ロシアは核戦力の更新を活発化させている。2024年までに、地上軍の老朽化した核ミサイルやソ連製の兵器はすべて消えるだろう。
この目標を達成するため、国は2010年代初めに22兆ルーブル(39兆円)以上の予算を充てている。結果として、ロシアは「核抑止」の枠組みで地上配備型大陸間弾道ミサイルの規定数を満たすことになる。
ロシアの核ミサイル
ウェブサイト「Стратегическое ядерное вооружение России」(「ロシアの戦略核兵器」)によれば、ロシアは2020年代のはじめに(核兵器削減に関する米国との双方的な条約((新戦略兵器削減条約)の枠組みで)最大2100個の核弾頭を搭載できる532基の戦略的運搬手段を持つことになる。
現時点で、ロシアの核戦力には次のミサイルがある。
- R-36M2(SS-18)重ミサイル:46発
- アバンガルドシステム(UR-100NUTTKh(SS-19 Mod 4)ミサイル):2基
- 移動式ミサイルシステム「トーポリ」(SS-25):45基
- サイロ発射型ミサイル「トーポリM」(SS-27):60発
- 移動式ミサイルシステム「トーポリM」(SS-27):18基
- ミサイルシステムRS-24「ヤルス」:移動式135基、サイロ発射型14基
これらのミサイルのうち今後更新される予定なのが、R-36M2と「トーポリ」だ。代わって配備されるのが最新鋭ミサイル「ヤルス」と「サルマト」で、「ヤルス」は「前任者」同様にミサイルサイロに格納されるものもあれば、移動式発射台に載せられるものもある。
「ヤルス」
「新ミサイルの重要な特徴は、その軌道が敵の防空システムに予測されにくいということだ。『ヤルス』は古典的な放物線を描くのではなく、核弾頭の落下地点を敵に割り出されないよう、近宇宙でヘビのようにうねる」と元イズベスチヤ紙軍事評論家のドミトリー・サファノフ氏はロシア・ビヨンドに話す。
同氏によれば、「ヤルス」ミサイルには従来のものとは全く異なるエンジンが搭載されている。これによってミサイルサイロからの発射速度が増すだけでなく、敵の防空システムを撹乱するために大気圏低層で常に高度や方向、速度を変えることができる。
「『ヤルス』のもう一つの重要な特徴が、飛行中に6つの弾頭を分離してそれぞれの目的地へ送るMIRV(複数個別誘導再突入体)の存在だ」とサフォノフ氏は続ける。
それぞれの弾頭の威力は100キロトンだ。参考までに、米国が広島と長崎に投下した原子爆弾の威力はこの5分の1である(それぞれ約20キロトン)。
「サルマト」
重さ約100トンの「サルマト」の射程は17000キロメートルで、設計者らによれば、目標地点まで南極経由で飛んで行くことができる。南極からミサイルが来るとは誰も予想していないし、そこには防空システムもない。
「この兵器は敵の先制攻撃に耐えられる。ミサイルサイロの蓋はミサイルの直撃を受けないようになっているからだ。誘導システムも、目標への誘導を妨害し得る電磁波の影響を受けない」とタス通信の軍事評論家、ビクトル・リトフキン氏はロシア・ビヨンドに語る。
しかも、「サルマト」のMIRVの弾頭数は10個ではなく、15個以上だ。 「これらの弾頭はブドウの房の原理で内蔵されており、ブドウの粒はある時点で分散して、最大300キロトンの威力を持つ核弾頭の雨が地上に降り注ぐ」とリトフキン氏は付言する。