宇宙飛行士の薄給

ISSの宇宙飛行士:ジョゼフ・アカバ(米国)、ゲンアジー・パダルカとセルゲイ・レビン(ロシア) =ロシア通信撮影

ISSの宇宙飛行士:ジョゼフ・アカバ(米国)、ゲンアジー・パダルカとセルゲイ・レビン(ロシア) =ロシア通信撮影

ロシア政府は宇宙飛行士の月給を、役職や社会的地位により、6万900ルーブル(約16万6000円)から8万8450ルーブル(約24万1000円)と定めた。宇宙に行った際の賞与の別途支給もあるものの、ロシアの多くの宇宙飛行士の給与は、ロシアの民間航空機の操縦士よりも低い。

ロシア連邦宇宙飛行士物質的保証規定の改正案に従い、宇宙飛行士候補の給与6万900ルーブル(約16万6000円)、宇宙飛行士6万3800ルーブル(約17万4000円)、宇宙飛行士指導者8万8450ルーブル(約24万1000円)となった。宇宙飛行士が最初の宇宙飛行を行うと、その給与は6万9600ルーブル(約19万円)に上がる。

ロシア連邦宇宙局有人プログラム管理局のアレクセイ・クラスノフ局長によると、ソ連時代の宇宙飛行士は、平均的なソ連国民よりも物質的にはるかに保証されていたという。宇宙飛行士は当時、アパートや自動車「ヴォルガ」、さらに寝具、化粧品、コート、靴下にいたるまでのさまざまな物が国から支給されていた。

 雲泥の差

現在ロシアの宇宙飛行士の懐具合は、民間航空機の国際線の操縦士にも及ばず、外国の宇宙飛行士よりもかなり悪い。アメリカの宇宙飛行士は、地球にいるか宇宙にいるかにかかわらず、毎年12万ドルから13万ドル(約1010万円~1090万円)を固定給として受け取っており、公式月給は1万800ドル(約90万9000円)だ。

ロシアの宇宙飛行士が13万ドルから15万ドル(約1090万円~1260万円)を受け取れるのは、国際宇宙ステーションに半年滞在した場合に限られると、国際宇宙ステーション・ロシア部門飛行責任者のウラジーミル・ソロヴィヨフ氏は話す。

世界初の宇宙飛行士、ユーリー・ガガーリンの1962年の月収は、575.1ドルだった。当時の為替レートは1ルーブルが0.9ドル、または1ドルが360円だ。人類で初めて月面着陸を果たしたニール・アームストロングの1969年の月収は、1666ドルだった。アメリカの宇宙飛行士は当時、ソ連の宇宙飛行士の2.8倍の月給を受け取っていたが、現在はその差が5倍ほどに開いている。

Y.A.ガガーリン宇宙飛行士訓練センターのセルゲイ・クリカリョフ所長は、ロシアの宇宙飛行士が、国民の平均収入や宇宙分野のそれよりも高い、妥当な収入を受け取るべきだと考える。ただ、高給がこの仕事に就く最重要目的になってはいけないとも言う。

「宇宙飛行士の給与は、実際に行った仕事と、リスクレベルにもとづくべきだ。宇宙飛行士になってしまえば、楽にたくさんお金をもらえるというような誤解があってはいけない。すでにこのような事例はあった」。

 パイロット以下

ロシア科学アカデミー宇宙研究所のヴャチェスラフ・ロジン副所長は、ロシアと海外の宇宙飛行士の給与を比較すべきではないと言う。「確かにロシアの宇宙飛行士の給与は多くはないが、貧乏人というわけでもない。どの宇宙飛行士も普通の生活を送っているし、みな優秀で謙虚だ。アメリカの宇宙飛行士の収入と比較しようとは思わない」。

K.E.ツィオルコフスキー・ロシア宇宙航行アカデミーの通信会員であるユーリー・カラシュ氏は、ロシアで宇宙飛行士という職業の評価が今日、航空機の操縦士よりも下のレベルまで下がってしまったと話す。

「操縦士は現在、宇宙飛行士よりも高い給与を受け取っている。エアバスA320の機長の月給は、1万1000ドルから1万2000ドル(約92万6000円から101万円)ほどだ。宇宙飛行士は高くてもせいぜい8万8000ルーブル(約24万0000円)にしかならない。つい最近、宇宙への飛行準備をしている、優秀な宇宙飛行士のひとりと話した。この飛行で9万ドル(約750万円)を受け取れると言っていた。高額に聞こえるが、このお金ではモスクワのワンルーム・アパートすら買えない。この飛行のために、多くても月収6万ルーブル(約16万円)で12年も費やさなければならない」。

同氏は宇宙飛行士よりも、航空機の操縦士になった方が得だと結論付けた。

 

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