1. 壁ハウス(サンクトペテルブルク)
ボロヴァヤ通りのこの建物は一見して分かる通り…平べったい!この中に人が暮らしているとは、とても想像ができない。だが実際に中庭に入ってみると、視覚的な錯覚に過ぎないことが分かる。1909年にこの賃貸住宅を建てた建築家のミハイル・クワルトは、用地の形を考慮して不規則な三角形を選んだ。ちなみに、ペテルブルグには同様の建物が他にもいくつかある。例えば、現在はエルミタージュ美術館の一部になっている参謀本部ビルの東翼は、モイカ川側から見ると平べったく見える。
2. 透かし彫りハウス(モスクワ)
建築家アンドレイ・ブーロフとボリス・ブロヒンは、融合不可能かと思われた要素を融合させている。まず、この建物は1939~1940年にアール・デコ様式で建築されている。また、ブロック工法を用いた最初期の住宅の1つでもある。この様式は将来的に全土のあらゆる環境下で建設されると期待されたが、第二次大戦が勃発し、プロジェクトはその意義を失ってしまった。透かし彫りハウスと呼ばれる所以は、ファサードを飾る植物文様の装飾パネルである。素材はコンクリートだが、遠くから見ると、まるで大理石で覆われたイタリアのパラッツォのように見える。
3. ロボット工学研究所(サンクトペテルブルク)
ロボット工学研究所の建物は、おとぎ話の城のようでもあり、ゴシック様式の教会のようでもある。高さは77㍍。肋骨が突き立ったような白い塔の内部は、全体がラボとなっている。
建築は1970~1980年代。宇宙用の機材のテストが実施され、無重力空間のシミュレートも行われている。ソ連初のスペースシャトル「ブラン」のマニピュレーターも、この建物にある。
4. 馬蹄ハウス(クラスノヤルスク)
クラスノヤルスクのソルネチヌイ小地区は、1980年代に建設された。97シリーズ型と呼ばれるパネル工法の住宅は、当時としては最新型で、クラスノヤルスク重機械工場の職員の住居として計画されたもの。9階建ての住宅5棟は馬蹄型をしており、中庭を風からさえぎるのを目的とした形状であった。
5. 白い塔(エカテリンブルク)
ウラル重機械工場の労働者用住宅区に建設された給水塔。1929~1931年の築で、建築家モイセイ・レイシェルの設計。高さは29㍍。地区で最も高い地点に建っている。1960年代まで現役だった。
6. 鳥の脚を持つ家(モスクワ)
VDNKh地区にある25階建ての大型住宅は、市内初の、杭の上に建つ大型建築である。バルコニーはチェス盤状に交互に配されており、建物が空に駆け上がっていくかのような、ダイナミックな印象をファサードに与えている。
7. 船形ハウス(イワノヴォ)
船の形を思わせるシルエットが特徴。特にバルコニーが客船のプロムナードデッキを思わせて、船らしさが増している。1階部分のガラスのショーウィンドウは、建物が水の上を走っているかのような印象を与える。建築家ダニイル・フリードマンの設計によるユニークな建築だ。
8. 最も長い家(ヴォルゴグラード)
部屋数約1500、38の入口を擁する巨大住宅。ヴォルゴグラードにある、長さ実に1.14kmもの建物だ。1970年代に建設された。住人たちが受け取る郵便は、8つの異なる住所に分けられている。
9. 調理工場(サマーラ)
工場付属の調理工場は建築家エカテリーナ・マクシモワが設計し、ソ連のエンブレムである鎌と槌の形をした建物となった。鎌の弧の部分には更衣室と食堂があり、槌の部分は調理場となっていて、そこからコンベアで食事が運ばれた。
今年、この建物内にトレチャコフ美術館の分館がオープンしている。
10. メーリニコフ邸(モスクワ)
建築家コンスタンチン・メーリニコフは、パリ万博のソ連パビリオンや、構成主義スタイルの一連のガレージの設計で名を馳せた。そして1920年代末には、モスクワの中心部に工房を兼ねた家を建てている。これは実に驚くべきことで、というのも、当時のソ連で持ち家を所有することはほぼ不可能だったのである。だが、メーリニコフ邸は実験的なものであった。成功の暁には、同様の設計をコミューンの住宅建設に活かす予定だった。特徴的な六角形の窓のため、「養蜂箱ハウス」とも呼ばれた。
11. 卵ハウス(モスクワ)
00年代初頭の実験的建築の1つ。建築家セルゲイ・トカチェンコのアイディアである。石のように固まったファベルジェのイースター・エッグに丸窓がついたような建物だ。もちろん黄金や宝石の類は一切使われておらず、内部は4階建ての住宅となっている。
12. 全宗教寺院(カザン)
この建築は素通りできない。多種多様な丸屋根や塔が目を引く。これは、1つの建築にカトリック教会と正教教会、イスラムのモスク、シナゴーグ、仏教寺院を融合させた試みだ。設計者はイリダル・ハノフとイリギズ・ハノフの兄弟で、現在も建設が継続中だ。