スターリンを肯定する人が増加

EPA撮影
 最近のロシアの世論調査で、スターリンの国内史における役割を肯定的に見る人が約半数に達し、過去最高になっていることが明らかになった。共産主義者は議会選挙でスターリンのイメージを使うことを計画しているが、このような戦術は成功するかもしれない。

 ソ連史および現代ロシア史において、好き嫌いの分かれる指導者ヨシフ・スターリン。死去した1953年当時、ソ連国民にとっては、神のような存在であった。プロパガンダによって、ソ連全土で愛され、存命中に銅像が建立され、歌がうたわれ、街の名前にまでなった。

 死後、スターリンに対する個人崇拝はすぐに崩壊した。次の新しい指導者ニキータ・フルシチョフは、何百万人もの無実の人々の死を招いたスターリンの弾圧を非難。脱スターリン主義が始まり、銅像が撤去された。政府当局者は、彼の名に言及することを好まなくなった。ペレストロイカの時代、またソ連崩壊後、スターリンに対する批判は公然と行われるようになった。「スターリンのソ連共産党と国民の前の大規模な弾圧と無法状態の罪は重く、到底許されない」と、ミハイル・ゴルバチョフは1987年の報告で述べている。ソ連崩壊後の指導者らは、幾度となく、スターリン時代の犯罪を非難している。

 

脱スターリン主義の失敗

 だが21世紀に、新たなスターリン像が設置されている。通常は小さな胸像で、共産主義者が置いている。2012年からは戦勝記念日に、国内の一部の都市で活動家が「スターリンバス」に肖像を掲げるようになった。ペンザ州の行政中心地ペンザ市(モスクワの南東640キロ)では、エカテリンブルク市の「エリツィン・センター」のような「スターリン・センター」を共産主義者が開設し、2016年を「スターリン年」と宣言した。

 このような共産主義者の活動は国民の理解を得ている。ロシアの世論調査センター「レバダ・センター」の2016年3月の調査で、ロシア人の54%が、スターリンが国の歴史において肯定的な役割を果たしたと回答した。2003年から行われているこの調査で、最多である。スターリンを肯定的に評価する人は2008年の39%まで減少の一途をたどっていたが、その後増え始めた。また、スターリンの弾圧は「政治的に必要だった」と考えるロシア人も、回答者の26%と、これまでで最も多くなった。

 政治工学センターのアレクセイ・マカルキン副所長は、脱スターリン主義というと混乱期をイメージするため、うまくいかなかったと考える。「ペレストロイカ時代にスターリンはずいぶん批判されたし、犯罪も明らかにされ、ショックだった。今はペレストロイカというと、国の過ち、崩壊の時代と、多くの国民に解釈されており、その『反対』が良いとされる。ペレストロイカでスターリンが批判されていたということは、良い人なんだと」とロシアNOWに話した。

 

勝利者のイメージ

 マカルキン副所長によると、スターリン人気の主要な要因は、独ソ戦の勝利だという。「スターリンは最高司令官だった。ロシア社会では戦勝崇拝が強く、軍を率いた人物の役割は多くの人の意識で無視できないものになっている」

 スターリン時代の他の成功も、スターリンの功績になっているという。「スターリン主義者の意識の中では、工業化を実現し、工場を建設し、新たな領土をつなげたのがスターリンだと考えられている。現在ロシアでは、歴史に対して、道徳的な考察ではなく、現実的な考察が主流。国土を広げたのだから成功したリーダーだと」とマカルキン副所長。

 

スターリン政権下で暮らしたいのか

 政治評論家で、モスクワ国立国際関係大学教授のヴァレリー・ソロヴェイ氏はこう話す。「スターリンに魅力があると話す人は、スターリン政権下で生活したいという意味で言っているわけではない。スターリンはあくまでも他人の指導者であって、自分の指導者ではないということ」。調査はこれを証明している。レバダ・センターの世論調査によると、スターリンを肯定的に見る人が多いにもかかわらず、スターリン政権下で暮らし、働きたいと考えるロシア人はわずか23%だ。

 現代ロシアのスターリン主義は、専門家によると、多くが反発からくるものなのだという。「スターリンのイメージは、『同じ外套』しか着ていなかった、日常生活の質素な指導者。汚職まみれの高官を背景に、スターリンは誠実さの手本と、多くの人に考えられている」とマカルキン副所長。ソロヴェイ氏も同様に話す。「スターリンへの愛の表現は、象徴的な抗議であり、秩序を整える剛腕を求める姿勢」

 

選挙戦にスターリンのイメージ

 ロシアでは今年9月、下院(国家会議)選が行われる。共産党(現在下院で二番目に大きい)の関係者はすでに、「より多くの票を集める」ために、スターリンのイメージを選挙に使うと発表している。

 専門家はこのような方法を有効だと考える。ソ連ノスタルジーを感じる人は、スターリンのイメージ活用を喜ぶからだ。「『ロシア連邦共産党』の支持者はスターリンに肯定的。こういった人に効果的で、動かすものだろう」とマカルキン副所長。

 社会のリベラル派にとって、スターリンは暗く、1100~3900万人が被害にあった弾圧(人権団体「メモリアル」のデータ)を確立した人物である。弾圧された被害者の人数の推定範囲がこれほど広くなる理由は、その定義の違いにある。幅広い解釈には、死刑になった人と投獄された人だけでなく、国外退去になった人、労働を言い渡された人、1932~1933年に餓死した人などが含まれている。歴史学者ヴィクトル・ゼムスコフ氏が参考にしたソ連の秘密警察のデータと統計では、スターリン政権下で死刑宣告を受けた人は約80万人である。

 共産主義者の発表には、すでに憤りの声があがっている。だがソロヴェイ氏は、騒動によって共産主義者がかえって有利になると考える。「スターリンのインパクトで得票、好感、認識が高まる。反スターリンの人は、はなからロシア連邦共産党には投票しない。だからスターリンによって得票が減ることはない」

 共産党の障壁となり得るのは、「ロシア自由民主党」の法案である。これは、選挙戦にすでに死去した人のイメージを使うことを禁止するものである。ロシア自由民主党の議員によると、法案は共産党の動きとは無関係であるが、可決されれば、すでにこの世にいない指導者のイメージを使うことはできなくなるという。

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