モスクワ地下鉄の扉に絞め殺されないようにはどうすべきか

観光・自然
エカテリーナ・シネリシチコワ
 モスクワのメトロの入口になぜそんなに重い扉があるのか​​、誰がそれを設計したのか、そしてその理由を説明する。

 「たまたま扉と開口部の間に指をはさまれました。振り向くと、床に私の指が半分あり、骨が突き出ていて、肉が出ていることに気が付きました…」と、ジャーナリストたちに女子大生のナスチャは話した。彼女は地下鉄の重い扉を開けようとしていた。扉は問答無用で閉じる動作を続けた。「地下鉄の扉が訴えられている」と記者団は後に書いた。

 数年後、モスクワ地下鉄の巨大な扉が女性を挟んだ。彼女は小さなあざを負っただけで脱出することができた。

 もちろん、この扉は毎日指を挟んだり、蝶番が外れたりしているわけではない。しかし、毎日数百万人が扉と「戦って」いる。なぜだろうか?扉は重く、激しい力で押され、砲弾のような速さで戻る。

なぜ地下鉄にそのような扉があるのか

 このことは、昔からある地下鉄の駅の扉全てに当てはまる。これらの扉は最初から取り付けられていたもので、最も強力なものだ。

 「最初に登場してから1950年代の終わりまで、地下鉄は壮麗さに満ちる記念碑的な施設でした。希望は巨大なものでした。そしてその結果生まれたのが強力な扉でした。これは次のように描かれました。高くて硬く、興味深い細部と外装がなされていた」と「Metrogiprotrans」の建築チーフであるニコライ・シュマコフは説明した

 しかし、建築基準に、扉の望ましい重量については何もなかったのだ。スターリンの下で地下鉄建設を担当したラーザリ・カガノーヴィチは自身の回想録『我々はこのように地下鉄を作った』の中で、「世界のどのメトロにも見られないようなロビーを完成させる必要がありました」と語った。これが主な条件だった。 

 全ての建具は、最高品種のクルミとオークの木からあつらえられた。「オークの扉だけで400枚注文され、ほぼ全部のデザインが異なっていました」とカガノーヴィチは振り返る。この扉の重量は110キログラムだった。

 さらに、扉の重量は根拠があった。地下鉄の扉は、いわゆる「アメリカのヒンジ」を使うようにしたのだ。これは両方向に動くので便利なものだった。しかし、これは空気や風の換気の流れによって「飛ぶ」ことがないように、扉が重くなければならないことを意味した。

 

撤去できない珍品 

 重い木製の扉は本当に美しく、長い間使用されている。同様の扉は駅、劇場、大学、政府機関の正面玄関にも設置された。この記念碑的な扉が時代遅れのものになりつつあったとき、ガラス金属の扉が現れた。これらは軽くてより快適だ。そして2007年、モスクワ地下鉄はステンレス鋼の扉を設置し始めた。「このような扉の重量は平均60 キログラムだ」と、地下鉄の広報部は話す

 しかし、これらの古い木製の扉も消えてはいない。今日も、この扉は「モスクワの文化遺産」というステータスを持っている。すなわち、このような扉を交換または回収することができないことを意味する。 

 モスクワ市民は扉を巧みにかわしたり、押し入る方法を学んだ。 しかし、たいていの場合、単に他の人のための扉を開けることが多い。このような礼儀は、自分自身が怪我をしないための最良の方法となっている。

 「以前はあまり深く考えていませんでしたが、ある時カードを探していて、手を出す時間がありませんでした。扉の大きさから判断すると、手を出していたら私は歯を折るだけでなく、どこか負傷したでしょう。しかし、扉は開かれました。私はいつもそれを忘れないようにしていて、常にそれを守っています」と、Thewalkmaryというハンドルネームのユーザーは投稿した

 ただし、常に自分だけを頼ることをお勧めする。誰もがこの扉に対処できるわけではないのだ。「力が足りないので扉を押さえません。腕がもげます」とJuliaBrは話す。地下鉄の広報は、「地下鉄は高い危険性がある運送事業であり、地下鉄を使用するときは特に注意が必要です」と強調する。また、統計によると、地下鉄での全ての負傷事件は、乗客自身が基本的な安全規則に違反したことが原因で発生したことが示されている。

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