=ミハイル・ポポフ/ロシア通信撮影
「プッシー・ライオット」(プッシーの反乱)は、大統領選挙中だった今年2月に、モスクワの救世主ハリストス大聖堂に覆面をして入り込み、聖職者しか入れない聖壇前で、「聖母マリアさま、プーチンを追い出して!」と歌った。この聖堂は、クレムリンに程近く、政府首脳もしばしばミサに列席する。グループの若い女性3人は、3月から拘留され裁判が続いていたが、8月17日、懲役2年の判決が、モスクワのハモヴニチェスキー裁判所で言い渡された。
法的観点から
弁護士の間では、判決前からこの事件に対する評価が分かれていた。有名弁護士の一部は、救世主ハリストス大聖堂で起きた騒動は、ロシア連邦刑法典第213条(フーリガン行為)に定められる犯罪行為に該当しないと主張している。
政治家の反応
法律の専門家が、「フーリガン行為」の条文に当てはまるかや、裁判の経過について語っている一方で、政治家は、「パンク祈祷」とその影響について意見を述べている。
最近まで「公正ロシア」党に属していたアレクセイ・ミトロファノフ議員は、2年の禁固刑について、次のように述べた。
ドイツ刑法典「宗教ならびに信条に対する不法行為」(特に第166、167条)には、礼拝所内でのフーリガン行為規制が含まれ、違反した場合、3年以内の禁固または罰金の刑が定められている。
オーストリア刑法典第189条では、教会内で道徳感情を侮辱するようなフーリガン行為に対し、6カ月以内の禁固または罰金が定められている。「メンバーはここまで世界的に有名になれたのだから、極めて妥当な代価だろう。歌手のマドンナはメンバーに手紙を書いて、果物を差し入れするかもしれない。今プッシー・ライオットを支持している人々は、出所後に世界中をかけ回るメンバーを見て、裏切られたような気持ちになるに違いない」。
人権委員会全権代表のウラジーミル・ルキン氏は、ミトロファノフ議員とは逆に、判定に納得せず、プッシー・ライオットの今回の行動は、行政調査を要する過失にすぎないと考えている。
市民団体「市民イニシアチブ委員会」を率いるアレクセイ・クドリン氏(前財務相)は、判定を受け入れられないとしている。委員会のサイトに、今回の裁判がロシア、政界内、国際舞台で、今後長きに渡って尾を引いていくことになるという所感を載せた。
また同氏は、市民イニシアチブ委員会が今年末までに、国の治安機能の改革について、広く社会で論議する考えであることを明らかにした。同氏いわく、国の治安機能は、司法制度の独立、国家の世俗主義、人間の尊厳の保護を保障しなければならない。
海外からは非難轟々
ロシアの裁判所に対する批判は、欧州安全保障協力機構(OSCE)などの海外の機関の代表なども展開した。OSCE報道の自由部門代表のドゥニヤ・ミヤトヴィッチ氏は、次の声明を発表した。
「主張がたとえ挑発的、嘲笑的、刺激的であったとしても、抑圧されてはならず、いかなる場合でも刑務所に収監されるような問題ではない」。
EUやアメリカもOSCEの立場を支持した。欧州連合外務・安全保障政策上級代表のキャサリン・アシュトン氏は、判決が今回の行動にそぐわないものだと考えている。在ロシア・アメリカ大使館も、同様のコメントを行った。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、判決に厳しい姿勢を見せ、次のような声明を発表した。
「異常に厳しい判決は、ヨーロッパの一員としてロシアが守るべき、ヨーロッパの価値観、法治国家や民主主義の原則に合わない」。
露外務省の応酬
これらの批判に対し、ロシア外務省はすぐに反応した。18日、アレクサンドル・ルカシェビッチ報道官は、西側諸国の法律も教会でのフーリガン行為に対して服役を定めているとし、ドイツやオーストリアを例にあげた。
専門家は、プッシー・ライオット事件の判決の妥当性について、近々議論が再燃するとの見方だ。
このグループの弁護士は、判定を不服として控訴する考えを明らかにしている。
*RBCデイリー紙、コメルサント紙、ニュースサイト「正教と世界」、モスクワ・ニュース紙の記事を参照。
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