=タス通信撮影
ロシア的道徳観
ロシアの世論調査機関「レバダ・センター」の社会学者が、ロシア人が許容できないと考えることについて、アンケート調査を行った。最も不道徳な行為だと考えるのは、子捨てや育児放棄、自殺、同性愛だった。子捨てや育児放棄と答えた人は回答者の75%にのぼり、続いて自殺64%、同性愛62%が上位に入った。
ロシア版“七つの大罪”をパーセンテージ順に並べると、次のようになる。
① 子捨て(育児放棄)、②自殺、③同性愛、④人間のクローン化、⑤一夫多妻、⑥中絶、⑦死刑、動物実験、安楽死。
宗教的心性?
専門家はこの結果をさまざまに受け止めている。ロシア国立人文大学の学部長で社会学者のリュボフ・ボルシャク氏によると、ロシア人は宗教規範にもとづいて道徳的であるか否かを判断する場合が多いという。
道徳的に許容できないものは、 次のうちのどれですか | (%) |
人間のクローン化 | 52 |
中絶 | 38 |
自殺 | 64 |
同性愛 | 62 |
医学的動物実験 | 21 |
死刑 | 21 |
離婚 | 7 |
一夫多妻 | 41 |
安楽死 | 21 |
婚外出産 | 5 |
子捨て、育児放棄 | 75 |
毛皮製品の購入あるいは着用 | 3 |
「育児放棄はあらゆる価値観や禁止事項にも共通する不道徳な行為ですが、自殺や同性愛のタブーは深く宗教観と結びついています」。
実際に、ロシア正教でもっともタブーとされているのがこれらの行為だ。しかしながら、調査を行った学者らは、ロシア人の宗教心に疑問を抱く。
特異な保守的精神構造
「ロシアには、宗教規範に従った生活を送る、本物の信者と呼べる人は、ほんの一握りしかいません。国民の1割にも満たないです」と述べたのは、「レバダ・センター」の副所長であるアレクセイ・グラジュダンキン氏だ。
グラジュダンキン氏は、ヨーロッパ的でもなく、アジア的でもない、独特のロシア人の精神構造によってこのような答えが出てくると考える。
「ロシアはとても保守的な国で、非標準的な行動に対する許容性が、ヨーロッパの国々よりもずっと低いのです。とは言ってもイスラム諸国よりも高いですが。この点で、ヨーロッパとアジアの中間に位置しているのです」。
その例としてグラジュダンキン氏があげたのが、死刑に対するロシア人の意見だ。死刑で人間の生命を奪うことが許せないと答えたロシア人は21%で、ヨーロッパやアメリカよりも多い。
寛容さとは何か?
中絶を道徳的に許容できないと考える人は、5年前の2007年で27%いたが、現在は18%に減った。それでも、中絶に対して否定的な人はソ連時代より増えている。
ボルシャク氏は、現代のロシア人が中絶を許容できないと考える理由を、いくつかあげた。まず、現在では避妊が確実かつ簡単にできるので、“不可抗力”を理由に中絶することができなくなっていること。次に、中絶は子供に対する殺人であるという宗教的な考え方が定着してきていること。そして、さまざまなショッキングな反中絶の宣伝により、非道徳的な印象が植え付けられたことだ。
グラジュダンキン氏は、今回の世論調査をこう総括した。「5年前よりも、ある程度社会が寛容になってきているようですが、わずかな変化にすぎません」。
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