ソ連の主なリゾート地11選

Vitaly Sozinov/TASS
 暖かい黒海の海辺での休暇、涼しくてロマンティックなバルト海沿岸の砂丘、山、さまざまな効能の温泉があるサナトリウム・・・。ソ連にはあらゆるタイプのリゾート地が存在した。

1. ユルマラ

 バルト三国(リトアニア、ラトヴィア、エストニア)はソ連の中ではほぼ外国のようなものと考えられ、多くの人々が一目でいいから、“ちょっとだけ開かれた”鉄のカーテンの向こう側を見てみたいと思ったものだ。ラトヴィアの首都リガの近くにあるユルマラは、この辺りのサナトリウムへの旅行招待券を手に入れることができた場合、とくに若者に好まれる場所であった。バルト海は黒海などに比べれば水温が低いが、その代わりここには、数え切れないほどのカフェやレストランはもちろん、ヨットクラブ、豪華なホテル、国際音楽祭、スポーツ大会などなんでもあった。

 

2. パランガ

 バルト海沿岸にあるこのリトアニアの古い都市は、ソ連のツーリストたちにとってはまるで外国のようであった。フランスの造園設計士らが作った植物園、ネオゴシック様式のカトリック教会、都市中心部にあるリトアニアの伝統家屋。また夕方になると、観光客たちは広い砂丘を散策し、埠頭から海に深く沈んでいく夕陽を眺めた。

 

3. ガグラ

 「リャーリャ!信じられる?!ヤーキン監督があのキキモラを捨てたの。それで今日、わたしと一緒にガグラに行くことになったのよ!」これは映画「イワン・ワシリエヴィチ、転職する」の中に出てくるセリフであるが、ソ連の若い女性がアプハジアで過ごす夏のバカンスへの期待感をこれほどうまく表現したものはない。

 黒海沿岸にあるこの保養地は「ソ連のモンテカルロ」と呼ばれ、ソ連共産党のエリートや文化界の有名人などがここで休暇を過ごした。この保養地には、企業から与えられるサナトリウム利用券があってもなくても行くことができた。

 

4. トルスカヴェツ 

 ツルゲーネフやドストエフスキーは夏の休暇をドイツのバーデンバーデンの温泉で過ごしたものだが、ソ連の人々たちもそれに劣らぬ保養地があった。カルパティア山脈(西ウクライナ)の麓にあるトルスカヴェツである。トルスカヴェツは優れた効能を持つミネラルウォーター「ナフトゥシャ」でよく知られる。これは「石油」に愛情を込めた呼び方で、それは水がもつ独特なにおいからきている。このような水は他のどこにも存在しない。この水をここから持ち出すことは禁じられている。水の効能は温泉から離れると失われてしまうからである。というわけで、この水はその場で、小さな注ぎ口のついた特別なカップを使ってしか飲むことができない。 

 トルスカヴェツが温泉療法を行う保養地としてのステータスを獲得したのは19世紀のこと。この地は当時、オーストリア=ハンガリー帝国のものであった。その当時に建てられた別荘やペンションは現在も変わらずそこに立っている。ちなみにソ連時代のサナトリウムもまだ目にすることができる。

 

5. ヤルタ  

 クリミア半島はいつでも国内でもっとも興味深い場所の一つであった。第一に、そこには驚くほど多彩な自然がある。比較的小さな土地に、山、草原、森、そして塩湖がある。第二に、ここにはさまざまな滞在の方法がある。キャンプ、サナトリウム、療養所、一軒家など、好みにも予算にも合わせた選択肢がある。そして第三に、文化的にも興味深い。中世から残る要塞を散策したり、帝国時代の宮殿を見学したり、若いマサンドラワインを試飲したり。何もしたくないという人は、のんびりビーチに寝そべっていることもできる。もっとも人気があって、なおかつ行きやすいリゾート地はヤルタ、アルシタ、スダクで、いずれもクリミアの南岸にある。

 

6. イシク・クル湖 

 キルギスにある高山の塩湖で、自然の不思議の一つである。この湖には、周囲の80ほどの川から水が流れ込んでいるのだが、この湖から出て行く川は1つもない。そこで人間の身体に有益なミネラル分がこの湖に集まるのである。湖の水は飲むことができないが、泥は関節の病気に効くと言われ、ソ連時代にはここにたくさんのサナトリウムが作られた。イシク・クル湖は北天山渓谷に囲まれており、湖は冷たい風から湖を守られている。そこで湖は凍ることはない。ただ天候によって、水の色が変わる。

 

7. ソチ 

 主要な黒海沿岸の都市で、ソ連のすべての市民がここで休暇を過ごした。官庁が保有するサナトリウム、ヤシの木が立ち並ぶ公園、150キロメートルもあるビーチ、海、大人も子どもも楽しめる場所・・・。一言でいえば、模範的なソ連の保養地である。

 

8. バイカル湖

 ソ連のロマンティストたちは皆、ここで休暇を過ごした。昼間は湖上でカヤックや双胴船に乗り、夕方には世界でもっとも深くもっとも澄んだ湖の湖畔で、焚き火のそばでギターを弾きながら心温まる歌をうたう。夜は宿泊施設またはテントで寝泊まりする。泳ぐことができるのは7月の半ばくらいだけである。それ以外の時期は水が冷たすぎるのである。

 

9. ドムバイ

 カフカスのドンバイ渓谷にあるリゾート地は、ソ連で最初にできた保養地の一つ。すでに1920年代の初頭、ここは登山家たちにとってお気に入りの場所であった。というのも、ここには難易度の異なる、距離もさまざまな登山ルートがあったからである。そして1960年代になり、フィンランドのケッコネン大統領の訪問に合わせて、理想的なスキーリゾート地を建設することになった。ちなみに1970年代、フィンランドの建築家らがドムバイにUFOの形をしたホテルを贈っている。リゾート地であるドムバイは現在もスキー愛好家や登山愛好家の間で非常に人気のある場所である。

 

10. ベロクリハ

 ソ連時代とても人気のあったリゾート地、ベロクリハはアルタイ地方にある。ここにはラドン水で若返りたいという人、そして澄んだ山の空気を吸いたいという人々が訪れる。ベロクリハはシベリアでありながら、かなり柔らかい気候であるため、1年中いつでも休暇を楽しむことができる。

 

11. カフカスのミネラルヌィエ・ヴォードィ

 スタヴロポリ地方(ロシア南部)にあるユニークな温泉療法のある保養地で、健康を取り戻したいという人々が、ソ連全土から訪れた。ピャチゴルスク、キスロヴォツク、エセントゥキ、ジェレズノヴォツク、クマゴルスクという小さな5つの都市に、関節痛から皮膚疾患に至るさまざまな専門を持つ100以上のサナトリウムがある。もちろん、ミネラル水や鉱泥療法以外に、山の澄んだ空気や自然を楽しもうとやってくる人もいた。ちなみにこれらの泉から湧き出るミネラルウォーターは今もロシアで高い人気を誇っている。

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