メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク ・ロシア

キャットウォーク上=エレーナ・ポチョートワ撮影

 年2回の「メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク・ロシア」が始まって今年で10年。最新モードを披露する鮮やかなショーの世界は、モスクワの観客を魅了し続けている。24シーズン目のファッション・ウィークは、スラーヴァ・ザイツェフのデビュー50周年などの巨匠のショーや、若手デザイナーのコレクションが目白押しとなり、来場者を楽しませた。「当初は、ロシアの地域レベルでのファッション市場の骨格づくりを目的としたイベントでした」とメルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク・ロシアのプロデューサー、アレクサンドル・シュムスキー氏は語る。そして、ロシア・ファッション界の完成度について語るのは時機尚早としながらも、この企画が業界全体を大きく飛躍させたとし、次のように続けた。「ここ10年で有名になったロシア・ブランドのほとんどは、このファッション・ウィークを出発点としています。2011年にメルセデス・ベンツが協賛パートナーとなったことは、ロシアのデザイナーに対する評価の高さを証明しています。ロシアのデザイナーには、さらなる可能性が待っているでしょう」。

 ここはすべての参加者にとって自身をアピールできる場となるため、この機会を逃したくないと考える人が多い。タチヤーナ・パルフョーノヴァ(ファッションハウス「タチヤーナ・パルフョーノヴァ」)のショーでは、ウィリアム・シェイクスピアの喜劇「十二夜」が読み上げられる中、モデルがキャットウォークを闊歩した。来場者はモデルの演技にうっとりしながらも、一枚の布をいく重にも重ねたアンサンブルや、刺繍、複雑な形の襟、さまざまなジャボなど、その凝ったデザインに目を奪われた。

 フランスのファッション・プロジェクト「アイ・ラブ・ファッション」は、スパイ容疑で有名になったアンナ・チャップマンをショーのモデルに起用した。イェゴール・ザイツェフ(YeZ by イェゴール・ザイツェフ)のモデルは、触覚をモチーフとした新シーズンのスカーフやボウなど、ザイツェフ氏お得意のディテールを身につけて登場した。

「アイ・ラブ・ファッション」


「イェゴール・ザイツェフ」

 ダーシャ・ガウゼルの今年のテーマは神秘主義だ。「私のヒロインは、自己を確立していて、自然を大切にし、内に秘めた力を発揮できる現代的な女性です。(中略) ロシアのスーパー・ヒロインで、実在する本物の女性であることが重要となります。(アメリカ映画のスーパーマンのように)『S』マークやマント、ナイロン製の赤パンツを身につけていないヒロインです」。ロシアの気候条件下で着用することを前提としているため、彼女のコレクションには、綿入り防寒着、厚手のニット、プラトーク(スカーフ)、ショール、ソフト・プリーツなど、ロシアの伝統的なファッション要素が広く用いられている。

 スヴェトラーナ・テギン(Tegin)のコレクションは、無表情なモデルがコツコツとヒールの音を立てる薄闇で、効果的かつドラマティックに演出された。禁欲的なシルエット、すっきりとしたカット、ソフトなカシミヤとウールの生地、シルク、ベロア、グレーとブラックの色調から突如として現れるダークエメラルドなどが特徴だ。スヴェトラーナ・テギンによる女性の美の解釈は、甘美でありながら、時として驚かせるものとなっている。

 ショーを締めくくったベッサリオン(BEssARION)は、グレーとレモンの心地良い色彩で観客の目を楽しませた。ベッサリオンの発見は、シルクの表面にニットの質感を取り込んだ、独自のプリントである。

 次回のファッション・ウィークはモスクワで秋に開催される。節目となる25シーズン目には、2013春夏コレクションが披露される。

舞台裏=エレーナ・ポチョートワ撮影