古典文学から仰天ニュース

出版・マスコミ局が2012年に行ったキャンペーン「公園で本」 画像提供:slava.co.uk

出版・マスコミ局が2012年に行ったキャンペーン「公園で本」 画像提供:slava.co.uk

ロシアの古典文学とは、現代社会とかけ離れた世界なのだろうか。名作のストーリーを現代と置き換えてみると、さほど不自然ではないことがわかる。インターネット・ユーザーを対象とした、しかけ付きの読書普及キャンペーンが行われた。

「高官の妻が愛人と口論の末自殺」 

 「生態学者が警告:開発業者が遺存種(生きている化石)の森を脅かす」、「夜遊びの常連がいちゃいちゃしていた友人に発砲」、「高官の妻が愛人と口論の末自殺」、「移民の 清掃人は残酷な犬の狩人だった」などのショッキングな見出しが「知識の日」である9月2日、ロシアのインターネットをかけめぐった。ロシアの学生が夏休みを終え、新年度を迎える時期だ。

 実は見出しには、アントン・チェーホフの「桜の園」、アレクサンドル・プーシキンの「エヴゲーニイ・オネーギン」、レフ・トルストイの「アンナ・カレー ニナ」、イワン・ツルゲーネフ「ムムー」といったロシアの古典文学の筋書きが隠されていた。だがそれに気づかなかった読者でも、すぐにわかるようになっている。というのも、見出しから、特別なポータルサイトに飛ぶようになっているからだ。そこでは現代らしい架空の記事から文学の名作の表示へと変わり、無償 で読んだり、最新電子版をダウンロードしたりすることができる。

 

実は『アンナ・カレーニナ』でした 

 「このようにしてインターネットのユーザーの注意を引き、実は現代的なニュースでも、ロシアの古典文学には似たような筋書きがあり、既におなじみのネタであることに気づかせようとしている」と、ロシア連邦出版・マスコミ局定期刊行・書籍出版・印刷課のユーリ・プリャ課長がロシアNOWに話し た。

 同局は、ロシア書籍連盟および広告代理店「スラヴァ」と共同で、読書普及キャンペーンの主催者となった。主な目的は、ロシアの古典文学に、国民の注意 を引きつけること。多くのロシア人にとって、古典文学とは学校の授業科目でしかないからだ。

 プリャ課長はこう話す。「お茶目でおもしろくて、そして有益なキャンペーンになった。せめて9月2日だけでもこの”ニュース”を読んで、SNS(ソー シャル・ネットワーキング・サービス)に投稿して、さまざまな層で文学について話をしてもらえれば。またイマジネーションも刺激するはず。自分の好きな古典文学をもとに、ニュースをつくってみたいと思うかも。情報が拡散すれば、一体みんな何の話をしてるのかと、興味を持つ人も出てくる」。

 

読書時間は1日約9 

「負けるな!500ページも読めば、

また元気が湧いて来るさ!」

 読書普及キャンペーンは、社会学者が毎年明らかにしている、読書文学の低迷傾向に対する対応だ。

 「世論」基金が今夏発表したデータによると、調査したロ シア人の44%が1年間に1冊も本を読まなかった。調査会社「TNSロシア」の調査も悲惨なものだった。ロシア人のメディア需要時間は1日約8時間で、読 書時間はそのうちの1.8%、すなわち1日約9分にすぎなかった。

 このような状況にあって、読書キャンペーンに国なども注目しているのは驚きではない。2006年には国家読書支援・推進プログラムの実施が決定し、さまざまな大々的キャンペーンを行っている

 例えば出版・マスコミ局が昨年行った、若者向けのプロジェクト「読書しよう」だ。主催者はスポーツウェアを着て、 レフ・トルストイ、アントン・チェーホフ、アレクサンドル・プーシキン、ニコライ・ゴーゴリ、フョードル・ドストエフスキーを演じ、若者にそれらの作家と 一緒に、鋭い内容のラップを歌わせた。

 

各方面で多様な読書キャンペーンを展開 

 出版・マスコミ局以外にも、出版社、社会組織、モスクワ地下鉄までが読書の宣伝を行っている。ここ数年はそういったキャンペーンを定期的に目にするよう になった。

 伝統的な方法を採用するところもある。大手出版社「AST」が2008年に行った「本の言葉」キャンペーンでは、有名なロシア人作家が読書の重 要性を訴えるプラカードを掲げてアピール。出版社「エクスモ」の「本を読もう、個性的になれ」や「本を読んで!」キャンペーンでは、有名な司会者やミュージシャン、ロシアのサッカー選手やコーチが読書の大切さを語った。

 他のキャンペーンでは、自然に読ませるという試みもあった。例えばモスクワ地下鉄では「読むモスクワ」や「地下鉄で詩」といった列車が走っており、広告の代わりに、車内に文芸作品また作家の伝記の一部、その作品のイラスト、グラフィックが掲示されている。作品のテーマは定期的に変わる。

 

作家と出会える場所の設置も 

 出版・マスコミ局が2012年に行ったキャンペーン「公園で本」では、ゴーリキー公園などのモスクワ市内の人気公園5園が作家と出会える場所に変わり、 さらに本をモスクワで一番安く買えるキオスク「ゴーゴリ・モジュール」が設置された。雰囲気を醸しだすために、草のアートとして、作家の肖像画も植えられ た。

 ロシア各地に読者クラブをつくろうという計画もある。有名な作家や出版者とのビデオ会議などが可能となる。このようなクラブが最初に開設されるのは今年11月。