=写真提供:www.admsakhalin.ru
日本の最北端、北海道稚内市。「ロシアでのビジネスで成功した日本企業はないと言われますが、うちはちゃんと利益を出していますよ」と、稚内建設協会の会長を務める藤田幸洋·藤建設社長は明言する。
「うち」とは、2001年に稚内建設協会とサハリンの企業が合弁で設立した建設会社「ワッコル」(本社コルサコフ市)のことだ。
ワッコルの2011年の売上高は日本円換算で約12億円。前年比ほぼ横ばい。石油·ガス採掘の大プロジェクト「サハリン2」関連施設のメンテナンスや地元の公共工事といった需要を取り込んで、安定した経営 だ 。
今や建設会社としてサハリン州内でもトップ5に入る規模という。今年1月、 設立10周年を盛大に祝った。
合弁設立の背景となったのは、1990年代に本格化した、サハリン島の天然ガス開発を中心とする 一大プロジェクト。 稚内から50キロ弱の目と鼻の先で展開される大事業に参入できないかと稚内の建設業界は考え始めた。
稚内市はサハリンのネベリスク、コルサコフ両市と姉妹都市提携を結んでいたし、以前から不定期フェリーが運航されていた。94年からは稚内商工会議所がサハリンから企業研修生を受け入れるなど、交流の蓄積はあった。こうしたつながりからいくつかの合弁先候補が挙がり、最終的に、コルサコフ市の建設会社「SU408」をパートナーとすることになった。ワッコルという社名は、稚内とコルサコフの最初の字を合わせた名前である。
発足当初は資本金20万ルーブル(当時の為替相場で約80万円)。出資比率はロシア側6割、日本側4割だが、意思決定の権限を持つ理事会の構成メンバーを日露半数ずつとすることで、対等な関係を確立。
2002年には軌道に乗る見通しが立ち、約600万円相当の増資を実施。稚内側では、現場向けに建設機械をリースする専門会社も立ち上げた。
その後、大規模な液化天然ガスプラント工事を伴う「サハリン2」にも参入。ピーク時には17億円を売り上げた。2007年には、経済発展への貢献が認められてロシア政府から「全ロシア賞」を受賞。08年にも「国家賞」を受賞した。成功の秘訣は何か。「地方の小資本の会社ですから、派手な投資はやらない。ロシアで大儲けしてやろうという気もない。稚内の活性化のために、隣のロシアといい関係を築こうとしてきた結果だと思います」。藤田氏はそう言って笑った。
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