敵からほとんど見えなくするロシア軍の新カモフラージュ

テック
グリゴリー・ヴォエヴォディン
 専門家によれば、NATOが配備している無人機の95%は、新しいカモフラージュを施したロシア軍の装甲車両を見つけられないという。

 新しいカモフラージュ技術は非公式に「ハメレオン」(ロシア語で「カメレオン」の意)と呼ばれている。この技術はいわゆるエレクトロクロミック・ガラスに基づいており、電流によって色と透明度が変わる。

 同様のエレクトロクロミック・コーティングが使われた最初の例は、2018年にロシアで開かれた兵器展示会「アルミヤ」で公開された未来の軍装「ラトニク」だ。2021年10月初め、RIAノーボスチは軍産複合体関係者の話として、新カモフラージュを装甲車両の模型に施す試験が行われていると伝えた

  カモフラージュは次のように機能する。装甲車両の外側はエレクトロクロミック素材の層で一面を覆われ、それぞれの層に電線が通っている。システムはビデオカメラで周囲の風景をすべてスキャンする。同時に周囲の色と主な地形の特徴を分析し、コーティングに新しいカモフラージュを作り出すよう指示を送る。こうして装甲車両はどこから見ても完全に周囲に溶け込んでいるように見える。

 原理は自然界から採用されている。カメレオンやタコは、自分のいる場所の表層を真似て表皮の色を変える。例えば、タコは海底の暗い所から明るい所に移動する時に素早く皮膚の色と模様を変える。

装甲車両はどれほど「見えなく」なるか

 「この技術は新しいものではなく、民間ではかなり前から用いられている。いわゆるスマートガラスで、オフィスの会議室に置かれることがある。会議室が空いている時は透明だが、使用中は色が表れる。しかし軍用品として革新性があることは疑いない。こうしたコーティングは最大限周囲の環境に合わせたカモフラージュを素早く作り出して周囲の変化に順応できる、信頼に足る安価なシステムになるはずだ」と雑誌『無人航空機』のデニス・フェドゥチーノフ編集長は指摘する。

 彼によれば、ロシア軍の多くの地上兵器にこうしたコーティングを施せば、仮想敵の約95パーセントの無人機はこれらをほとんど見つけることができなくなるという。

 「無人偵察機の大半は小型機に分類される。機体内にも地上制御システムにも、動画を解析・分析する装置はない。データの分析は直接ドローンの操作者、すなわち人間が行う。特別なコーティングをされた兵器は発見・識別が非常に難しいだろう」とフェドゥチーノフ氏は言う。

 専門家によれば、「ハメレオン」が効果的なのは、無人偵察機が相手に気付かれないよう敵から距離を保とうとすることに理由があるという。

 しかし「ハメレオン」はロシア兵器の防御のための万能薬ではない。通常の無人偵察機(それらが全体の95パーセントを占めるとはいえ)に対してしか効果がないからだ。もし無人機がさまざまな電波を駆使する偵察装置を使用できるなら、「ハメレオン」はかなり効果が下がってしまう。

 さらに、このカモフラージュは敵の画像誘導ミサイルの目しか欺けない。「こうしたミサイルは、エレクトロクロミック・コーティングによって自動捕捉に失敗する可能性がある。光学コントラスト・ホーミング方式のミサイルや、標的の外観を記憶して狙うミサイルにも有効だ」とフェドゥチーノフ氏は話す。 

 彼は、こうした限界はあるものの、この新システムがロシア軍にとって大きな補強となると考えている。擬態能力を持つ兵器は、通常の静的なカモフラージュを施した兵器よりも戦場で生き延びる可能性が高いという。

 同等の戦力を持つ敵同士の機械化歩兵部隊の対戦では、状況把握と[発見―破壊]のサイクルの速さの点で、「ハメレオン」コーティングを施した兵器が勝つ。敵は擬態した兵器の発見に時間がかかり、またすべての兵器を見つけ出すことができないからだ。

この擬態を見破るには

 しかし、より高度な技術を持つ、先進的な偵察システムや自動情報処理分析システムを搭載する無人機は、「ハメレオン」を見つけられる。ロシアのある主導的な無人機メーカーの関係者がロシア・ビヨンドに明かす。

 「赤外線カメラ(赤外線カメラにとっては「ハメレオン」は問題にならない)を持たず、光学センサーしか備えていない無人機でも、こうした兵器を発見できる。高解像度カメラや自動情報処理アルゴリズム、機械学習を使えば可能だ」と情報提供者は指摘する。

 同氏によれば、例えば良く学習したニューラルネットワークを持つ現代のハイテク軍事ドローンは、雑多な物で溢れる都市部においても、特定のブランドの車を難なく見つけられるという。もし木陰から突き出したボンネットの一部しか見えなくてもだ。

 「ニューラルネットワークと然るべきセンサーを持つ高価なドローンにとっては、砲身を目印に戦車を追跡することは難しくない。砲身は射撃時の動的負荷が大きく、エレクトロクロミック・コーティングを施せないからだ。こうしたドローンには、車体の影やキャタピラー、機関銃、アンテナ、誘導装置、排ガスなど、カモフラージュを無に帰してしまう細かい点が見えてしまう」とこの人物は指摘する。

 だがこのロシア無人機メーカーの関係者は、それでもこの新カモフラージュが大規模に導入されれば、ドローンや航空兵器、地上の光学監視システムの操作者や、戦闘車両の照準手にとって厄介になるだろうと考えている。

 「例えばNATO加盟国は、ロシアがこれを大量導入すれば、無人機とその地上制御システム、ヘリコプター、戦闘車両用のニューラルネットワーク技術やビッグデータ処理システムに新たな軍事予算を割くことを検討せざるを得なくなる」と彼は締め括る。

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