大統領公邸で牛乳を飲む、メドベージェフ現大統領とプーチン次期大統領。=タス通信撮影
5月7日、ロシアの国家元首が交代する。一時間の就任式の後、ウラジーミル・プーチン氏が6年の任期で再びロシアの大統領となる。
新生ロシア発足後20年を経た今も、式典の伝統は定着していない。とはいえ、プーチン氏の大統領の一期目がスタートした2000年以降、式典はほぼ同じシナリオで、5月7日という同じ日に挙行されている。ドミトリー・メドベージェフ氏も2008年に、ウラジーミル・プーチン氏も2000年と2004年に、まさにその日に大統領に就任した。
来賓は、国会議員、政府および大統領府のメンバー、知事、文化人、政治学者、マスコミの幹部、外交官など合わせて2000人。式典はクレムリンの三つのホールで行われ、社会的政治的ウェイトに依って、ある者はモニターを通して、ある者は直に式典を見守る。
次期大統領は、クレムリンの荘厳なホールの赤い絨毯を踏みしめながら、権力の頂点への道を歩みだす。まず、大クレムリン宮殿の最も絢爛たるホールの一つ、ゲオルギーの間の絨毯を闊歩する。かつて、ロシアの皇帝や1812年祖国戦争の英雄たち、ソ連邦の指導者や1945年の戦勝パレードの参加者たちを迎え入れたロシアの武勲の記念ホールでは、現在、政府の褒章や国家賞の授与式が行われている。
数分後、次期大統領は、聖アレクサンドル・ネフスキー勲章に因んで名づけられたアレクサンドルの間へ移る。このホールは、1930年代に壊されてソ連邦最高会議の議場に改造されたが、1990年代に復元され、往時の華やかさを取り戻した。そして、最高権力への道の最終地点、かつてモスクワ・クレムリンの玉座があったアンドレイの間で、式典の進行役である憲法裁判所長官が次期大統領を待つ。
就任そのものは速やかに簡潔に行われる。大統領の権力を象徴するのは、大統領の旗と徽章そして特製版の憲法だ。次期大統領は、諸外国とは異なり、聖書ではなく、憲法に手を置いて、祖国に仕えるとの短い宣誓を行う。式典では宣誓の直後に、必ず国家元首の演説が行われる。
また、この日、大統領連隊による短いパレードが行われる。
式典の後、1000人から2000人ほどの来賓を招いての祝賀レセプションが催される。この式典はロシア国内の行事とみなされているため、外国の元首は例外を除いて、レセプションにも就任式そのものにも招かれない。ちなみに、2008年のレセプションでは、『Deep Purple』が大好きなドミトリー・メドベージェフ氏のために、特別に大統領オーケストラが『Smoke on the water』を演奏するという新趣向も見られた。
その後、いよいよ大統領の職務が始まる。クレムリン内の執務室は、1776年にエカテリーナ女帝の希望で建てられた元老院の中にある。「権力の心臓部」は、木張りの壁、書棚、大きな会議テーブル、そして、大統領の机があるくらいで、ソ連の指導者たちの時代から今日に至るまで、かなり質素に見える。
米国のホワイトハウスあるいはソ連時代からの類推でよく誤解されているが、昨今のロシアの指導者たちは、クレムリンでは専ら執務に従事し、モスクワから数キロメートル離れた一等地に住んでいる。エリツィン、プーチン、メドベージェフの三人のロシアの大統領に、それぞれ国が管理する公邸がある。
エリツィン氏の没後、氏の公邸には未亡人のニーナ夫人が住んでいる。プーチン氏は2008年に国家元首の任務から退いたが、その後もノヴォ・オガリョーヴォの邸宅にそのまま留まった。ドミトリー・メドベージェフ氏も近くのゴールキに住んでいる。これら三つの公邸は、住居であるばかりでなく、ゲストハウスまである執務用設備が整えられている。大統領はクレムリンのほか、そこでも仕事をこなし、かなりの時間を過ごしている。5月7日、新ロシア大統領はハードな就任式の一日を終えると、そこへ向かう。
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