イスラム教のパンがモスクワで需要増

=Press photo撮影

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イスラム法にのっとったハラル食の人気が、ロシアで高まっている。今や「ハラル」の文字を屋外広告にかかげる会社も増えてきた。タタール系のモスクワっ子、ディリャラ・ファトフリナさん(24)は、この市場で居場所を発見。ファトフリナさんが創設した会社「クナク」は、モスクワ初のハラル・パン工房。モスクワ州全域に、送料無料で製品を届けている。

 「クナクとはタタール語で客人という意味。タタール人はチャク・チャク(蜂蜜焼き菓子)を持参して、茶会を”甘く”するから、最高のお客なのよ!」とファトフリナさん。

 この事業を始めようとしたきっかけは、偶然にもたらされた。タタール人はおもてなし好きとして知られ、結婚式、誕生会、婚約式などの祝い事では、豪華で 盛大なテーブルを用意することが習慣となっている。

 もっとも重要な装飾料理は小麦粉からつくられたもの。ファトフリナさん一家も典型的なタタールの家庭 だ。

 

ラマダン明けにハマる 

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 「母と祖母はピログ(パイまたはパン)やピロシキ(小さいピログ)をいつもたくさん焼いて、うちに来たお客さんには食事会の後で、それらがたくさん詰 まった袋を手渡していたわ。私自身は正直なところ、つくるのがあまり好きではなくて、手伝うだけだった。でもある日、(ラマダンの終わりを祝う)イド・ア ル・フィトルで小麦粉の料理をつくらなくてはいけなくなって、仕方なく焼いてみた。そしたら、見事にハマってしまった。友だちは私が生地をつくれるように なったと知って、お祝いの時につくってと頼むようになった」。こうファトフリナさんはいきさつを語る。

 

4ヶ月の息子に乳を与えながら夜中も働く 

 モスクワですぐにビジネスを始めようとすると、リスクが高い。そこでタタール系の有名なパン類を専門とする一社と、フランチャイズ契約を結ぼうと考え、 試食してみた。でもその味は気に入らなかった。

 「量産品じゃなくて、本物の手づくりピログを味わってもらいたいの。家族や友人とうちのピログを食べて、お ばあちゃんの味を思い出してもらえるような」とファトフリナさん。

 クナク社の特徴は、手づくり品のみを提供していること。最初はファトフリナさん一人で焼いていたが、4ヶ月の息子に乳を与えながら、夜中も働くのは大変だった。

 

イスラム教徒以外からも大反響 

ベリャシュ (肉詰め揚げパン) =Press photo撮影

 現在は小さく快適な工房で、4人の女性がシフト勤務している。つくっているのは、チャク・チャク、グバジヤ(お祝い用の牛肉パイ)、ベリャシュ (肉詰め揚げパン)など、さまざまな伝統的タタール料理。クナク社のメニューは、顧客の数とともに増え続けている。

 「注文はとにかくいっぱい!最初はモスクワに住むタタール人の小さなコミュニティーを対象としていて、タタール系のウェブサイトにしか広告をのせていな かった。だけどモスクワの商業施設でちょっとプロモーションをしたら、驚くほど反響があったの。イスラム教徒以外からもね」。

 

「コローメンスコエ」公園のお祭りでも大人気 

 市内の「コローメンスコエ」公園で毎年開催されている、タタール人の重要なお祭りの一つ「サバントゥイ」では、クナク社の商品が大人気。お祭りが始まる と、ピログは閉幕を待たずに売り切れてしまう。評判は口コミでも広まり、レストランの経営者などから商談に招かれ、提携についての提案などを受けている。

 「実際のところ、このプロジェクトはあっという間に回収できたわ。うちの商品の質はとても高いから、見向きもされないなんてことはなかったでしょう。短期間で顧客がたくさん現れた。今は家庭的なカフェを開業して、コーヒーや紅茶と、おいしいタタール・ピログを食べてもらおうと計画中!」