詮索好きな人々の目から隠されたロシアの閉鎖都市5選

観光・自然
ニコライ・シェフチェンコ
 ロシアには40にも及ぶ閉鎖都市があったとされており、そこには150万人の人がひっそりと暮らしている。

 閉鎖都市はソ連時代の遺産の一つである。ソ連はアメリカの軍事力に対抗していたことから、共産主義国家には数多くの閉鎖都市が作られ、そこで秘密裏に武器や軍事技術の研究開発が行われていた。

 これらの都市は、地図にも表記されず、その存在は外国人にもソ連市民にも同じように隠されていた。閉鎖都市の住民は、秘密工場で働き、何人も特別な許可なく町を離れたり入ったりすることは出来なかった。その代わり、国家は、ここに暮らす人々に、住居や保障された仕事、よりよい食料や医療サービスを提供した。

 ソ連が崩壊して30年ほどたった今でも、ロシアはこれらの都市の境界内ではその機密性を維持し続けている。我々が知る5つの閉鎖都市について以下の通り、詳しく紹介しよう。

 

1. ノリリスク

 永久凍土に覆われ、非常に気温が低く、極夜の暗闇に沈む町・・・。北極圏内の鉱業都市に住む人々は自分の町をこう表現する。

 現在はロシア鉱業の中心であるノリリスクは、1920年代にソ連政府がこの地方の豊富な鉱物資源を利用するために建設した。労働収容所の囚人が動員され鉱業と冶金のコンビナート建設が行われたが、多くの囚人が厳しい気候と過酷な労働条件のために命を落とした。 

 戦略的に重要な都市であったにもかかわらず、ノリリスクは2011年にようやくロシア政府によって閉鎖都市になった。公告では、この都市の認定は、住民の生活環境の改善を目的にしており、住民には閉鎖都市の市民に与えられる追加の社会保障が提供される。

 しかし、町が閉鎖都市になったとき、シベリアの永久凍土上にある産業的反ユートピア都市は外国人の入境を制限した。この地球上でもっとも汚染された都市のひとつに入るには、ジャーナリストを含め、どの外国人も許可を取る必要があるが、許可が下りる保証はない。

 

2.ジェレズノゴルスク

 元はクラスノヤルスク26として知られていたこの閉鎖都市は、1950年に核兵器用プルトニウムを生産するために建設された。またそれ以外にも、この都市では、アメリカが開発したGPSシステムに類するGLONASSなどの宇宙開発システムの開発を行っている。 

 いくつかの情報源によれば、この都市を囲む山の中に掘られた洞窟の中に、映画の中に出てきそうな、他国の核攻撃にも耐えうるような原子力施設がつくられている。

 他国のスパイがこの都市に潜入しようとしても成功した例はないが、地元の住民が秘密工場からプルトニウムを盗み出し、単なるガラス容器に入れて家に隠し持っていたという伝説がある。犯人は、捕まったとき、犯行目的は煩わしい義母を殺害するためだったと供述した。

 

3. ズナメンスク(カプースチン・ヤール)

 この町が閉鎖されている理由は単純である。アストラハン地方にあるロシアのロケットの発射及び開発拠点であるカプースチン・ヤール地域の主要な町であるからだ。

 ロケット発射場がつくられたのは1940年代後半で、1962年に小型探索衛星の打ち上げのための射場に転換されるまでは、ソ連の弾道ミサイルの発射実験場であった。

 閉鎖されていたことと軍事的な実験が行われていたことで、この地域はUFOが現れるとの噂が囁かれてきた。ズナメンスクに隣接するカプースチン・ヤールを、有名なニューメキシコ、ロズウェルで起きた物議を醸しだした事故になぞらえて、1950年代にこの町にもUFO墜落したと主張する者も出てきた。

 未確認ではあるが、アメリカとソ連の宇宙開発競争の初期に、ソ連がガガーリン以前に有人宇宙ロケットを飛ばそうとしていたという憶測がある。ズナメンスクはその秘密の発射の基地であったとされている。

 ソ連崩壊後、ここは一時的に閉鎖されたが、1999年にロシア軍がカプースチン・ヤールに再配備されたことから、再び稼働を始めた。

 

4. サロフ

 帝政ロシア時代、サロフはロシア正教の聖地として知られていた。というのも、サロフ川に隣接して古い修道院が建てられていたからである。そこで町の名にもなったのである。地元に伝わる話では、僧侶たちは地下都市を造って、そこに降りて孤独を求めていたと言う。

 1917年のボリシェヴィキ革命の後、聖地は廃れた。数年のうちにこの場所はソ連でもっとも機密で戦略的に重要な場所となった。ソ連の原子物理学者イーゴル・クルチャトフが最初の原子爆弾、RDS-1または501号機器と呼ばれるものを開発したのはここだ。

 そのころ、サロフはすべての地図から消され、この秘密計画に参加しているものだけに与えられる特別な許可がないと、ここに入ったり出たりすることは出来なくなった。

 サロフは今でも閉鎖都市である。最初の核実験が行われたところを基礎に研究機関がつくられ今も稼働している。しかし、今では興味のあるものは外部のものであっても、時折実施される巡礼の旅の一環としてこの町の厳しい警護をくぐり抜けて「潜入」することが出来る。ただし、その際にはパスポート、携帯電話、カメラを事前に預けるように求められる。

 

5.セヴェロモルスク

 北極圏の北にあるこの都市は、ロシア海軍の北方艦隊の基地であり、北極地方のロシアの防衛の戦略的前哨基地であるとされている。

 ここの海軍基地はソ連初期の時代から置かれていたが、閉鎖都市という地位を与えられたのはソ連が崩壊した後の1996年である。

 有名な空母アドミラル・クズネツォフ2017年のシリア空爆に参加した際に出港したのはこのセヴェロモルスクであった。

 この町は、ロシア海軍の歴史に関する博物館である。気候は厳しく、湿度は高く、12月初めから1月中旬までは24時間真っ暗という環境であるが、外国人はこの閉鎖都市で極夜を楽しむことは許されていない。

 

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