イルクーツクとバイカル湖で濃い48時間

観光・自然
サラ・チャッタ
 シベリアの木の家や19世紀の流刑された貴族から、「戦争と平和」の登場人物やバイカル湖の美しさまで、イルクーツクを訪れると、特別なシベリアの週末を過ごすことができる。

 イルクーツク市というと、遠い、極寒、バイカル湖などのイメージがあるかもしれない。人口約60万人のイルクーツク市は、シベリアの大都市。快晴日数の非常に多い街(冬でも晴天)で、空気が乾燥していて、風もなく、過ごしやすい街である。

週末の48時間で、19世紀の建築やバイカル湖の西側を探索すれば、なぜイルクーツクがシベリア鉄道で最も人気のある行き先なのかがわかるだろう。

 

昼間の散策

 旅のベテランは、街を知るには歩くのが一番だと考えるだろう。自分で歩き回ってもいいし、イルクーツクのおもしろスポット30ヶ所をめぐる2~3時間の「グリーンライン・ツアー」に参加してもいい。

 イルクーツクでは、旧市街を必ず歩こう。そこにある木造建築は美しく、ユネスコ世界遺産に暫定登録されている。旧市街では窓を注意して見ていこう。当時のシベリアの家の窓としては大きく、高さが1メートルを超えるものも多い。そして、ほとんどの家によろい戸がついている。一説によれば、シベリアではかつて治安が乱れたことがあり、住民は重くて頑丈なよろい戸で家を守ったのだという。現在、複雑な窓のデザインは、街の魅力の一つとなっている。

 アンガラ川の河岸を歩き、カール・マルクス通りを中心部に向かって歩くと、イルクーツク・ドラマ劇場の前を通る。1850年に建てられたロシアで最も歴史の古いドラマ劇場の一つで、地元出身の有名な脚本家アレクサンドル・ヴァンピーロフ、作家ワレンチン・ラスプーチンの尽力もあり、栄光の歴史が築かれた。ここから10分ほどさらに歩いたところには、アレクサンドル・ヴァンピーロフ文化センターがある。ここに立ち寄り、「シベリアのチェーホフ」の生活と活動について知ろう。

 次に行くべき場所は、トルベツコイ家とヴォルコンスキー家の邸宅からなるデカブリスト博物館。1825年の武装蜂起により、デカブリストの大半がシベリアに流刑され、ここに生活の拠点を設けた者もいた。

 デカブリストの妻は、夫を追ってシベリアに移住した。ロシア史では、夫のために危険を顧みない、自己犠牲の心を持った女性として、象徴的な存在になっている。

 デカブリストの指導者セルゲイ・ヴォルコンスキーの妻マリア・ヴォルコンスカヤは、夫を追ってシベリア入りし、30年間流刑生活をともにした。ヴォルコンスキー邸では、個人的な所有物、ヴォルコンスキー家の関係者がつくった手工芸品、妻マリヤがパイナップルを栽培していた冬の庭園などを見学することができる。

 レフ・トルストイの長編小説「戦争と平和」について知ることもできる。セルゲイ・ヴォルコンスキー公爵は、トルストイの母方の遠い親戚で、トルストイの作品にも登場する。「戦争と平和」の主人公ピエール・ベズーホフのモデル一人は、セルゲイ・ヴォルコンスキー公爵である。この博物館では、夏の映画の夕べ、冬の「ナイト・ミュージアム」など、定期的にイベントが開催されている。

 たくさん歩くとお腹が減ってくる。イルクーツク市最高の料理を楽しみたいところだ。ブリヤートの肉饅頭ブウズィ(Buuzy)は必食。 

 熱々のブウズィを手で食べる。肉汁たっぷりだから、逃さないように、上手に食べよう。市内で最も人気のブウズィのある場所は、チェルヌイシェフスキー通り(Chernishevskovo Street)のカフェ「ブザ(Buza)」。7月3日通り(3 July Street)のレストラン「ラッソリニク(Rassolnik)」は、ソ連・ロシア料理の店。地元の農家の写真や概要つきの田舎メニューもある。デザートもおいしく、ハチミツ・ケーキ(Medovyi Tort)は市内最高の品。

 

ナイトライフ

 イルクーツクのナイトライフの中心は、「第130番区(130th Kvartal)」と呼ばれる地区。バーがたくさんあり、カラオケをうたったり、踊ったりできる場所もある。

 カフェ・カラオケ「オペラ(Opera)」、カラオケ・クラブ「ピアノ奏者を撃たないで(Ne Strelyaite V Pianista)」、カラオケ・バー「野生馬(Dikaya Loschad’)」などがある。

 飲食代の代わりに場所代(時間制)を払う方式で運営されているアンチ・カフェも、ナイトライフの場になる。スヘ・バトル通り(Sukhe-Batora Street)の「4部屋(4Room)」では、クエスト、動画および映画視聴、ボードゲーム、飲み会などを楽しむことができる。

バイカル湖

 世界最深、世界最古の大きなバイカル湖は、イルクーツク市から乗合バス(マルシュルトカ)で50分ほどの場所にある。リストヴィヤンカは、「バイカル湖の出入り口」。イルクーツク市から最もアクセスしやすい湖畔の村で、観光施設もある。市場では紅茶や工芸品、ハーブ、バイカル湖の魚オムリなどが販売されている。オムリは必食!

 冬はトナカイと触れ合ったり、凍結したバイカル湖の上でゲームをしたり、リストヴィヤンカでスキー、スノボを滑ったりすることができる。バイカル湖が流れ出るアンガラ川の入口には、シャーマンの巨大な岩がある。伝説によると、罪人が岩のところまで船で連れて行かれ、選択肢を与えられた。岸まで泳いで戻るか、岩の上に残って凍死するかと。アンガラ川の水は冷たく、流れも速いため、泳げばすぐに凍死してしまう。つまり生きる選択肢はなかったということである。

 バイカル湖のハイキングについては、英語のウェブサイトもある。

 リストヴィヤンカのバイカル博物館には、この湖についての情報が詰まっている。たとえば、バイカル湖の地域の動植物種の75%以上が固有種であることなど。バイカル湖アザラシ2種についても知ることができる。世界では、淡水に生息するアザラシは3種しか知られていない。アザラシがどうやってバイカル湖に生息するようになったのかは、いまだ謎である。

 リストヴィヤンカには、ロシアの伝統的な蒸し風呂バーニャがある。「バイカル・ヒル・レジデンス(Baikal Hill Residence)」、「レゲンダ・バイカラ(Legenda Baikala)」、「マヤク(Mayak)」などのホテル、「ボドルイ・メドベチ(Bodryi Medved’)」、「マリナ(Malina)」、「バイカリスキエ・セゾヌィ(Baikal’skie Sezony)」などの民宿にはバーニャがある。С легким паром!(よいお風呂を!)

 時間に余裕があったら、アンガラ川の河畔にあるタリツィ野外博物場(Taltsi Museum)に行ってみよう。地元の伝統的な木造建築が展示されているおもしろい場所で、ロシアの民話に登場する妖婆バーバ・ヤーガの家もある。ここではイベントが時々開催され、市場では木製の土産物が販売されている。