サンクトペテルブルクの仏教寺院「グンゼチョイネイ・ダツァン」では、仏陀の誕生日、悟り、涅槃に入った日を祝う準備をしている =the Village紙 / エゴル・ロガリョフ撮影
世界最北のグンゼチョイネイ寺院の外観は、ブリヤートやカルムイクのダツァンとは異なっているが、内部は同じだ。ダツァンではすべてが控えめで庶民的 だ。信仰が十分でないから、または外見が仏教的でないからといって、来る人を横目で見る信者はいない。訪問者は寺院に来て祈り、そのまま出て行くだけだ。 これらはすべて一言も発せずに行うことができる。
グンゼチョイネイ寺院は、1915年創建で、欧州最古の仏教寺院だ。建物は文化財に指定されている。建設委員には、東洋学の大家ニコライ・レーリッヒも名を連ね、ダライラマ13世から建設資金が提供されている。
ロシアの伝統的なサンガでは大きな祝い事が8つあり(現代のロシアでは大乗仏教がメイン)、厳かな短い祈祷式「フラル」で慶賀する。通常はこのような行事は3 日間続く。1日目は全108冊のガンジュル(大蔵経)を読み、2日目は祝い事(例えば誕生日、悟り、涅槃に入った日はドンチョド・フラルと呼ばれる)に関 連する祈祷式を行い、3日目はサヒュウサン(3~10人の守護者がフラルを読む)となる。
祝いの時はダツァンを装飾し、ラマ僧は正装する。
5月25日から3日間、グンゼチョイネイ寺院で
= エゴル・ロガリョフ撮影
5月25日はロシアの信者が仏に祈りをささげる。仏の誕生日は旧正月によって毎年変わる。
サンクトペテルブルクの仏教徒は、この祝い事のために道路を閉鎖するよう市に要望したりしない。仏教徒の人数が限られていること、注目を浴びるのを好まないこと、そして迷惑をかけたくないことがその理由だ。
アドレス:サンクトペテルブルク市、プリモールスキー・プロスペクト91 地下鉄は、スターラヤ・デレーヴニャかチョールナヤ・レーチカ
時間:10時~19時(水曜日以外)
出入り自由
だが人数が少ないとはいえ、信者は毎年増え続けている。この信者とは、カルムイク共和国の首都のエリスタやブリヤート共 和国の首都ウラン・ウデから、サンクトペテルブルクに移住してくるブリヤート人やカルムイク人のことではない。スラブ系のロシア人が仏教徒になっており、 ダツァンで祝い事(ドゥグジュウバすなわち浄化の儀式の時など)のある時だけではなく、ブリャート人などがいない普通の日でもそのような信者を目にする。
「本を読み、講義に出席して、知識を得てここに来る人はとても多いです。それはきっと仏教が厳しくないからでしょう。仏教は改宗をすすめることはなく、キリスト教 の教会に通っている人でも仏教の儀式に参加したくなったり、講義を聴きたくなったりすれば、普通に歓迎されます」とグンゼチョイネイ寺院の広報担当者である アーラ・ナムサラエワさんは話す。
国家の中の宇宙
= エゴル・ロガリョフ撮影
ブリヤート人やトゥバ人の中には、祈りの一つ一つの動きについて宗教用語を用いて表現豊かに説明できる人もいれば、仏教の全体像をつかんでいるものの、 信じることが習慣とはなっていないために信じていない人もいる。ブリヤート人の家には通常、小さな仏像とその前に飴と牛乳(お供え物)が置いてある一画が ある。また旅行に出発する前には多くの人がチベット香をたく。正式には頭痛や過労の際に役立つものであるが、一部の仏教徒は旅の助けという別の捉え方をし ている。
このような理由から、多くの”伝統的な”ブリヤート人の仏教に対する概念は、色んな要素が混ざっており、庶民的で、一種の先祖崇拝でもある。
サンクトペテルブルクのダツァンは国家の中の一種の国家である。小さな寺院の敷地の中で、この国家の大きさを感じずにはいられない。
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