ロシアがコロナ対策に使っている珍しい兵器

テック
イーゴリ・ロジン
 ロシアは、現在の最大の「敵」と戦うため、これまで機密扱いだった兵器を総動員している。

 ロシアはイタリアやセルビア、インドにも多数の珍しい軍用車両を送り、新型コロナウイルスとの戦いを助けている。

対核・生物・化学兵器(NBC)車両が街に

 ロシアは軍の対核・生物・化学兵器(NBC)部隊とその車両をほとんど総動員している。この部隊は、大量破壊兵器使用後の浄化活動や、前線のロシア軍部隊に影響を及ぼし得るウイルス性・細菌性感染症の流行に対処するために設立された。だが今回ロシアは全対NBC部隊を活用して消毒作業とコロナウイルス感染者の治療に当たらせている。対NBC部隊の将校らの大半は、実は化学・生物兵器の被害者を処置するよう訓練された軍医だからだ。

 その野外医療施設や野戦病院の多くが4月初めからイタリアで活動しており、今ではロシア中に展開している。

 以下の映像は野外化学・生物学研究室での活動を写した。

 またロシアは、対NBC偵察車両を街に出動させている。初めにRKhM-4(BTR-80装甲兵員輸送車をベースに作られた化学偵察車)、DKV-1軍用消毒複合、APKM放水消防車、ARS-14KM基地が出動した。これらの車両はチェルノブイリでの浄化活動で有名になり、今回も都市や町の通りを浄化・消毒するという同じ任務(チェルノブイリに比べれば軽いが)を遂行している。

 「後者(ARS-14KM)は性能と特徴の点で最新鋭の新世代自動充填基地だと指摘しておきたい。ARS-14KMは兵器や軍の備品、特定の地域、道路のガス抜きや除染、消毒、水や脱ガス溶液、さまざまな容器に入った備品や専用の医療キットの一時保管や輸送に用いられる」と元イズベスチヤ紙軍事評論家ドミトリー・サフォノフ氏は話す。

 これらの化学浄化車両はロシアだけでなくイタリアやセルビアでも広く活用されている。サフォノフ氏が指摘するように、ロシア国防省は「水上の病院」、医療船イルトィシュも出動させている。

 「船はロシア極東沿海に停泊し、極東地域の医療施設の負担を軽減する目的で活用される。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は船に少なくとも450人の患者を治療する準備をし、必要な全医薬品と人工呼吸器を貯蓄するよう命じた」と同氏は言う。

空軍

 ロシアの兵器がインドでもコロナ対策に使われていることは注目に値する。

 交通インフラが未熟なインド北部・北東部の州に食料品や医薬品が主に中型のMi-17V-5ヘリコプターによって届けられている。

 Mi-17V-5ヘリコプターはインド空軍の輸送ヘリコプターの主力を成し、パキスタンおよび中国との国境地帯に広がる砂漠から高地まで、アクセスが難しい地域で用いられている。

 非常事態にはインド軍は戦闘機も用いる。例えば、3月末にはインド海軍の海上哨戒機Il-38SDシードラゴンが大量の医療用使い捨てマスクと医療機器をゴアに届けた。ちなみにこの飛行機はそもそも海上で敵の潜水艦を見つけ出して水中爆弾で破壊するために開発されたものだ。だが、非常事態の今、同機は平和利用に回され、コロナウイルス感染者を救っている。

 世界最大の軍用輸送機もまたパンデミックとの戦いに参加している。4月初旬には、ロシアの超重量級輸送機An-124-100ルスラーンが米国に医療機器を届けた。An-225ムリーヤは中国からヨーロッパへマスクや防護服、フェイスシールドなどの医療用品を定期的に輸送している。

 メディアの報道では、ヨーロッパで4月14日にAn-225一機が運んだ貨物の総量は、千立方㍍以上に上った。これは一機の航空機が空輸した貨物の量としては最大だという。 

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