女は強し

=Getty Images撮影

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ロンドン五輪で、近代五輪史上初となる女子ボクシングが行われる。

女子ボクシングには賛否両論ある。多くの人が、残酷で女性には向かないと言っている。だが、国際オリンピック委員会が3年前に男女同権を定めたため、ロシアの女子ボクシング選手が初めてのオリンピック参加に向けて、準備を進めることとなった。チーム主任トレーナーのヴィクトル・リシツィン氏が、女子ボクシングについて語ってくれた。

ヴィクトル・リシツィン氏
=コメルサント撮影

- 国民に女子ボクシングが受け入れられるとお考えですか。

従来の考え方では、ボクシングは女性のスポーツではありません。なぜ女性がボクシングをやるのかという質問をたくさん受けてきました。答えることに疲れ、「では、なぜ女性がパラシュートで飛ぶのですか、なぜ大臣になるのですか」と逆に質問をするようになりました。この質問には答えようがありません。ですが、ボクシングとなると、まるで殺人行為をしているかのように非難が始まるのです。体操では怪我は日常茶飯事でしょう。それがボクシングとなると、1回顔が殴られただけで、「怖い、痛そう」となるわけです。

女子ボクシングについて

オリンピックにおける女子ボクシングに関する記録は、1904年のセントルイス五輪が最初で、女性選手同士がリングで公開試合を行った。ただ、これはデモンストレーションに近かった。観客が女性同士の戦いに嫌悪感を示したため、1世紀近く各国で禁止されていた。1990年代にようやく復活し、2001年、アメリカで最初の世界選手権大会が行われた。これ以降、オリンピック種目に追加するべきか否かという問題が幾度となく取り上げられるようになり、2009年8月13日、国際オリンピック委員会が女子ボクシングをオリンピック種目に加えた。階級は51キロ級、60キロ級、75キロ級の3段階ある。ソフト・ヘッドギア、プラスチック製プロテクター、ガードの着用が義務付けられている。

- 女性が殴られることに拒否反応があるのは自然なことのように思えますが。

女性が自分自身を主張することは悪いことですか。我が国の女性は自信を持って生きています。優れた防護用具があるので、殴られて歯が折れることはありませんし、胸もカップで守られていて、ケガをすることはありません。何も悪いことなど起きないのです。ケガをしやすいスポーツのランキングでは、ボクシングは上位から遠い場所に位置しています。

- このスポーツで成功すると、女子のボクシング選手はどうなるのですか。日常生活でも攻撃的になるのですか。

生活とは何の関係もありません。これは純粋なスポーツです。私生活では女性らしくあり続けます。常にハードなトレーニングや試合をしていますから、自由時間は逆に甘えたり、異性や家族とのんびりしたくなったりするのです。

- ロンドン五輪はこの種目にどのような影響を与えますか。

女子ボクシング発展のきっかけになります。以前から発展はしてきましたが、今は一種のブームになっています。女子ボクシングを見るのはおもしろく、女性だということを忘れてしまいます。戦いの美がそこにはあるのです。ボクシングでも陸上競技でも、男性と女性の間に差は当然ありますが、美しい走り、戦い、技能を見て感動できることには変わりないのです。

- 女子ボクシングが五輪種目となった後、資金的に楽になられたのではないですか。昇給や補助金などはありましたか。

そうですね、他の人と同額を受け取れるようにはなりました。ここ2年、五輪選手の支援に結構な金額が投入されています。中国で開催された世界選手権大会から戻ってきたばかりですが、中国では生活やトレーニングに非常に優れた条件が与えられている上、高額を受け取っています。女子の選抜や寄宿舎で、中国はソ連のシステムを導入しており、立派に機能しています。12歳から16歳までの女子60人が、あらゆるデータから選りすぐられています。彼女らが生活している寄宿舎を見せてもらいました。選手たちはそこで生活し、トレーニングし、学んでいます。そして、このような寄宿舎が各都市にあるわけです。しかも、女子ボクシング単独の話ですよ。他の種目でも同じ条件が整えられています。とにかく、ロシアにはもはや、このようなシステムはありませんし、若い世代もあまり健康ではありません。スポーツよりも治療の方が必要な状態です。

- 最近行われた世界選手権大会では、ロシアが団体で3位、個人で金メダル1個、銀メダル1個、銅メダル7個を獲得し、オリンピック出場の条件となる各重量級でメダル1個ずつ、計3個を達成しました。どのようなお気持ちですか。

とても疲れましたが、オリンピック出場という最重要課題をクリアできたので、満足しています。ロンドン五輪では金メダルを狙います。それ以外は考えていません。ただ、オリンピックというのはスケールのまったく異なる大会で、どの選手でもこの緊張感に耐えられるというわけでなく、運も大きく左右してきます。良い記録を残してきた選手よりも、意志の強い選手が勝つこともあります。ロンドン五輪に出場する我々の選手は、誰もが優勝し得ると考えています。