ロシアが核爆撃機をベースに民間旅客機を製造する方針

テック
イーゴリ・ロジン
 一新された戦略的爆撃機Tu-160の初飛行の後、ロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領はその技術を応用した超音速旅客機を製造することを提案した。

 1月中頃、ロシアの兵器製造者らがウラジーミル・プーチン大統領に一新された戦略的爆撃機Tu-160を披露した。

 しかしこの日の重要な出来事となったのは、“白鳥”の初飛行よりも、これをベースに民間用超音速飛行機を作るようにという大統領の“要望”のほうだった。

 これに対し統一航空機製造会社のユーリー・スリュサリ社長は彼の会社にはすでにそのような旅客機を作る企画があり、一新された戦略的爆撃機の技術を彼のコンセプトに統合することは可能だと答えた。

  しかし記者たちの疑問は、「元核爆撃機の民間旅客機というものがどんな姿になるか」ということだ。まだ答えはないか、あるいは武器製造者や設計者が好む表現を借りれば、企業秘密だ。

 とはいえTu-160の技術的特徴は知られており、格納庫に爆弾の代わりに乗客用の座席をどのように配置するかは推定可能だ。

 

“白鳥”

 パイロットらがその外見とグライダー構造から“白鳥”と呼ぶTu-160は、ロシア空軍史上最強のミサイル搭載超音速爆撃機だ。 

 ウラジーミル・プーチン大統領が言及したように、国の指導部はTu-160を10機、価格にして一機当たり150億ルーブル(約2億6700万ドル)で購入することを決めた。

 軍事専門家らの考えによれば、Tu-160は抑止力としてだけではなく、国防省の目下の課題の解決のためにも使われる見込みだ。

 「“ミサイル搭載機”という用語は爆撃機が核弾頭搭載の巡航ミサイルも通常の巡航ミサイルも使用できる点を強調している。その中には新世代の長距離巡航ミサイルKh-101やKh-555も含まれる。」タス通信の軍事アナリスト、ヴィクトル・リトフキン氏はロシア・ビヨンドにこう話す。

 「Tu-160はいかなる種類の核爆弾と通常爆弾をも搭載できる。徹甲弾、地中貫通爆弾、クラスター爆弾、機雷などもだ。爆弾の総重量は40トンに達し得る。」リトフキン氏は強調する。 

 とはいえ、このアナリストの考えでは、格納庫から全ての軍事設備を取り除けば、Tu-160には旅客を最大150人輸送できるだけの空間がある。「とにかく、試験的民間モデルの第一号ができるのを待つ必要がある。これに設計者らは数年を要するだろう。」アナリストはこう要約する。

 

民間“爆撃機”

 ソ連時代、国家の航空機格納庫にはすでに同様の超音速飛行機モデル、Tu-144があった。しかし、軍事科学アカデミーのヴァジム・コジュリン教授がロシア・ビヨンドに話すように、民間市場用に改造された戦略的爆撃機はどうしても旅客輸送には適さなかったし、今なお適さない。 

 「Tu-144は維持費がかかった。専用の滑走路を作らねばならず、機体の整備や燃費は国にとって高くついた。こうした出費は航空券代で埋め合わせなければならかったが、それは平均的なソビエト市民の月給に相当した。」この専門家はこう振り返る。

 「このクラスの飛行機はアラブの首長や国家のトップ、ガスプロムやタトネフチといった巨大多国籍企業のトップが利用していた。」コジュリン氏は付け加える。

 その上、Tu-160をベースにした飛行機の製造には7、8年必要だ。「これは戦車をトラクターにするも同然だ。」彼は指摘する。

 とはいうものの、新しい旅客機の製造に際してこの飛行機機体やエンジンなど個別の要素を使うことは可能だ。しかし飛行機の中身は当然全く違ったものになる。

 専門家は次のように総括する。「軍人は禁欲的な人々だ。ミサイルや爆弾に快適な環境は必要ない。これは仕事の様式、金、構造などのどれを取っても別の次元の話なのだ。もちろん戦略的爆撃機はどの国家においても飛行機製造、技術水準の頂点だ。しかし全く不経済で、民間市場には適さない。」