タバコを吸うことを完全に禁止する案

タバコを吸う男性、モスクワ

タバコを吸う男性、モスクワ

=コムソモリスカヤ・プラウダ/Global Look Press
 日本は2020年東京夏季オリンピックに向けて、喫煙者に対する厳しい規制の導入を検討している。ロシアは、2014年以降に生まれた国民の喫煙を完全に禁止するという過激な措置を提案している。この案は喫煙支持派と喫煙反対派の間の論争を刺激した。

 ヴェロニカ・スクヴォルツォワ連邦保健相がタバコの販売の禁止について初めて言及したのは、昨年5月。「我々自身に課す主な課題とは、新しい世代が生涯に渡ってタバコ製品を入手できなくなるような条件を整備すること」と記者会見で話した。

 この時はそれほど注目されなかった。だが今年に入り、スクヴォルツォワ保健相は、正式文書である新しい反タバコ構想を関係省庁に配布した。そのうちの2項は、世界であまり聞かない規制である。一つ目は、2014年以降に生まれた国民に対するタバコ製品の販売を完全に禁止する、二つ目は、喫煙者が喫煙にかける時間分その者の労働時間を延長する、というもの。

 ロシア上院(連邦会議)の議員の一部は、すでにこの案の支持を表明している。特に、上院社会政策委員会のラリサ・チュリナ委員は、公共の場での喫煙を禁止する「世界保健機関(WHO)」の条約の枠組みの中で2013年にロシアで施行された反タバコ法が、「ロシアの人口増に寄与したし、この傾向を発展させる必要がある」と話した。チュリナ委員のデータによれば、喫煙率は39%から31%まで、13~15歳の青少年の喫煙率は27%から13%まで減少したという。「これは医師、そしてすべての保護者を喜ばせるもの」

憲法に反する

 この案に反対しているのは、連邦司法省、連邦財務省、連邦経済発展省。司法省はロシアの労働法典と憲法に反していると言っており、財務省、経済発展省は「実際には実現不可能」と話している。保健省はこれらの省の専門家による肯定的な評価なしに政府に案を提出できないため、案のさらなる作りこみを約束した。だがタバコ販売を禁止する項目を削除しようとはしていない。

 政府は保健省の構想について今のところ、何も言っていない。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「タバコ販売規制案に対するいかなる立場もクレムリン(大統領府)にはないし、関係省庁の問題だから、あり得ない」と述べた。

 

ブータンのように

 この案に猛反対しているのは社会組織だ。全ロシア喫煙者権利運動のアンドレイ・ロスクトフ事務局長は、ロシアNOWにこう話す。「まったくひどい話だ。世界のどこにもこんなのはない(タバコ製品販売禁止はブータンにのみ存在--編集部注)。”締めつけ”が機能しないなんて、だいぶ前からわかってること」

 全ロシア喫煙者権利運動は、保健省の反タバコ構想が可決されたら、喫煙者とデモをするという。ロシアに喫煙者は3000万人以上いる。

年間-40万人

 タバコ反対派は、タバコ賛成派の立場を偽善と呼ぶ。ロシアのタバコ事業について複数の番組を制作し、タバコ会社との闘いがライフワークとなっているロマン・トロクノフ氏は、人権がタバコ反対派の覆いにしかならないと考える。

 「賛成派の主張は何年も変わっていない。ところで、連中が恐れているのは一つだけ。販売の急減、つまりは利益の損失。頭にあるのは金だけ。ロシアでは喫煙を原因とした疾患で、年間約40万人が亡くなっている。これは大変な惨事だ。国は闘おうとしているが、タバコのロビイストは国の上層部に話ができる」とトロクノフ氏。

 このようなロビー活動の一例として、トロクノフ氏は2003年に成立したタバコの規制に関するWHO条約のロシアでの批准をあげる。「この条約の履行は義務だが、批准されたのは5年後の2008年。タバコのロビイストが邪魔をした」

 トロクノフ氏は、保健省の新しい反タバコ構想では、闘いがもっと厳しく、長くなると考える。「最後にどうなるのか、今は誰にもわからない。だが始まったことは良いこと」

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