、全員が外へ出され、一切の試験が中断される。
たとえば、10時半に理論の試験にパスし、12時に「次の段階へ進む人は昼食後にお呼びいたします」というアナウンスが流れる。そうしたつれないアナウンスを聞くと、多くの人は、何か食べに行く。私は、留まることにしたが、愕いたことに、1時に同じ拡声器で私とさらに10人が「プロシチャートカ」での試験を受けるよう促された。私は、かけられる人すべてに電話をかけたが、他の人たちがどうなったかはわからない。自分の番を逃したら次のグループで呼ばれるとは限らず、そうした人たちのことは考えるだに怖ろしい。
私はついていた。「プロシチャートカ」へ出ると、すぐに車に乗せられ、試験を受けはじめた。ペダルやハンドルやサイズにすぐに慣れるものではないが、「サポート」なしの生徒は、車を「感じる」チャンスも与えられずにすぐに難しい課題を与えられる。とにもかくにも、私は、課題を上首尾にこなした。「陸橋」では止まってしまったが、なんとかバックせずに済み、このため、二度目のチャンスが与えられ、「合格」の評価がいただけた。
ああ、不合格!…
第二段階は、「市街」。私は、昼食後の4時にその試験に呼ばれた。その場所へ行くと、将校たちが、受験生たちを車へ配し、さらに1時間半待たせた。自分のコースをうまく走行し、駐車場の出発点で停止すると、私は、「不合格」というたいそう不満げな交通警察の声を聞いた。私は、他の生徒のあとに走行を開始し、停車する際にウィンカーで自分の動きを確認しなかったのだ。
そこでほぼ10時間すごしたあとには、もう落胆する力もなかった。私の再試験は1週間後とのこと。道路交通安全監督局へ開場前の7時40分に着いたが、もう20人以上が並んでおり、私はあと3時間半待つと言われた。車に乗るまで、さらに1時間、凍てつく寒さのなかで待つことに。12月の氷点下5度(氷点下15度でなくてよかった)の戸外で丸1時間待って、ようやく自分の番がきたときには、私は、すでに足の感覚を失い、足は、ペダルの感覚を失っていた。それでも、今回は万事うまくいき、私は晴れて合格できた。
いつか、車を買って気持ちよくすっ飛ばすときには、そんな苦労も忘れられよう。そして、何時間もモスクワの渋滞に巻き込まれたりしたときにも…。
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