チェチェン紛争の際、ロシア軍は長距離から敵を効果的に仕留められるライフルを求めていた。基準の一つは、急所に当たらなくても敵を倒せるということだった。
ロシアの兵器メーカーが、.50 BMG弾を使用し、数キロメートル離れた標的を仕留められる外国の最強スナイパーライフルに匹敵する銃を作るのを決めたのはこのような理由からだった。
この銃はロシア最強のスナイパーライフルとして開発された。
ロシア最強のスナイパーライフル(最大の有効射程を持つロシア製ライフルSVLK-14S「スムラク」および有効射程7キロメートルのその改良版と混同しないように)はASVKと名付けられた。この奇妙な(ロシアの兵器にありがちだが)名称は『軍用大口径狙撃銃』のアクロニムである。
ASVKが使用する12.7×108 mm弾は17000ジュールの威力を持ち、500メートル離れた場所にある厚さ20ミリメートルの鋼鉄の板を、ナイフがバターを切るかのごとく簡単に貫ける。
この弾薬の生産コストは一発当たり30~40ドル(約3千~4千円)だという。もし民間市場で売られれば、少なくともその1.5倍の値段はするだろう。一回の射撃練習で平均30発以上撃つならば、かなりの出費になる。
ASVKはブルパップ方式のスナイパーライフルで、マガジンがストックにはまっている。
これにより、ライフルのサイズはそのままに、バレルの長さを格段に伸ばすことができた。ライフルの全長は1350ミリメートルで、バレルの長さは1000ミリメートルである。
ライフルのバレルは、射撃の反動を抑えるためかなり重くできている。
さらに、マズルブレーキによって反動を2.5倍近く軽減することに成功している。
ストックの後部には多孔質の特別な素材も付いており、これも反動を和らげるのに役立っている。
バレルはフリーフローティング式だ。レシーバーで固定されているが、それ以外はライフルのどの部分とも接していない。
頑丈なレシーバー、重いバレル、手動装填方式により、命中精度が上昇している。ボルトハンドルは右側に付いている。同じく右側にあるエジェクションポートは蓋で覆われている。
現在、ライフルはカウンタースナイプ作戦や、遠く離れた敵の軽装甲車両や重機関銃手を仕留めるのに用いられている。
「これは.50 BMGに相当するロシア唯一の銃で、2020年半ばに市場に現れたばかりだ。米国や欧州のライフルよりも強力で、一キロメートル離れた軽装甲車を破壊するのにより適している」とロバエフ・アームズ社の主任技師で元特殊部隊狙撃手のユーリー・シニチキン氏は言う。
彼によれば、これがライフルの長所だ。一方短所として、シニチキン氏は実戦で狙撃手が必要とするものに遠く及ばない射撃精度を挙げる。
「精度は2分角(MOA:射撃の際に弾のずれる角度)だ。つまり、一キロメートル先の大きな標的でないと当たらないということだ。弾は標的を大きく外れる可能性がある」と彼は指摘する。
さらに、シニチキン氏によれば、270万ルーブル(約382万円)というライフルの価格も短所の一つだという。これはバレットやアキュラシー・インターナショナルといった外国のライバル企業が製造しているライフルに相当する。「この価格なら、私は米国のライフルを買う。そちらのほうがASVKよりも人間工学的にも技術的にも優れているからだ」と元狙撃手は締め括る。
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