岐路に立つクレムリン・カップ

ヴィクトル・ヴァセーニン撮影/ロシア新聞

ヴィクトル・ヴァセーニン撮影/ロシア新聞

1990年から毎年行われている国際テニス大会「クレムリン・カップ」は、残念ながら、テニス選手、観客の双方とって魅力的ではない。入場券の価格が高いにもかかわらず、華やかさに欠けるため、大会そのものの続行を危うくしている。

10月15日からモスクワで開催されているクレムリン・カップは、年々参加する選手の層が薄くなってきており、男子の部にいたっては世界ランキング21位のウクライナ人、アレクサンドル・ドルゴポロフが“最強”となっている。主催者の企画の仕方に大きな問題があることは明らかだ。

「賞金はお笑い種」 

世界の一流選手の招へいを担当する、ロシア・テニス連盟のエフゲニー・カフェリニコフ副会長は以前、用意した予算は「お笑い種」で、ロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルなどのスター選手の希望額の半額に過ぎなかったと認めている。

世界のトップに立つ選手が、モスクワになど来ないことは理解できるが、国内ランキング1位のミハイル・ユージニー(最高ランキング8位)なら呼ぶことはそれほど難しくないのに、本人は同時期開催のストックホルム・オープンに参加している。ユージニーを指導するボリス・ソブキン・コーチによると、金銭的な問題ではなく、そもそもクレムリン・カップに呼ばれなかったのだという。

マーケティングの観点から考えると、ユージニーの不参加はこの大会にとって大きなマイナスとなる。参加する男子選手のリストが魅力的でなければ、大会の評判に影響してしまう。

テニス大国なのになぜ? 

女子の部は幾分ましだが、それでも国内ランキング1位のマリア・シャラポワはWTAツアー選手権への準備をしている状態で、この大会には参加していないし、スベトラーナ・クズネツォワ、ベラ・ズボナレワもケガの治療により来ていない。女子の部で良い選手をある程度集めていても、男子の部で世界的に有名な選手がいないと、全体的に盛り上がらない。クレムリン・カップは、このままの形で存在し続けることはできないだろう。

入場券は上がる一方 

内容が薄いにもかかわらず、入場券の価格は上がる一方で、比較的観戦しやすい席になると数千ルーブルも支払わなくてはならないし、最も安い300ルーブル(約770円)の席を取った場合、双眼鏡が必要になる。

ガゼータ・ルの記者は、月曜日にオリンピック・スタジアムを訪れ、大会がお粗末で、選手層の穴埋めもできていないことを確認した。巨大な敷地は広い通路で区切られ、それに沿ってテントがぽつりぽつりと点在し、そこでスポンサーが何らかのサービスを提供するか広告を掲示している。スポンサーは年々減少しているが、それも当然だろう。

大会のイベントも乏しく、サインが欲しい人は大きなテニスボールを950ルーブル(約2500円)で購入し、参加選手にサインを自分で求めるのだが、子供だけでなく、大人も参加していたのが印象的だ。試合にそれほど興味がなかったら、後は何をすればいいのだろうか。食事をするにしても、値段が高く、選択肢も少ない。

「来年は来ないかも」 

9歳ほどの息子を連れて観戦に来たエフゲニーさんは、次のように述べた。

「テニスが好きで、自分でもやっていたので、クレムリン・カップは毎回観にきます。でもここ数年の大会の状況は悲しいですね。息子と来たので入場券を2枚買いましたが、高いお金を払ったのに大して見るものがありません。文句言いながら観るぐらいなら、来ない方がいいと思うでしょうが、母国で開催され、来ることが習慣づいているクレムリン・カップに行かないというのも、おかしなものです。スター選手を呼ぶための資金が不足しているなら、スポンサーをもっと集めればいいのです。改善されそうにないなら、次回は家族と別の楽しみを探します」。

エフゲニーさんはこうコメントしてくれた後で、エフゲニー・コロリョフとリチャルド・ムルザエフの試合の続きを観に行った。

*元記事