S-350「ヴィーチャシ」:S-400の「弟分」の実力

テック
イーゴリ・ロジン
 この兵器は防空の最後の砦となり、S-400による迎撃を免れた敵のミサイルや飛行機から国を守る盾となる。

 ロシアは自国の主な防空システムS-400「トリウンフ」の「弟分」の量産を始めた。

 新しい「対ミサイルの傘」はS-350「ヴィーチャシ」と名付けられ、S-400防空編隊による迎撃をすり抜けて低空飛行する巡航ミサイルやヘリコプター、飛行機を迎撃するために開発された。 

 新防空システムは60キロメートル以内の中・近距離の標的を対象としている(S-400は100~400キロメートル離れた標的を迎撃する)。

 S-350「ヴィーチャシ」は自走式ミサイル発射装置で、全方位レーダーおよび指揮拠点とセットで機能する。

 「この兵器は、風景に溶け込みながら敵のレーダー網をかいくぐって低空飛行してくるミサイルや航空機に対して効果的だ」と「アルセナル・オテチェストヴァ」誌のヴィクトル・ムラホフスキー編集長はロシア・ビヨンドに話す。 

 同氏によれば、これらの課題を解決するため、同防空システムには2種類の中・近距離ミサイルが装備されている。1つはレーダーで、もう1つは赤外線ビーコンで目標を発見し、自己誘導弾頭で迎撃する。 

 「ヴィーチャシ」大隊は4基の発射装置から成る。発射装置1基には12発のミサイルが攻撃準備のできた状態で搭載されている。さらに予備のミサイルが24発ある。つまり、防空大隊1つにつき144発のミサイルがあり、いかなる防御対象も大規模なミサイル攻撃から守ることができる。

 ムラホフスキー氏の指摘では、「ヴィーチャシ」は空中発射巡航ミサイルAGM-86「ALCM」やARM-158「JASSM」を効果的に迎撃し、戦闘機F-15、F-16、F/A-18「ホーネット」の航空大隊の攻撃を食い止めることができる。しかし、第5世代の戦闘機や爆撃機、例えばF-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」にはS-400で対処しなければならない。 

 「S-350大隊はそのミサイルで大規模攻撃に対応できる。これがS-400と比べた際のS-350大隊の重要な特徴だ。S-400は最も検知しにくい航空機やミサイルを発見するのが専門で、より単純な目標にはミサイルの数が足りない可能性がある」と専門家は付言する。

対空ミサイルシステムS-350「ヴィーチャシ」の性能