オリガルヒ(新興財閥)のモスクワ:いちばんのお金持ちたちはどこに住んでいるのか

観光・自然
エカテリーナ・シネリシチコワ
 彼らの財産は数億ドルと目されている。その資産には――世界各地にある一流の不動産もある。「ロシアのオリガルヒ」たちはモスクワのどこに住んでいるのだろうか、彼らの隣人になるにはいくらかかるのだろうか?

ピョートル・アーヴェン
資産額:51億ドル*
手掛けている業種:金融、石油、テレコミュニケーション

「アルファ・グループ」共同経営者、実業家でコレクターでもあるピョートル・アーヴェン氏は、旧アルバート通り近くのボリショイ・アファナシエフスキー横丁に住んでいる。1912年に建てられ、外観はシンプルなレンガ造りの建物で、アーヴェン以外にも、ここに住居を所有しているのは、企業の上層部の人ばかりだ(資産額151億ドルのミハイル・フリードマンもいる)。このことは、監視カメラの多さが証明してくれる。

 かつてここには、ロシアの公爵や役人、作家たちが住んでいた。そのおかげでこの地区の価格は、1平米あたり約9722ドルもする。この建物には12戸あり、総面積は約400㎢になる。

 さらに、金融家としてのアーヴェンが時を過ごす家がもうひとつ、高級住宅街のバルヴィハ町(モスクワ州)にある。かつてこの一戸建ての別荘は、作家のアレクセイ・トルストイが所有していた。トルストイはこの別荘をヨシフ・スターリンから個人的に受け取ったのだ。もっとも、アーヴェン自身の言葉によれば、彼はトルストイからは何も受け取っていないそうだ。2002年に購入した際には、家の中は汚れて散らかっていたという。

ヴァギト・アレクペロフ

資産額:164億ドル

手掛けている業種:石油、投資

 石油会社「ルクオイル」のリーダーは、パトリアルシエ・プルドィ地区のスカチェルトヌイ横丁に住んでいる。ハイテク式の家は、立派な複合住宅ビルの中に入っており、ここのフラットは一戸あたり1億3100万ルーブルから4億4800万ルーブル(190万―660万ドル)までさまざまだ

 この地区は17世紀に宮廷に仕える人たちを住まわせた場所だが、18-19世紀になると、商人やモスクワの貴族たちが越してきた。現在、アレクペロフと共にスカチェルヌイ横丁のこの8階建てのマンションに住んでいるのは、「ノルニッケル」総帥のウラジーミル・ポターニン、「ルクオイル」副社長のレオニード・フェドゥン他、数人の億万長者たちだ。

 別のデータによれば、アレクペロフは仕事場の近くに引っ越したのだという。引っ越し先は、革命前の1901年に建てられた保険協会「ロシア」の建物だ。この建物は、スレテンスキー・ブリヴァルにある「ルクオイル」本社ビルの真向かいに立っており、フラットの平均価格は――1億ルーブル(150万ドル)だ。

アレクセイ・モルダショフ

資産額:187億ドル

手掛けている業務:金属、観光、機械製作

 小さなザチャチエフスキー横丁はモスクワで最も有名なVIPの住む横丁のひとつだ。マスコミのデータによれば、ここには、オリガルヒのモルダショフの他にも、ウラル採鉱冶金会社の社長イスカンデール・マフムドフのフラット(73億ドル)、さらに、巨大インターネット企業「ヤンデックス」の最高責任者アルカジー・ヴォロジュのフラット(15億ドル)もある。

 ザチャチエフスキー横丁はオストジェンカ通りへと繋がっている(クレムリンから2km)。今日では歴史的な建築物はそんなに多く残っているわけではないが、そのことはオストジェンカ通りがモスクワで最も高価で威信のある地区となる妨げにはなっていない。この地区の住人の95%が中クラスの企業、または大企業の代表たちだ。

 この地区の1平米あたりの平均家賃は100万ルーブル(1万4600ドル)だ。2013年にオストジェンカはニューヨーク五番街の家賃を抜いた

ゲンナジー・チムチェンコ

資産額:160億ドル

手掛けている業種:ガス、石油化学、建設、投資

 シヴェツキー・トゥピク通りにある、外観はとくに目立つところのないレンガ造りの建物には、多くの富豪たちの隠れ家がある。チムチェンコ以外にもここには、「ロスネスチ」社のトップマネージャー、イーゴリ・セーチンや、「VTB」(対外貿易銀行)社長のアンドレイ・コスチン、さらに、現職大臣やかつての大臣経験者らの住いもある。建物は、ロシア連邦警護庁(「プーチンのボディガードたち」)が警護している。

 これはトゥピクで唯一の住居ビルだ。内部にはさまざまなレベルのペントハウスがあり、面積は1000㎡、豪華な装飾が施されている。有名人たちが多く暮らすこの建物の一戸の価格は、2013年には4000-5000万ドルだった。現在この建物では5部屋が売りに出されている――530万ドルと630万ドルだ。モスクワの不動産会社「カリンカ」の説明によれば、価格の差は本質的なものというよりも、中古市場の一般的な下落が理由だという。「中古住宅は年々価格が下がっています。どうやら、この価格でも高すぎたようです。これらの部屋はすでにかなり長く売りに出されたままになっています」と不動産会社は言う。

 この他にも、チムチェンコはヴォロビヨヴィエ・ゴールィの一戸建てに住んでいることも知られている。これは、ソ連共産党中央委員会第一書記ニキータ・フルシチョフがかつて住んでいた家だ。1000㎡以上の面積がある二階建ての家は、チムチェンコに賃貸として貸し出されている。

ミハイル・プロホロフ

資産額:96億ドル

手掛けている業種:投資

 モスクワ郊外のコテージ村スコルコヴォ(モスクワから15km、ここには、ロシアの「シリコンバレー」として作られた同名のテクノパークもある)にあるプロホロフの家には、スティーヴン・コルベア(CBSの「レイトショー」の司会)も訪れる。郊外の一戸建てには、「標準的なものが一式」揃っている:プール、屋内噴水、スポーツホール、ハイテクデザインの広々とした部屋、サウナ、ワインセラーだ。

 プロホロフの家の近く、木々を挟んで向こう側にあるのは、冶金業を営むウラジーミル・ポターニン(資産額:159億ドル)の屋敷、さらにやはり冶金業のロマン・アブラモヴィチ(資産額:108億ドル)が所有する、厩舎とサッカー場のついた別荘がある。

* 2018年度「フォーブス」による資産額