カラシニコフ小銃は今なおロシアの最も分かりやすい象徴の一つであり、世界中で知られている。
だが、カラシニコフやその他のロシアの銃は、もはや単なる戦争の道具ではなくなっている。多くの国々で、ロシアの有名な小銃や拳銃の民間モデルやスポーツモデルを見つけることができる。それらは競技射撃や護身用、狩猟用の銃として、また再現映像や映画の小道具として使われている。
さまざまな国々で働くうち、私はあらゆる国の人に何度も尋ねられた。「カラシニコフ小銃が実際にロシア製のものかどうか、どのように見分けるのか。何を見るべきなのか」と。
最も簡単な方法
こうした質問が出るのももっともだ。ロシア製の銃は世界数十ヶ国で時には違法に製造され、時にはライセンス生産されている。例えば、現在28ヶ国でさまざまなカラシニコフ小銃の派生版が作られている。しかも、すべてが同じ基準で製造されているわけではない。
古典的なAKを例に取ろう。見るべき点はいくつかある。最も簡単な方法は、レシーバーの左側にある製造者のマークを見ることだ。そこに銃がどこで作られたかを示す印がある。
この場合、「三角形の中の矢」のマークは銃がイジェフスクの工場で作られたことを、単なる星のマークは銃がもう一つの大きなメーカーであるトゥーラの工場で作られたことを示している。
別の「カラシニコフ」
近年存在感を増した別のメーカーがある。それがモロト工場だ。この工場は、第二次世界大戦中に大変需要が大きかったサブマシンガンを赤軍に供給するために設立された。1960年代初めには、カラシニコフ軽機関銃(RPK)を製造する主要なメーカーとなった。
1990年代、モロト工場はそのノウハウを活用してヴェープル(「猪」の意)という民間スポーツモデルを開発した。強化されたデザインと強靭さで知られるヴェープルは、ガイ・リッチー監督の映画『スナッチ』の登場人物ボリス・ザ・ブレイドの、「重いのは良い。重いのは信用できる。故障してもそれで殴れる」という台詞を信奉する射撃手の間で人気だ。ヴェープルは軽機関銃をベースとしているため、他のAKの派生版に比べると実際に重い。
本物のヴェープルを見分けるには、レシーバーの左側に「盾の中の星」のマークがあるかどうかを見れば良い。
ふつう、ロゴはシリアルナンバーのすぐ隣にあるため見つけやすい。ロシアの銃のシリアルナンバーに文字がある場合、それはキリル文字だということを念頭に置いておこう。
アフガニスタンの模造品
アフガニスタンで働いていた時、私はカラシニコフ小銃の粗悪な模造品をたくさん見た。それらはパキスタンの連邦直轄部族地域で作られたものだった。こうした銃を見分ける最大のポイントは、シリアルナンバーにラテン文字(ローマ字)があることだ。
この地域では、銃の模造品を作ることが古い伝統だ。部族地域のディーラーはロシア製のオリジナルのほうが高く売れると知っていて、できるだけ本物に似せようとしてくる。
たいてい製造者がロシア語を理解していないためにすぐ偽物だとばれる。ロシア製の銃は、右側のセレクターのところにキリル文字で「ОД」と「АВ」というマークがある。それぞれ「セミオート」と「フルオート」という意味だ。
幸い、部族地域の銃職人はロシア語の勉強に熱心ではなく、彼らの作った銃では、しばしばこれらの文字が「ОА」や「ДВ」になっていたりする。やはり言語学習は大切ということだ。
多くの偽造ライフルの特徴として挙げられるもう一つの点が、質が低いことだ。カーブルで私が手にした銃の中には、弾がきちんと装填されないようなものさえあった。バレルとチャンバーが連動せず、装填のサイクルが完了しないのだ。そんなわけで、仮にマークが正しかったとしても、試し撃ちをしたほうが良い。何か気に入らない点があれば、他の銃を探すべきだ。
他のカラシニコフのコピー版にはそれぞれ識別マークがある。ハンガリーのものには「無限」の記号があり、セレクターのマークとして数字の「1」が刻まれている。複数の円の中に「10」と書いてあればブルガリア製、一つの円の中に「11」とあればポーランド製だ。すべて挙げていけば、一冊の本が書ける。AKの派生版は一つひとつが異なり、それぞれがその国の歴史や政治体制、技術の進展、製造能力を反映している。
どの博物館にも武器が展示されているのはこのためだ。古来、剣や槍は特定の文明の歴史について年代記などの史料以上に多くのことを語ってきた。ロシアの歴史的な武器にも、それぞれに必ず物語が秘められている。
収集家がロシア製の火器を好むのはこのためだろう。荒削りで洗練されていないように見えるが、これらの武器はロシア人の国民性を見事に映し出し、ロシア史がいかに複雑で特筆すべきものであるかを物語っている。