「究極の課題が定まれば発展も可能」

ドミトリー・ロゴージン副首相 =タス通信撮影

ドミトリー・ロゴージン副首相 =タス通信撮影

「宇宙大国」ロシアは、最近、月面基地建設の構想を立ち上げたが、その意義や実現可能性などをめぐって懐疑論が少なくない。その一方で、露宇宙産業は、技術者の老齢化、事故の多発など、構造的問題が露呈している。宇宙開発の現状と見通しなどについて、ドミトリー・ロゴージン副首相に聞いた。

- 月面基地建設のような大規模プロジェクトを今のロシアは実現できるのでしょうか。ロシアの宇宙分野が、深刻な危機的状況から脱することは、可能ですか。

確かに現状は厳しいものがあります。初めて人工衛星を打ち上げ、初めて浅宇宙に宇宙飛行士を送った宇宙大国に、我々は住んでいると自負していました。数々の大きな成功を遂げていたのに、昨年に6件、今年8月に1件と、ここ1年半で突然7件もの事故を起こしてしまいました。

一連の事故を細かく検証すると、事故をもたらした製品の質は、原因ではなく、結果にすぎません。粗悪品は、化膿してしまった腫れ物のようなものです。腫れ物自体を治す対症療法ではなく、化膿する原因を取り除かなければいけません。

ロシアの宇宙分野には、似たような製品を同時に生産している、いくつかの大手のコンツェルン、工場、企業がありますが、宇宙産業はそのうちの50%しか活用できていません。また、品質管理は不十分だということがわかりました。宇宙産業の抜本的な改革の必要性に関する問題が提起されましたが、何から始めればいいのでしょうか。品質向上でしょうか。品質向上ももちろん必要ですが、それだけでは多くのことを成し遂げることはできません。現在のもっとも重要な課題はひとつで、ロシアが宇宙に何を求めているのかを明確にし、戦略的目的を定めることです。

この最重要課題にもとづいて、経済、ホールディング、サブホールディングなどの多くをつくりあげるのです。重要項目をピラミッド式にまとめ、一番上の段に最重要課題を配置し、二番目に3つの課題、三番目5つの課題という風にすれば、どのような投入システムやエンジン、また軽量級、中量級、重量級、超重量級打ち上げロケットが必要で、どの宇宙基地から打ち上げるべきかが明確になってきます。頭の中で基本的な順序立てを行うことが必要なのです。

私が宇宙分野の専門家でないことは否定しません。私の任務は、体系的に考えて行動することです。ですので、その体系的な視点から、たとえ現時点では夢物語のように見えるとしても、最重要課題を決めることから提案したいのです。

例えば、月面基地の建設です。国際宇宙ステーションのプロジェクトを進める中で、地球周辺で作業することを学びましたから、月に大きなステーションを建設し、そこから国際宇宙ステーションで行われているのと同じ作業をすることも十分に挑戦可能です。これはおもしろい科学技術的課題で、これが解決できれば、基礎科学や応用科学を発展させることができますし、今後の画期的ソリューションの基盤にもなるでしょう。これが私の提案です。他の提案もあるでしょうから、議論して、実のある課題を練り上げていかなければなりません。これは壮大かつ国家の威信にかかわる政治的課題で、ロシアはこれを解決できる力があると個人的に考えています。

- このような壮大な飛躍的進歩を、だれが実現するのでしょうか。機械製造の分野は人手不足で、著しい高齢化が進んでいます。

確かにその通りです。ですので、連邦安全保障会議は、私が率いる軍事産業委員会で生まれるアイデアを、支援する決定を行いました。ロシアの防衛産業で予備要員を用意するつもりで、民間を含めたさまざまな部門で人材を探す予定です。また、民間投資先になり得る、「軍産複合体・官民連携特別協議会」を創設します。優秀な人材が防衛産業に集まれば、そのエネルギーが生産の質を変え、将来的に急成長させると考えています。

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