シベリアでプーチンが乗った全地形対応車の正体(写真特集)

テック
イーゴリ・ロジン
 この全地形対応車(ATV)はロシアの最も過酷な悪路でも走ることができ、川や湖を渡ることもできる。

 先週末シベリアで休暇を過ごしたロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相が乗った車は、GAZ-3351というATVだ。通称「ローシ」(「ヘラジカ」の意)という。 

 これは世界各地で使われているスウェーデンの「ヘグルンズ」(Hägglunds)BV-206の派生品だ。初め1974年に製造されたこの車は大きな成功を収め、瞬く間にスカンジナビア半島中に普及した。後には米国やカナダ、さらには中国もこれを購入している。

 ロシアのザヴォルシスキー無限軌道牽引車両工場が2012年にBV-206のライセンス生産契約を結び、独自の改良を加えてきた。そのため、ロシアの土壌にもしっかり対応している。

 このATVはすでにロシアで長い運用歴があり、ガスプロム社やルクオイル社、ロスアトム社などが日々この車を使っている。

 

ロシアの「ヘラジカ」

 ATV「ローシ」は過酷な気象条件と路面状況でも人員や貨物、特殊な装備を運べるよう設計されている。猟師や漁師、石油・ガス採掘企業向けだが、プーチンやショイグのようなアウトドア愛好家にも打ってつけだ。

 この車は幅の広い特殊な無限軌道(キャタピラー)のおかげで湖沼地帯や湿地も走破できるため、救助隊にも重宝されている。GAZ-3351は前後の両モジュールともにナイロンコード付きの鋳造ゴム無限軌道を備えており、舗装路でも未舗装路でも走れる。摂氏マイナス40度からプラス50度の気温でも使え、海抜4500メートルの高山地帯でも運用できる。

 GAZ-3351「ローシ」の前部モジュールは最低地上高350ミリメートルの水陸両用車だ。車体は繊維プラスチック製で水に浮き、183馬力、排気量3.2リッターのスーパーチャージャー付きディーゼルエンジンで動く。

 地形や貨物量にもよるが、100キロメートルごとに50~100リットルの燃料を消費する。水上での最高速度は時速3キロメートルだが、陸上では時速55キロメートルまで加速できる。

 顧客の要求に合わせて生まれた追加のモジュールを取り付けることもできる。11人乗りの人員輸送用モジュールから、消防用モジュール、医療用モジュールまで、10種ほどの基本モジュールがある。 

 GAZ-3351「ローシ」は現在誰でも購入可能だ。ただし、この無限軌道ATVを手に入れるには少なくとも800万ルーブル(約1100万円)は必要である。