ロシアで自然食品や個人農家の生産物の需要が拡大している=タス通信撮影
「新農家」の生産物の購買層は主に中流階級だ。スーパーの倍以上の価格でも買えるほど収入が安定し、健康的な生活や、よりおいしくて安全な食品に対する関心が高い人々だ。2009年に設立された、農業協同組合「ラフカ・ラフカ」は、100軒以上の農家の生産物を家庭に宅配している他、小売店やカフェも経営している。「1カ月の売上高は約1000万ルーブル(約2800万円)です。内訳は、小売販売で95%、残りの5%はレストランやエコショップへの卸売です」と、「ラフカ・ラフカ(LavkaLavka)」の創設者の一人、ボリス・アキーモフ氏は説明する。
「当組合の納入者は、個人事業主や農業従事者、いわゆる『新農家』で、そのうちの多くが村に移住してきた都会の出身者です。ビジネスではなく、精神的な満足感を得るために農業をやっているという人もいます。大部分がこの事業で稼いでいるわけですが、一部は赤字でも続けています」とアキーモフ氏は語った。
「ラフカ・ラフカ」の商品はスーパーの販売品より高く、牛乳は1リットル120ルーブル(約340円)する。契約農家の生産物を量産品より安くすることは難しい、と「ラフカ・ラフカ」はみなしている。あるクラスノダール地方の農業従事者は、「ひまわり油を1リットル得るには、ひまわりの種を4キロ用意しなければなりません。ひまわりの種は1キロ25ルーブル(約70円)ですから、原料原価だけで100ルーブル(約280円)になります。これにはまだ、殻むき、生産、輸送、給与、税金、包装などの費用が含まれていません。おいしい油は安くはありません」と語る。この農家が生産するひまわりの植物油は、店頭では1ビン600ルーブル(約1700円)で販売されている。
農家が納品した後、店のマージンも加算される。販売額は、輸送、商品の保管、リース、従業員の給与、営業、事業開発などにかかる費用をすべて含んでいる。結果的に、「ラフカ・ラフカ」の商品の末端価格は、農家分が50%から70%、販売店分が30%から50%を占めるという。例えば、カルムイク地方のユーリ・ブルフコフ氏とジョルジ・ブルフコフ氏が生産する羊肉は、「ラフカ・ラフカ」が1キロ350ルーブル(約980円)で調達し、店頭では600ルーブル(約1700円)で販売される。
それでも、契約農家の生産物は、必ずしもお店で相対的に高いということではない。例えば、モスクワのチェーン系スーパー「ABK」はここ数年、ウラジーミル州の農家から季節の野菜を調達している。農家の野菜は輸入品より安い。「ABK」の共同経営者で取締役会長のウラジスラフ・エゴロフ氏によると、このスーパーが個人農家から調達する商品の種類は、キャベツ3種、きゅうり、じゃがいも、西洋ウリと、それほど多くないが、小売販売のほとんどを占めている。
「ABK」は全38店舗の小さなチェーンで、小規模農家と仕事をするのは、大手の納入企業と仕事をするより労力がかかるという。数百、数千の店舗を展開する大手スーパーは、ロット数の多さや、確実な納期、量、品質を求める。個人の農家では、こうした課題を解決しにくい、と小売業者協会事務局長のイリヤ・ベロノフスキー氏は説明する。氏によれば、消費者にとって、「契約農家生産物」とは乳製品を意味する場合が多く、その人気は高い。契約農家の牛乳は、商業包装された量産牛乳と同じぐらい売れるが、店はこのような農家の製品を販売しても、量産品ほどの利益が出ない。マージンが量産品より少ないからだ。だが、牛乳は加工業者への販売価格の2倍で小売業者に販売できるため、農家にとっては「おいしい」ビジネスとなる。
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