サイズはネコより少し小さいが、2メートルの幅を跳躍することができる。エネルギーが有り余っているが、幸い、タイガには歩き回る場所がたくさんある。
外見はとても愛らしいが、クロテンは自分よりも小さな動物に襲いかかる真の捕食者である。国立公園では、何かおいしいものはないかと、クロテンが職員や来訪者のいる小屋にやってくることも珍しくない。クロテンはとても賢く、人間のいるところには食べ物があることをよく知っている。魚、ソーセージ、ナッツ、ベリー・・・、小さな泥棒はいい匂いのする食べ物をすべて持ち去っていく。しかし、そんなクロテンを叱りつけることなんてできるだろうか?
今から100年前、クロテンはどんな狩猟者にとっても最高の獲物であった。クロテンの毛皮は世界でももっとも高級なものの一つとされ、「柔らかい金」と呼ばれていた。
ノヴォシビルスク、エカテリンブルク、ヤクーツク、チュメニ州など、ロシアの各地域の紋章を飾っているのも、他でもないクロテンである。クロテンのロシア語は「sobol’(ソーボリ)」であるが、これは元々スラヴ語からきた言葉であり、他の言語でも同じような響きを持っている。
クロテンには17の種類があり、それぞれに毛色が異なっているが、その色はベージュのような色からほぼ真っ黒なものまでさまざまである。しかし中でももっとも貴重で、もっとも珍しいとされているのがバイカルに生息するバルグジン・クロテンである。バルグジン・クロテンはクロテンの中でもっとも小さい。
このバルグジン・クロテンを保護することを目的に、1917年、ロシアで第一号となる自然保護区が作られた。それがバルグジン自然保護区である。狩猟者の乱獲により、クロテンは20世紀初頭には絶滅寸前となっていたが、このバルグジンをはじめとする自然保護区により、個体数を回復するのに成功した。現在ロシアには、150万頭を超えるクロテンが生息している。