日本には、かつて芸者がたくさんいたが、今は少ないし、サムライのような人もほとんどいない=ロイター通信撮影
生きている固定観念
固定観念は生きている。固定観念が崩れるのは、ある国の大多数の国民が他の国へ行き、実際にどのように生活しているかを見た場合に限られる。ロシア人は物価がより安い国に行くため、日本に行く人は一握りだ。日本に行くには、たとえ、そのロシア人が極東に住んでいたとしても、多くの金が必要となる。
映画をたくさん見ているロシア人は、日本には武士道というサムライの掟があり、日本人ならいつでも死ぬ覚悟ができていると考えている。
日本には、かつて芸者がたくさんいたが、今は少ないし、サムライのような人もほとんどいない。ヤクザは非常に独特なマフィアだ。警察はすべてのヤクザの名前と呼び名を知っている。山口組の写真は普通に掲示されている。ヤクザは、殺人を犯すと、瞬時に逮捕されるため、ほとんどすることはない。殺人事件が起こるとしたら、すべて内部抗争で、ピストルも禁止されているため、使うことは極めて稀だ。刃物、鎖、バットなどは使っても、銃撃はない。
楽しくおとなしい日本の酔っ払い
セックスは人間の欲求として、日本人は自然のことと捉えているし、アルコールについてもそうだ。歴史的に、アルコールは生活とは切り離せない部分だ。ただ、何を飲むか、どれぐらい飲むかということだけだ。
金曜日の夜に電車に乗ると、やっとリラックスできた、楽しそうな大人しい日本人の酔っ払いを見ることができる。酔っ払いはとても好意的で、飲んでケンカをするのではなく、飲んで抱き合っている。このような時は、相手から求められなくても、一緒に抱き合ったりすることができる。それ以外の時は、人との距離を保つことが必要だ。これはとても厳しい。
「冬の熱燗は格別」
日本酒は、日本食とよく合う、優れた飲み物で、個人的には驚くほど美味だと思っている。冬の熱燗は格別だ。標準容量が120ミリリットルの徳利で、酒が熱いままふるまうのが決まりだ。お猪口に注ぐと80度ではなく40度ほどに温度が下がる。一気飲みは少し熱く、ゆっくりと飲むことでじわじわと効いてくる。
日本はウイスキーをたくさん消費すると言われているが、多くのロシア人と同様に、私もウイスキーはウォッカのようにストレートで飲む。日本では、ウイスキーは必ず氷を入れて飲み、指二本分のウイスキーに、水とたくさんの氷を入れるため、とても弱い飲み物になる。日本はウイスキーの製造技術にこだわっているため、質の良いウイスキーが製造される。私はモスクワで時々、比較的安く、それでいてとてもおいしい「サントリー・オールド」を買っている。
ワインも当然日本にはあって、知識人によく飲まれている。ぶどうのワインは、その人物の立場、教育水準などのある程度の指標になる。梅酒もあるが、これは食前酒で、伝統的に特に一般的な飲み物というわけではなかった。日本で最も多く生産されるお米からつくった飲み物が、もっとも人気がある。
日本とロシアの生活を比べると
日本の出生率は極めて低く、減り続ける若い世代が、増え続ける高齢世代を支えなければならなくなっている。日本は北欧とは違い、あまり福祉国家にはなっていないため、年金は多くなく、誰もが老後のための貯金をしている。年金は1000ドル(約8万円)ほどだ。日本はずっと物価が高い国だと考えられてきたが、今は住宅と交通費を除き、服や飲食料品など、ほぼすべてのものがロシアより安くなっている。
日本のホテルは、モスクワより価格は下がるが、それでもとても高い。日本までの渡航費は、競争があることから、それほど高くなく、安いシーズンなら600ドル(約5万円)で往復できる。モスクワからウラジオストクまでの交通費は、モスクワから日本までの交通費よりもずっと高いことは有名な話だ。
ただ、日本の滞在費はとても高い。日本で休暇を取るよりも、ヨーロッパに滞在する方が安いという理由で渡航する日本人もいるほどだ。
給与の比較
給与水準はとても高く、大学教授の月収は5000ドル(約40万円)だから、私の700ドル(約5万5000円)と比べたら雲泥の差だ。ロシアの教授の給与が、清掃員より安いということを、日本の教授は信じることができない。そして、ロシアが結局のところ何を求めているのかも理解できないのだ。
私の基本給が2万3000ルーブル(約5万5000円)なのに対して、仕事を掛け持ちしている清掃員の給与はずっと高い。大学を卒業しても1万ルーブル(約2万5000円)しかもらえないため、無我夢中になって稼ごうとする。自分の専門外の職業で稼いでるということは、その専門が泣いているということだ。
ロシアの街には、10コペイカや50コペイカの硬貨がゴミのように落ちているが、日本で通りに硬貨が落ちているのを見たことがない。
日露の幼児化
今の若者を見ると、深刻な幼児化が進んでいるという印象を受ける。ロシアではそのような若者が多く、日本ではロシアほど多くはないものの、それなりにいる。今のロシア人は、名前と父称で呼ばれることを嫌がる人が多いが(名前+父称は年老いた印象があるため)、それはとても馬鹿げている。呼び方は、年齢別に特徴があるのに、ほとんどの人がマリヤではなくマーシャ(マリヤの愛称形)、アレクサンドルではなくサーシャ(アレクサンドルの愛称形)という、子供の名前を選ぶ。この点で、社会は単純化している。この現象の多くは、際限ない若年崇拝と関係していると考える。
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