4月2日までにニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の職員は、ロシアの軍用輸送機「An-124」の荷降ろしを完了した。同機は、アメリカの医療機関スタッフのために、人工呼吸器と個人防護具を搬送。
3月30日に、ロシアのプーチン大統領と米トランプ大統領の電話会談を受けて、米国は必要な医薬品、医療機器を購入することで同意していた。その結果、それらが米国に搬送されたもの。
メディアの報道によると、積載物は迅速に降ろされ、通常の「官僚的な」通関手続きはなかった。つまり、モスクワからの貨物は、開封せずに速やかに検査された。また、すべての乗員のパスポート、書類検査も、官僚的遅滞なく行われた。
JFK空港で、モスクワからの貨物を、ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使が外交官たちとともに出迎えた。ポリャンスキー氏によると、この人道援助は主に、ニューヨークの地元医療機関で不足している機器と個人防護具からなっている。
「ニューヨークは非常な苦境にある。一つ一つのマスクや器具が重要だと思う」。ロシアのメディアはポリャンスキー氏の言葉を伝えている。
しかし、どの病院にどの医療機器を送るかはまだ不明だ。ポリャンスキー氏によれば、貨物は地方自治体に引き渡され、自治体が自ら、人工呼吸器と防護具を地元の医療機関に分配する。また、必要に応じて、ロシアは医療機器と防護具を追加的に米国に送る可能性もある。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官によると、プーチン大統は、米国に支援を提供するに際し、万一ロシアで新型コロナウイルスによる危機が発生した場合には米側も援助を行うとの前提に立っているという。
一方、米国務省のモーガン・オータガス報道官はこう指摘している。米露両国は、過去の危機の際に人道援助を互いに提供してきた。将来もまた再びそうするだろうことは疑いない、と。
なぜ米国にロシアの医療機器が必要なのか?
「確かに米国では、独占的サービス分野の最も進んだ医療産業の一つは、高価なサービスの提供、そして個人ごとの複雑な症例の治療だ。しかし新型コロナウイルスをめぐる状況では、さほど至難というわけではないが極めて大規模な感染と治療に対して、国のシステムが用意できているかどうかが問題となる。そして、こうした問題においては、新興国のほうがより良く準備されていることが分かった」。フョードル・ルキヤノフ氏は、ロシア・ビヨンドにこう語った。氏は外交評論家で、雑誌「世界政治におけるロシア」の編集長。
ルキヤノフ氏の指摘によれば、米国は、パンデミックにおける大規模な治療という問題に直面したが、同国のシステムはその準備がなかったので、必要な機器を海外から購入する必要が生じた。しかし、それはまさしく購入であり、第三国に関する政治的譲歩について取引するといった意味合いはないという。
「第二次世界大戦中、米国は武器貸与法(レンドリース法)に基づき、ソ連に軍事援助を提供した。すべて対価が支払われた。今回の米国への支援も金銭が支払われる。政治的見返りや制裁解除などは問題にならないし、なり得ない」。ルキヤノフ氏は付け加えた。
新型コロナウイルスの発生源は、中国からイタリア、スペインなどの欧州諸国、そして米国に移った。米当局の推計によると、同国では最大20万人がこの疾病で死亡する可能性がある。
米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によれば、4月2日の時点で、米国で21万5417人の感染が報告されている。死亡者は5116人。