アニメ・シーズンの到来

アニメ作家、ガリー・バルディン氏 =タス通信撮影

アニメ作家、ガリー・バルディン氏 =タス通信撮影

ロシアの春はアニメ・フェスティバルが花開く時期だ。一連のイベントに先立ち、ロシアのアニメ作家で、クレイアニメ分野などで有名なガリー・バルディン氏に、国のアニメ業界の現状について聞いた。

 バルディン氏は1975年から、「ソユーズムリトフィルム」(ソ連のアニメ・スタジオ)でアニメ監督として働き、15本のアニメ映画を撮影した。作品の多くは国際フェスティバルで賞を受賞している。有名な作品として、アニメ「空飛ぶ船」、「灰色狼と赤ずきんちゃん」、「長靴をはいた猫」、長編アニメ映画「醜いアヒルの子」などがある。1991年からは、自身で創設したアニメ・スタジオ「スタイエル」を率いている。

 

-ソユーズムリトフィルムでお仕事をされ、ソ連崩壊後も活動を続けていらっしゃいますね。市場はアニメを変えましたか。

 プロデューサーや配信会社にとって重要なのは、一本物です。つまり長編映画です。アニメは元来短編物が一般的で、その中で多くを語ることができていました。時に10分という短い時間で、長編フィクション映画でも説明しきれない内容をまとめていました。例えばユーリイ・ノルシュテインの「霧につつまれたハリネズミ」は、新たな世界の発見に関する比喩的な短編アニメ映画で、深い哲学が10分間に凝縮されています。プロデューサーは現在、映画館で上映できるように、アニメ監督に大作を求めます。短編映画は作られてもフェスティバル用なので、ほとんど見られることがありません。テレビでも放映されませんから。

 

-アニメ映画で多くの視聴者を獲得するにはどうしたらいいのでしょうか。深みのある映画を作っても興行収入を得られるのでしょうか。

 難しい質問ですね。獲得できる方法を知っていたら、成功する作品しか作らないでしょうね。これは視聴者の心構えによっても変わってくるのです。時に大衆受けするものをあえてつくったりします。ですが、芸術的な奥深い作品となると、見る人がそれを理解しようと努めなければなりません。チャップリンの映画は商業プロジェクトでしょうか、それとも芸術プロジェクトでしょうか。その両方を一つにしているチャップリンの作品は、私にとって理想的です。

「灰色狼と赤ずきんちゃん」、1990年

-スタイエルの従業員は何名でしょうか。

 常勤が22名です。うちのスタジオは、アメリカのピクサーのような、千人レベルの従業員を抱えるスタジオとは違います。それでも長編アニメの醜いアヒルの子は6年でつくりました。ピクサーなら3~4年でつくれるでしょうが、あちらには多くの人がいますし、予算も額が違います。長編映画を制作するには長い期間が必要で、技術がどんなに進んでも、結局コマ撮りには変わらないのです。難しい作品であればあるほど、多くの人が必要になります。

 

イワン・マクシモフ、アニメ作家、監督、芸術家

 ロシアのアニメは優しく、感動的で、大きな愛にあふれています。これは恐らくロシアの指導者が因循姑息で保守的だからなのでしょう。西側の文化は現在、ポストモダニズムやアブノーマルな世界に浸っていて、すべてが安定的で愛に満ちているような作品を好まないのです。そのため私は、外国のアニメよりも、ロシアのアニメの方を好きになることが多いです。我々はいつも遅れているし、それ故に、好きか否かは別として、伝統を守り続けることができるのです。

-ソ連時代と今とでは、どちらの仕事の方が大変ですか。

ソ連時代はシナリオを承認してもらうのが大変でした。検閲がありましたから。でも金額については何も知らず、アニメをつくることに集中できました。今はプロデューサーとして、アニメ、音楽、声優などの相場を知っています。今は昔より自由になりましたが、資金調達が大変です。70%は文化省が予算配分してくれるものの、30%はプロデューサーとして自分で探さなければいけませんから、毎日お金のことを考えなければなりません。

 

-小さなスタジオの生産性は、大きなスタジオとは異なるのでしょうか。

 ソ連時代は、監督1人が年間10分の短編映画を1本つくることが一般的でした。スタイエルで1991年から撮った映画すべてを年数で割ると、年間ちょうど10分です。無駄なく安定的に働いているということになります。

 

-スタイエルに足りないものは何でしょうか。何が必要だと思いますか。

 従業員に適切な額の給料を支払えるような資金が足りません。例えば地下鉄の機械工の月給は、6万5000~8万ルーブル(約19万6000~24万円)ですが、私自身も従業員も、このような金額は手にできません。従業員はかけがえのない職人です。ただソ連時代もアニメ作家はあまり高い給与を受け取っていませんでした。アニメをつくっている人間は情熱で動いているのです。お金持ちになりたい人はこの仕事をやろうとはしません。夢を実現したい人、大好きな仕事をしたい人ばかりなのです。変わっているでしょう。