ロシアには、原始林から砂漠にいたるまで8種類の陸上生態系が存在する。中でももっとも巨大な生態系がタイガとツンドラで、ロシアの端から端まで広がっている。しかし、この2つの違いとはいったい何だろう?
タイガは、ロシアで長さにおいても幅においても最大の地帯で、プスコフからマガダンまで広がっている。この生態系は主に針葉樹と沼地からなるが、北方タイガにはより松林が多く、南部はモミの林で占められている。タイガには、ヒグマ、鹿、シベリアジャコウジカがおり、アムールトラ生息地の北限でもある。しかし、夏にタイガを訪れると、ロシアの野生の生物で最も恐ろしいものに遭遇することになる。ダニ、アブ、そしてロシアで「グヌース」と呼ばれる巨大な蚊である。その理由はこちらから。
ケメロヴォ、クラスノヤルスク、ペルミ、トボリスクなど、シベリアやウラル地方の都市はもちろんタイガの中にある。しかし、森の奥深くまでは、特に1人では入り込まない方がよい。迷ってしまうかもしれないからだ。
しかしながら、ロシアの様々な場所には多くの国立公園があり自然愛好家や文明社会を逃れて休憩を取りたい人たちを楽しませてくれる。キャンプ、魚釣り、船遊び、夜に焚火を囲んでの語らいなど、多くのロシア人がこのように休暇を楽しんでいる。もちろん、ウラジーミル・プーチン大統領も!
シベリアを訪れたプーチンウラジーミル・プーチン、2021年
kremlin.ruツンドラ地帯はタイガの北方のほぼ北極圏が始まるあたりに広がっている。樹木はほとんどなく、生えていても小人ほどの高さだ。北に行くほど樹木はなくなり、灌木やコケ類、地衣類に取って代わられる。
しかし、これはツンドラには美しいところはないということではない。ツンドラの風景は時にはたとえようのないほど素晴らしい!多くの渓谷、丘陵、滝や湖があり、一目見るだけで忘れることはない!プトラナ台地やコラ半島は多くの旅好きの憧れである。
しかし、樹木が生えていないから道に迷わないわけではない。そう思うなら、それは大きな錯覚だ。何百キロも続く果てしない平坦な土地は、初めて行く人にとっては方向性感覚を失いやすい。
ツンドラでは、光が拡散するため、興味深い光学的現象がみられる。遠くにあるものが近くに見え、小さな草葉や近くの地面の起伏が大きく遠くにあるように見えるのである。磁気嵐も頻繁に発生し、最新の器具だけでなく、旧式の方位磁針も使えなくなる。そして、北極圏の白夜と極夜のことも忘れてはいけない、星や太陽の位置で方向を知ることができなくなってしまう。しかし、一方白夜の期間は夜でも灯りがなくても進むことができる。
トナカイの群れ、ヤマロ・ネネツ自治管区にて
Pavel Lisitsyn/Sputnik旅慣れた人や地元住民は、嵐の後でも方向を間違えずに進むことができると言う。そこには道路というものはほぼなく、あるのは方向だけである。
ツンドラでは農作物をつくることはできないのが大きな問題だが、人類というものは何事にも適応していくものである。何千人もの人が居住している都市としては、ノリリスク、ドゥディンカ、ムルマンスク、サレハルド、ナリヤン・マル、ヴォルクタなどがある。ツンドラには、鉄鉱石、石炭、非鉄金属などの鉱物資源が豊かだ。
ツンドラでは、都市以外に住む先住民族がいる。昔からトナカイを飼って生きてきたエヴェンキ、ハンティ、マンシ、チュクチ、ネネツ、ドルガンといった人たちだ。
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実際、トナカイはツンドラでもっともよく見られる動物だ。ホッキョクギツネも多く野良犬のように人が住む区画に入ってくることもよくある。
自然界では生態系が明確に分かれているわけではない。タイガの森林がいきなり地衣類に取って代わるわけではなく、次第に移り変わっていく。北に行くほど、樹木が低くなり、沼地も少なくなり、石がちの土壌になる。この境界あたりは森林ツンドラと呼ばれ、沼地や湖、たくさんのコケ類が生える珍しい針葉樹林帯である。それはロシア北部全体に20㌔から100㌔も続き、信じられないほど美しい絵画的な風景を見せてくれる。
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