都心を見たら離宮群へ

写真提供:ゴーリキー・パーク

写真提供:ゴーリキー・パーク

モスクワは季節ごとに異なった顔を見せる。その最も魅力的な顔が、夏のモスクワ郊外の離宮である。都心の名所群は左の案内図に任せて、郊外へ出かけよう。

トレチャコフ美術館から地下鉄で南に3駅行くと、コローメンスカヤ駅の近くに離宮「コローメンスコエ」がある。雄大な景観とユニークな木造建築群との調和が見事だ。

2010年に、巨大な木造離宮が復元された。ピョートル大帝の父アレクセイ帝が建てたもので、超アニメチックな形状には度肝を抜かれる。

「主の昇天教会」は世界遺産に登録されている。モスクワ川を望む丘に白亜の八角錐の尖塔( 62 m)が聳え立つ。ワシーリー3世が長男(後のイワン雷帝)の誕生を祝って建てた。

農奴の名ソプラノ

 クスコボ(地下鉄ノボギレーエボ駅)とオスタンキノ宮殿(地下鉄ベデンハー駅)もおすすめだ。いずれもシェレメチェフ伯爵家が 18 世紀に建てた。

前者は、広大な左右対称のフランス式庭園に大小の宮殿が散在。 17 の池と運河を配しており、宮殿が水上に浮かんでいるように見える。陶器博物館も見もの。

後者は農奴の設計・建設。石造りに見えるが、大理石や漆喰を模した木造だ。

両宮殿には、農奴の歌手や俳優が出演した。なかでもプラスコービア・ジェムチュゴーワは当代最高のソプラノ歌手で、ニコライ・シェレメチェフ伯爵との悲しいロマンスは有名だ。

伯爵は彼女を農奴身分から解放し、1801年に密かに結婚した。しかし彼女は2年後、長男を出産後3週間で亡くなった。伯爵は妻の遺言に従い、病院付きの救貧院を建てたが、数年を経ずに亡くなった。救貧院は現在、ロシア最大の救急病院「スクリフォソフスキー記念病院」となっている。


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